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第四十七話 臨時収入

僕は《亜空間収納》から、魔法袋と紙を取り出した。


「この魔法袋に、王族と貴族の遺体が入っている。それと中身の一覧だ。受け取ってくれ」


そう言って、ノーステリア大公爵に差し出した。


「すまない。感謝する」


「その魔法袋は《時間経過の無い》代物だ。容量もそれなりにある。貴族に遺体を渡したら、自由にしていい」


「いいのか? そんな《国宝級》の魔法袋を!」


「構わん。その代わり、貴族の遺体に追加が出た時は頼む」


王都以外では、貴族のゾンビがまだ徘徊していた。


「任せろ!」


王侯貴族の遺体を引き渡した事で、肩の荷が下りた気がした。



「ヤマト殿。もし良かったら、《亜空間ゲート》を借りられんだろうか?」


「何故だ?」


「ノーステリア大公爵領の領都から、ここまでの移動が楽になるだろ」


「貸す謂れは無いのだが」


「マイク殿。それは王都からプラーク街へ、脱出に使った扉の事か?」


「そうだ」


「だったら、買い取らせて貰おうじゃないか!」


「ヤマト殿。アルフォンスはこう言っているが、どうする?」


「俺は魔道具の《販売資格》は、持っていないのだが」


ニコルとしてなら持っていたが、正体を知らない国王陛下もいる。

僕は断るつもりで言った。



「私が持っている。心配するな」


グルジット伯爵は、引き下がらなかった。


「そこまで言うなら、《三十億マネー》で売ろう」


「さっ、三十億マネーだとー! うーむ国宝級の魔法袋も貰った事だし、・・・・・・・・・・良し三十億マネー出そう!」


「いいのか、アルフォンス?」


「構わんよ。彼はこの国の国王の命を救い、多くの民を救った。そして王城を、ここまで運んでくれたのだ!」


「確かにそうだが」


「それにその扉には、三十億マネーの価値があるんじゃないのか?」


「私の査定では、ある」


「だったら、問題あるまい。何かあったら、私が責任をとる」


「俺は売るつもり無かったんだが、本当に買うのか?」


「買うと言ったろう」


「そうか」


《亜空間ゲート》を世に出して良いものか迷ったが、『王都の開拓に役立つのであれば』と思い売る事にした。



その後《亜空間ゲート》を王城と領城に設置し、実際に使用した。

未体験の三人からは、驚きと感動の声が漏れていた。


約束の代金として、王城の大金庫から僕に三十億マネーが支払われた。


「ノーステリア大公爵」


「何だね?」


「サービスするのは嫌いなんだが、今回は特別してやろうじゃないか」


「値引いてくれるのか?」


「いや、そういう訳ではない。ゾンビを追い出す為、大型の建造物を収納した。それを新しい王都に設置してやる。修復も込みだ」


「本当か?! どんな建物があるんだ?」


「学園・教会・ギルド・工房・軍施設・貴族屋敷といったところか」


「是非頼む!」


「何処へ設置すればいい?」


「すまん。まだ街作りの構想が、整っていない。後日、改めて指定して良いか?」


「良いだろう」


一生遊んで暮らせる大金を貰ってしまったので、これ位融通を利かせるのもいいだろう。



「ヤマト。私の屋敷も移設してくれ!」


「私も頼む!」


「そっちは、有償だぞ」


「「構わない!」」


「ならやってやる」


「グレン殿。二人の屋敷は、《結界》に守られた八千人がいた街の一角だったな」


「そうだが」


「ヤマト。《結界》は、まだ張ったままなのか?」


「ああ、張ったままだ」


「それなら全て移設すれば、街づくりが早く進むじゃないか!」


「まあそうだな」


僕の仕事が増えるが。



「ヤマト。纏めて移設を頼めないだろうか? 対価に《十億マネー》支払おう」


「随分、気前がいいな?」


「一から作ったら、金も時間ももっと掛かる」


「そうだぞ。貴族の屋敷一軒建てるのに、十億マネー以上掛かってしまうからな」


「ヤマト。是非頼む!」


「・・・・・そこまで言うなら、受けてやる」


「良かった!」


あの場所に人が戻った時の事を考え《結界》を維持していたが、その見込みは今の所無い。

実を言うと、扱いに困っていた。


更に忙しくなってしまうが、此方としても都合が良かった。



「アルフォンス。家の持ち主に、戻って来て貰っても良いんじゃないか?」


「そうだな」


「ヤマト殿。話しが纏まったら、プラーク街に連れて行ってくれ!」


「良いだろう」


プラーク街には移住した知り合いもいたので、その人達の為にも引き受けた。



「ラングレイ伯爵」


「何だ、ヤマト?」


「平民を埋葬する場所を教えてくれ」


「今から行くのか?」


「もう昼だ。午後からだな」


「分かった。昼食後、案内する」


「師匠、私も連れて行って下さい。国王として、見ておく必要があります!」


今まで大人しかったドナルド陛下が、声を上げた。



「エドワード殿。陛下はこう言っているが、どうなんだ?」


「差し支えなかったら、わしらも一緒に連れて行ってくれんか?」


「あんたらみんな、暇なのか?」


「いや、今は皆忙しい。しかしお主が行う事は、立ち会うに値する」


「分かった。食後に領城へ迎えに行く」


「一緒に食事をせんのか?」


「遠慮する」


「師匠。そんな事を言わずに!」


「俺は師匠ではないし、このメンバーでは気が休まらん!」


「そんなー!」


国の重鎮達と一緒だと、疲れるのだ。


『フッ!』


僕はドナルド陛下の言葉を受け入れる事なく、その場を離れた。

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