第四十八話 遺体の埋葬
本日、二本目の投稿です。
昼食をとりに、僕は王都の《結界》の中に移動した。
「はー、疲れた。只でさえ忙しいのに、また仕事が増えた。十億マネー貰えるけど」
そう呟きながら、移設を請け負った建築物を眺めた。
「結構多いな」
今の僕にとって、お金はそれ程重要じゃなかった。
既に充分、稼いでいたからだ。
僕が売る商品は、基本材料費が掛からない。
出費は、販売する人件費くらいだ。
「金が貯まる一方だ。このままだと、《百億マネー》もそう遠くないぞ」
エシャット村の為に色々と出費しているとはいえ、他に使うところがなかった。
村人の給料は上げて、既に隣街の水準を越えていた。
しかも、村の物価は安かった。
「これ以上、給料を上げてもなー」
貯まった金の使い道が無い事が、僕を悩ませた。
「これはあれだ。本当にもう、一生働かなくても孫の代まで食べていけるな!」
村は順調に豊かになり、今なら念願の《のんびり生活》が可能に思えた。
◇
ハンバーガーを頬張り、二時間程してからラングレイ伯爵の元を訪れた。
「ヤマト。これが埋葬場所の地図だ。どうせまた、一人で行ってくるのだろう?」
「気が利くな」
「まあな。それで、どの位で戻って来れる?」
重鎮達は食事を終え、既に仕事をしていた。
「十五分も掛からず、戻れるだろう」
「分かった。できるだけ早く、集合しておく」
「頼む」
『フッ!』
僕は一旦、ラングレイ伯爵領の領都に《転移》した。
そしてそこから、北東方面へ飛び地図の場所を目指した。
◇
「ここか?」
そこには、広大な草原が広がっていた。
「細かい場所は、ラングレイ伯爵に確認すれば良いだろう」
そう呟き、ノーステリア大公爵領の領城へ戻った。
「準備はできている」
先程のメンバーが、全員揃っていた。
「早く戻ったつもりだが、待たせたか?」
「いや、そうでもない」
「師匠を待たせる訳には、いきませんからね!」
ドナルド陛下の『師匠』は、すっかり定着してしまった。
認める気は無いが。
僕は五人を引き連れ、ラングレイ伯爵領の草原に《転移》した。
◇
「この場所で良いのか?」
「うむ。ここら一帯を、使って構わん」
「早速、作業を始めるぞ」
「頼む」
僕は地面に右手を付き、地層を《分離》した。
そして分離した地層を、《亜空間収納》に回収した。
その広さ、五十X三十メートル。
深さ、二メートル。
「「「「なっ!」」」」
「師匠、流石です!」
「この穴に、回収した遺体を置いていく。言っておくが、平民は棺には入れていないからな」
「ああ。構わん」
『スタッ!』
ノーステリア大公爵領の確認を取り、穴の中に降りた。
そして《亜空間収納》を開き、隅から一メートル間隔で合計五十体並べた。
「遺体はゾンビの姿だと思っていたが、みんな綺麗だ!」
上から覗いているドナルド陛下が、呟いた。
「ヤマトが、修復してくれたのじゃ」
事情を知らないドナルド陛下に、エドワード様が答えた。
「師匠は、慈悲深いのですね!」
僕は聞こえない振りをした。
「次は通路を作る」
『ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・!』
地面に右手を付き、五十体の遺体の手前に幅一メートルの壁をせり上がらせた。
『スタッ!』
そして完成した通路に、飛び乗った。
「遺体に、土を盛るぞ」
「やってくれ。後日、司祭を連れて来る」
「そうか」
了承を得ると、先程収納した土を綺麗にしながら遺体に掛けていった。
それが終わると、《亜空間収納》で作った名前入りの墓石を一つずつ立てていった。
「墓石まで用意していたのか?」
「簡単な物だが、何も無いと寂しいからな」
「百八十万体もあるのだろ?」
「時間のある時に、コツコツやるさ」
「ここまでされては、報酬を出さねばならんな」
「その必要は無い。この埋葬は、俺の望みでやっている事だ」
「お主という奴は・・・・」
「見物は、もういいだろ。後は一人でやる」
「私は師匠を、手伝います!」
「陛下。国王なら、国王の成すべき事をしろ!」
「ヤマトの言う通りじゃ。わしらは邪魔せんよう、引き上げるぞ!」
「大祖父様」
どうやらドナルド陛下は、諦めたようだ。
「領城へ送る」
『フッ!』
僕は有無を言わさず、《転移》した。
◇
「一週間後、また来る。建物の配置が決まっていれば、直ぐにでも設置してやる」
「何とか検討してみるが、一週間では決まらないだろう」
「別に急いでる訳じゃない。進捗だけでも聞かせてくれ」
「分かった」
「師匠。私は立派な国王になる為、精進します。見ていて下さい!」
「頑張れよ」
『フッ!』
そう言い残し、埋葬場所へ戻り引き続き作業を行った。
「うわー、結構大変だぞー! このペースで三千体かー!」
埋葬作業は、思っていた以上に手間が掛かった。
しかも、ゾンビはまだまだ徘徊していた。
《のんびり生活》は随分先の話しだと、この時考えを改めた。
お読みいただき、ありがとうございます。
《第八章》は、ここまでです。
またストックが溜まるまで、暫くの間投稿を休ませていただきます。




