第四十四話 王城調査
階段を上ると、城門が壊れているのが見えた。
「城門は、勇者達に破壊されました」
「そうじゃったか」
「中は、凄まじい血の痕だ」
「勇者達の侵入を防ぐのに、ここで多くの兵士が死んだ」
「死体は、俺が回収している」
「すまない。後で弔うので、準備が整うまで待ってくれ」
「分かった」
ラングレイ伯爵の要求を、僕は素直に受け入れた。
「かなり荒らされてますね」
「《結界》が解け、魔物が入り込んでいたからな」
「じゃが、修復すれば使えん事はない」
「かなりの出費になりますがね」
「ヤマトよ。もしやお主なら、修復できるのではないか?」
「ああ、できるぞ」
「「「できるのか?!」」」
「それなら、頼んでもいいか?」
「サービスは今回限りだ。慈善事業は好きじゃない」
「今更何を言っておるじゃ。報奨も無しに、何度も国を救っておるのに」
「「「そうだ!」」」
「何か言ったか?」
「「「「いや」」」」
凄んでみせたら、四人共大人しくなった。
僕は壁に手をつき、《修復》能力を使った。
『ポワーーーーー!』
すると王城全体が淡い光に包まれ、破壊されたは物は修復され、汚れていた物はみるみる内に綺麗になっていった。
「「「「おーーー!」」」」
それを見ていた重鎮達は、唸りをあげた。
巨大な建物だったので、作業に五分を要した。
「まるで、全てが新品じゃないか!」
「そこら中の血痕は、スッカリ消えている!」
「城門も直ってるぞ!」
「何の問題もなく、再利用できるわい!」
「だったら早いところ、移動先を決めてくれ」
「分かっておる。じゃが、色々と土地の調査をしてからじゃ!」
「そうかい。なら三ヶ月後にまた来る。その時までに決めてくれ」
「確約はできぬが、善処する!」
「遺体の埋葬場所も頼むぞ」
「ああ、分かっておる!」
「それじゃ帰るからな」
「報酬は良いのか?」
「魔法書の事なら、済んだ」
「そうか」
「待ってくれ! 宝物庫や大金庫は、どうなっていた?」
「そちらは足を運んでいない。中身はあんたらで確認してくれ」
「わっ、分かった」
『フッ!』
僕は逃げる様に、その場を去った。
◇
重鎮達はヤマトが去った後、大金庫の前に来ていた。
「それでは、開けます」
鍵は三つあり、併設する財務省の部屋からそれぞれ持ち出して来た。
「うむ」
『ガチャッ!』
『ガチャッ!』
『ガチャッ!』
「三つ共、開きました!」
「扉を開けてくれ」
「はい」
『ギィーーーーー!』
「「「「おおぅ!」」」」
広い部屋の中には、硬貨の入った袋が種類ごと山積みになっていた。
「どうやら、手付かずで残っておったようじゃの」
「そうですね」
「被害を受けた領地に、災害補助金が出せますね」
「魔物狩りギルドも必要だ!」
「使い道は、色々あるじゃろうて」
「早速皆を集め、会議に入ります」
「アルフォンス、気が早いぞ。大書庫も宝物庫も、まだ見ておらん」
「そうでした」
「大金庫の鍵は、今はお前がしっかり管理するのじゃ」
「分かりました」
この後重鎮達は、大書庫へと足を運んだ。
◇
「おお。大切な書物が、無事じゃ」
「良かったですな」
「エドワード様。ヤマトへの『報酬の魔法書』とは、一体何だったのですか?」
「《特級》以上の魔法書を、見ても良いと言ったのじゃよ」
「『もう済んだ』と言ってましたが、まさか《禁書庫》に入れたのですかね?」
「そう言えば、《禁書庫》に保管されておったんじゃのー。奴は何でもありじゃから、そういう事じゃろ」
「はぁ、そうですか。ところで、ヤマトは《特級魔法》を使えるのでしょうか?」
「何でもありじゃからのー。使えてもおかしくないじゃろ」
「くっ! 未だ私でも、その域に辿り着けないというのに・・・・・」
「マイク。何今更、ヤマトに対抗心燃やしてるんだ?」
「うるさい!」
「ところで父上は、《禁書庫》を開けられるのですか?」
「分からん。母は王族じゃったが、嫁いで籍は抜けておるからのー」
「試してみては?」
「そうじゃな」
重鎮達は、奥の《禁書庫》へと向かった。
◇
エドワードは、《禁書庫》の扉の前に立った。
「どれ」
そして扉に手をつき、魔力を注いだ。
『・・・・・・・・・・!』
「何も起こらんな。やはり、わしじゃ駄目か」
「それでしたら、ドナルドかメラニアを呼んで来ましょう」
「そうじゃな。宝物庫もある事じゃし。しかし、それは明日でいいじゃろう」
「そうですね」
重鎮達は引き続き王城を散策しながら、宝物庫へ向かった。
そこでも扉の解錠を試みたが、結局失敗に終わった。
「それでは、帰るとするかの」
「「「はい」」」
「しかしヤマトのあの力があれば、王国は安泰ですね」
「そうじゃな」
「しかしヤマトは、我々貴族との関わりを嫌ってる節がある」
「あやつを我等の手駒とするのは、大層難儀な事じゃわい」
「「「そうですね」」」
ヤマトに対し貴族の権力が通用しない事を、重鎮達は理解していた。
そして扱いを間違えば、大変な事態になる事も。




