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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第九話 フロリダ街の視察②

明けまして、おめでとうございます。

視察団一行は、《ダンジョン防衛施設》の運営や安全面を一通り確認して回った。


「いや、実に旨い」


「やはり《モーモ》は、最高ですな」


「私は《メローン》の方が、好みです」


「何を仰る。《マースカット》の方が美味ですぞ!」


そして視察の終わりに、ダンジョン産のフルーツに舌鼓を打っていた。


「陛下。《亜空間ゲート》の設置場所は、王国兵士が常駐している此方の施設の予定です」


マイク・グルジットが、ドナルド国王に説明した。


「うむ。良いと思うぞ!」


「ありがとうございます」


グレン・ラングレイによる《根回し》で、視察は既に形だけのものになっていた。



「陛下。次は繁華街を、歩いて視察いたします」


「リートガルド男爵。私が繁華街に姿を現せば、騒ぎになるのではないか?」


「我々がついておりますので、御安心下さい。この街は食事処や屋台の食べ物が売りでして、昼食に店を確保して御座います」


「それは良い。馬車の中から見ていて、実は気になっていたのだ!」


一行は徒歩で、繁華街へ向かった。



ドナルドの計らいで、人々には普段通り過ごすよう触れ回られた。


「賑やかで、活気のある街だ!」


「そうですな、陛下」


ドナルド国王に並んで歩く、エドワードが答えた。

皆の手前、曾孫としてではなく国王として接している。


「ですが今見て回った武器や防具、魔法道具に魔法薬、何れも我が領地の方が上ですな」


「何を言っておるアルフォンス。まだ開拓から、十数年しか経っておらんのじゃ。それを考えれば、素晴らしい発展じゃぞ」


「・・・・・確かに。そうですね」


「逆に言えば、ノーステリアの商品を売り込むチャンスであろう」


「流石に父上は、抜け目が無いですね」


そんな会話をしながら歩いていると、エドワードの目に一軒の店が飛び込んで来た。



「何じゃこの店は? 見た事も無い大きさのガラスが、扉や窓にふんだんに使われておる!」


「「「「「「「「「「ざわざわざわ・・・・・!」」」」」」」」」」


視察の貴族達も気付き、ざわつき始めた。


「此方の店では、ガラス窓の販売をしております。この街の隠れた特産品です」


「隠れた特産品じゃと! この店で作っておるのか?!」


「いいえ。こちらでは販売のみです。製造に関しては、店主しか知りません」


リートガルドはニコルが錬金術で作っている事を知っていたが、その事は伏せた。


「父上。ここのガラス窓の技術は、我が家の工房の上をいっているのでは?!」


「分かっておる。この作り、まるで・・・・・」


エドワードは、嘗て《日本》で見たガラス窓を思い浮かべていた。



「お二人共。大きな声じゃ言えませんが、此処はニコル君の店です」


「そうじゃったか!」


「なんと!」


驚いているエドワードとアルフォンスに、グルジットが耳打ちした。


一行はガラス窓に興味を引かれ、店に立ち寄った。



「「「いらっしゃいませ!」」」


「おや? 店に並んでいるのは、ガラス窓ではないな」


「ああ。こちらはもう一つの特産品、トイレットペーパーです。用を足した後、尻を拭く紙です」


貴族の問いに、リートガルドが答えた。


「尻拭き紙か。店員よ、一つ見せてくれんか?!」


「どうぞ」


ダニーが、答えた。



「何だこれはっ! 柔らかくて肌触りが実に良い。それに、仄かに薔薇の香りがする!」


「本当か? どれ、私も」


同行した貴族達が、手に取って確かめ始めた。


「おー、凄い!」


「なんと!」


「これは、買って帰らねば!」


すると皆、驚きの声を上げた。



「父上。この商品も、我が家の工房の上をいっています!」


「そうじゃな。流石、あやつの店じゃ」


「これ等が流通しだしたら、みんな取って変わられますよ!」


「しょうがあるまい。それが商売の摂理じゃ。人はより良い物を欲する。ならば更に良い物を作るまでじゃ」


「我々にできますかね?」


「アルフォンスよ。何事も、諦めたらそこで終わりじゃ!」


「そうでした。父上っ!」


二人はニコルの商品に、対抗心を燃やした。



一行はトイレットペーパーを見終わると、店の奥のガラス窓の見本を見に行った。


「「「「「素晴らしい!」」」」」


「だが、かなりの高額だ。これで直ぐに割れてしまってはしょうがあるまい。店員よ、ガラスの《強度》はどうなんだ?!」


「そうですね。大きな石を投げつけても、滅多な事では割れません」


「本当か?!」


「はい」


「では兵士に、剣で切りつけさせても良いか?」


「はい。構いません」


今までも、こういった客はいた。

しかし、割れた事は一度も無かった。



貴族の指示で二人の兵士がガラス窓を抱え、一人が剣を構えた。


『ガイーン!』


「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」


「もっとだ!」


「はっ!」


『ガイーン! ガイーン! ガイーン! ガイーン! ガイーン!』


「止めっ! 止めだ!」


「はっ!」


「「「「「「「「「「凄い!」」」」」」」」」」


「このガラスに、強度が充分ある事は認めよう!」


「ありがとうございます」


問いを投げ掛けた貴族は、素直にその品質を認めた。



「一体このガラスを、どうやって作っているのだ?」


「すみません。製法に関しては《店主》しか知りません。それに秘匿にしております」


「それでは、店主は何処におるのだ?」


「隣の村におります。今は二週間に一度しか、店に来ません」


「むっ、そうか」


「ギムレット侯爵。店主に会って、どうする気じゃ?」


「エッ、エドワード殿。いや、その、つまり、・・・・・何でもありません」


「そうか、それなら良いんじゃ」


ニコルに接触しようとした貴族に、エドワードは釘を刺した。

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