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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第十一話 シロン転生

私は前世のシロンの記憶と前前世の記憶を持ったまま、再び《猫》として《転生》した。


《人間》として《ご主人》の傍にいたかったがそれが叶う事は無いし、私が成人する頃にはご主人は五十歳を越えている。

だったら猫としてもう一度ご主人のそばにいる方が、幸せだと思ったの。


そんな理由で《神様》に選択を告げ、この世に生を受けてから三ヶ月が過ぎた。

猫も三ヶ月になれば自由に動き回れるようになり、前世のステータスを引き継いでいるので力を持て余していた。


「《ブランカ》は、他の子達よりとても元気ね!」


「ニャー!」


「それに、体の成長も早いわ!」


「ニャー!」


今の私は、ブランカと呼ばれている。

前世と同じ白色の長毛種で、目の色はオッドアイとは違い青一色だった。


そして私に話し掛けているのは、今の飼い主。

貴族のお嬢様である。


お金持ちなだけあって、住環境は良く美味しい物を食べさせてくれる。

だけどやっぱり、《チートで金髪イケメン》のご主人の魅力には敵わなかった。


『どうやって、ご主人の所へ行こう?』と、日々そればかり考えていたが、未だ此処が何処か分からずにいた。



だが数日後、この場所がエステリア王国の東の隣国《アルシオン王国》だという事が分かった。


「西へ向かえば、エステリア王国に辿り着けるニャ!」


私はリスクを省みず、ご主人の元へ行く決心をした。


「みんな、お別れニャ。私は屋敷を出て行くニャ(※以下の会話、猫語)」


「ブランカ。屋敷を出るって、何処へ行くつもり?!」


「最愛のご主人の所ニャ」


「何を言ってるの? この屋敷には、貴方を可愛がってくれるご主人様がいるじゃない!」


「ママ。本当のご主人は、別にいるニャ」


「貴方が何を思って言っているのか分からない。でも親離れするには、まだ早いわ!」


「そんな事無いニャ。もう《おっぱい》は、とっくに卒業したニャ」


「それはそうだけど、扉も窓も閉まってるし何処にも行けないわよ!」


「問題無いニャ」


「どう言う事?」


「・・・・・みんな元気でニャ」


そう言い残し、私は屋敷の壁をすり抜けた。


「えっ!」


「「「「おねーちゃん、いっちゃヤダーーー!」」」」


弟や妹達の叫ぶ声が聞こえたが、戻る事はなかった。

私は屋敷を飛び出し、兎に角西へ向かった。



「お腹空いたニャ!」


《野良》となったこれからは、食事は自分で確保しなければならなかった。


「チュウ、チュウ!」


視線の先に、ネズミが現れた。

今の私なら体は小さくても、簡単に捕まえられる。


「でも、ネズミは嫌ニャ!」


しかし人間の頃の記憶が、それを食べるのを拒んだ。



幸いにも街中にいたので、人を選んで屋台に近付いた。


「ニャー!」


「あら、可愛い子猫じゃないかい? 」


「ニャー!」


「お腹が空いてるのかい?」


「ニャー!」


「それなら、調理前の生肉をやるよ!」


そう言いつつおばさんは、鶏の生肉を細かく切って皿に出してくれた。



『ムシャ、ムシャ、ムシャ!』


「人懐っこいけど、飼い猫かね?」


『ムシャ、ムシャ、ムシャ!』


「あんたに聞いたって、分かりゃしないね?」


『ムシャ、ムシャ、ムシャ!』


「飼ってやりたいけど、私のところは余裕無いんだよ。ごめんね!」


『ムシャ、ムシャ、ムシャ!』


「ニャー!」


食べ終わると、私は礼を言ってその場を離れた。


「行っちゃうのかい?」


「ニャー!」


おばさんの問いに返事をし、再び歩き始めた。



街を歩いていると、男達に追われた。


「捕まえろ! そいつは高く売れるぞ!」


「分かってる。待ちやがれー!」


「おい、そっち行ったぞ!」


『スタタタタッ!』


「しつこいニャ!」


しかし子猫とは思えない素早さで、男達をかわした。



「ハー、ハー、ハー!」


「なんてー、すばしっこいんだ!」


「あれ、本当に子猫か?!」


少し本気を出したら、男達を簡単に引き離してしまった。


「やっと諦めたニャ」


『ガラガラガラ・・・・・!』


そこに、馬車が通り掛かった。


「丁度良いニャ!」


『ピョン!』


私はその馬車の荷台に、飛び乗った。

そしてその後も馬車を乗り継ぎながら、街の外へ出た。


やはり長距離となると、この方が楽なのである。



時は夕暮れを迎えようとしていた。


「お腹空いたニャ」


「うっしっし。たんまり儲けたわい!」


馬車の持ち主は、強欲そうな商人だった。

この男にご飯を強請っても、捕まえられて売り物にされそうである。


「こいつは駄目ニャ」


『ピョン!』


私は試す事無く諦め、ご飯を調達しに馬車を降りた。



「雀がいるニャ。抵抗あるけど、背に腹は代えられないニャ。《雷》」


『ビリビリビリビリッ!』


「チュチュチュチュチュチュチュチューン!」


『コロッ!』


雀は《雷属性魔法》の一撃で、見事仕留めた。



「《雷刃》」


そして雷で(やいば)を作り、器用に捌いた。

羽は少し焦げていたが、中身の方は生だった。


「やっぱり生より、焼き目がついてた方が良いニャ。《放電》」


右手に雷を纏わせ肉に翳すと、焼き目がついていった。


「これなら、食べられるニャ」


『ムシャ、ムシャ、ムシャ!』


「まあまあ、いけるニャ」


食事を済ませると、私は安全に眠れる寝床を探した。

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