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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第九章 二コルと家族編
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第一話 シロンとケイコの死

王城の移設から、二年と半月が過ぎた。

百八十万人のゾンビとなった人達の埋葬は、つい最近終える事ができた。


暦は太陽暦三千六百八十三年四月となり、僕はもう三十五歳である。


悲しい事に二ヶ月前、《ケイコ》が寿命で亡くなった。

その一ヶ月前まで、元気だったのに。


ケイコは野鶏としての寿命を、とっくに過ぎていた。

しかしレベルやテイムが影響したお陰か、他の野鶏に比べ何倍も長生きした。


亡くなった時ケイコの体が光に包まれ、その光が僕の体に吸い込まれる様に消えていった。

その時ウインドウが現れ、テイムの効果で《スキルの譲渡》が行われた事を知らせた。


僕には直接使えないものばかりだが、《付与》として使う事は可能だった。



そして近頃、《シロン》の元気も無くなっていた。

シロンは二十一歳近いので、猫として随分高齢である。


「シロン、大丈夫か?」


「ご主人、心配してくれるのかニャ?」


「当たり前だろ」


「嬉しいニャ」


《上級体力回復魔法》を掛けても、《上級エリクサー》を飲ませても、一時的にしか容態は良くならない。

明らかに、老化によるものだ。



「何かして欲しい事は、あるか?」


「ご主人の腕の中で、撫でて欲しいニャ」


「甘えん坊だな」


僕はシロンをそっと抱きかかえ、撫でてやった。


「気持ち良いニャ」


「そうか」


「猫に転生したけど、ご主人と一緒にいられて凄く幸せだったニャ」


「僕もシロンがいてくれて、凄く楽しかったぞ」


「ホントかニャ?」


「本当だ」


「それなら、良かったニャ」


こんな日が、その後一ヶ月続いた。



「ご主人。ありがと、ニャ。もうそろそろ、ケイコのところへ、行く、ニャ」


シロンの声はか細く、まるで吐息の様である。

最後の力を振り絞って、話している様に感じた。


「シロン、・・・・・ぐすんっ!」


「ご主人、シロンの為に、泣いて、くれる、ニャ?」


「お前が悲しい事を、言うからだ」


「ごめん、ニャ。でも、嬉しい、ニャ」


「モキュッ!」


「ポムも、ありがと、ニャ」


「モキュッ!」


「シャル、ロッテにも、『今まで、ありがとう』って、伝えて、ニャ」


「ああ、伝える!」


「大好きな、ご主人の、腕の中で、死ねるなんて、幸せ、ニャ」


シロンはもう、目を開けていない。

今にも、命が尽きそうだ。



「シロン!」


「はい、ニャ」


「シロン!」


「は、い、ニャ」


「シロン!」


「は、い、・・・・・・・・・・!」


「おい、シロン!」


「・・・・・・・・・・!」


シロンの返事は、返って来なかった。

その時、呼吸が止まっているのが分かった。


「シロン! うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


悲しみのあまり、僕は叫んだ。



『ピカ一ーー!』


すると命を失ったシロンの体が、光に包まれた。


「ひっぐ、シロン?!」


『スーーー!』


光は浮上し、そのまま家の天井を突き抜け空に飛んで行った。


「何が、起こったんだ?」


僕の腕の中には、シロンの亡骸が残っている。

魂が光となって、天に召されたかの様に思えた。


シロンは僕とのテイムを結んで無いので、ケイコの時とは違った。


「シロン、今までありがとう。安らかに眠ってくれ」


腕の中のシロンを撫でながら、そう呟いた。



シロンは家族や村の人達に見守られ、ケイコの隣に埋葬した。

みんな涙を流しながら、別れを告げた。


シロンが言葉を話せる事は最後まで隠し通し、《普通の猫》として旅立って行った。


「パパとママは、しんじゃイヤだからね!」


「エミリア。パパもママも、いつかは死ぬんだ。でもね、エミリアが大きく立派に育つまで、死なないよ」


「それじゃエミリア、おおきくならない!」


「そんな事言っちゃダメだ。パパはエミリアが大きくなるのを見るのが、とても幸せなんだ」


「パパ、しあわせなの? だったら、エミリアおおきくなる!」


「偉いぞ、エミリア」


僕はエミリアの頭を、撫でてあげた。


◇◇◇


「シロン」


「ムニャ」


「シロン、目を覚ましなさい」


「今、いい気分で寝てるところニャ」


「私は、この世界の《神》です」


「聞き間違いかニャ? 何と仰いました?」


「ですから、私はこの世界の《神》です」


「かっ、かっ、かっ、カミーーー--!!!」


《神》という言葉に驚き目を開くと、白い空間に何とも神々しく美しい女性が立っていた。



「貴方の固有スキル《キャリーオーバー転生》が発動し、私は貴方の前に姿を現しました」


「《キャリーオーバー転生》?」


「《記憶》と《生前の能力》を持ち越し、《転生》する事ができるのです」


「そう言えば、《鑑定》で《?》になってる《固有スキル》があるって、ご主人言ってたニャ!」


「このスキルには条件があって、一度《人間に転生》するとその次からは効力を失います」


「どういう事ニャ?」


「《人間以外》を選択し転生し続ければ、あなたはずっと記憶と生前の能力を持ち越せるのです」


「なんちゅー、《チート》ニャ!」


「あなたはそのチートスキルを捨て、人間に転生しますか?」


「ちょっ、ちょっと待つニャ! そんな大事な事、直ぐに決められないニャ!」


「分かりました。時間はたっぷりあるので、じっくり考えなさい」


「そうするニャ!」


シロンは突然の状況に戸惑いながらも、どうすべきか考えた。

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