第十八話 露店での出会い
今日は、人通りの多い一万マネーの場所で露店を出す。
客層も若い女性が多い。
前の場所は、労働者が多かった事を思い起こす。
商品のラインナップは、強気に高額商品を追加した。
前回の硝子の置物は、五センチ程の可愛いものだった。
今日は二十センチ、三十センチ、四十センチの三種の大きさで、嘶く馬、羽ばたく大鷲、威嚇するドラゴン、細工の細かい帆船も追加した。
ちょっとした芸術作品に見える、はず。
アクセサリーは銀細工に小粒の宝石をあしらった物を追加し、デザインは地球のカタログから拝借している。著作権は問題無いだろう。
これらの価格は、高めに三万マネーから三十万マネーに設定した。
最高額は、四十センチの帆船のガラスの置物である。
《錬金術》で作っているので、原価は掛かってない。
「この値段で売れなかったら、値段交渉で値引きしてもいいかな。とにかく一日この場所でやってみよう」
準備をしていると、すでに回りには女性客が集まり始めてる。
その中には前回、見て行ってくれた人も何人かいる。
準備を終えると、声を掛けられた。
「あのー、以前お金を持って無くて買えなくて、また出店するのを待ってました」
「ええ、覚えてますよ。待たせてすみませんでした。ゆっくり選んでください」
少し恥ずかしそうに声を掛けてきた女の子は、どこぞのお嬢様という感じで、美しくて可愛らしい、そしてお胸が大きかった。
年齢は僕と同じ位だろう。
美人の多い王都でも、目だっていたので覚えている。
そんな女の子が悩んでる表情は、眼福である。
一方、その娘はこんな事を考えていた。
『再び、巡り会えた。神様ありがとうございます』
だが、そんな事を考えながらも、商品もしっかり選んでいた。
「どれも可愛いんで、迷っちゃいますね。でも、決めました。これと、これと、これをください」と言いながら、小さい猫のガラスの置物を三種類選んだ。
「はい、三つで三千マネーです」
商品をそのままの状態で渡し、大銅貨三枚を受け取る。
隣にいた友達らしき女の子が、「名前聞かなくていいの? このままだとただのお客よ」と、小声で聞いている。
聞かれたその娘は「恥ずかしいよー」と、小声で答えた。
「じゃあ、私が聞いてあげる」と言って、僕に話し掛けてきた。
「ねえ、お兄さん。名前教えて。この娘が知りたいんだって」
なんかストレートに聞いて来た。
この娘もお嬢様っぽく美しいが、起伏は乏しくスリムだ。
そして周りでは、聞き耳を立てている女性が何人もいる。
「えっと、ニコルといいます。王都では、たまにこうやって露店を開く予定です」
「ふーん、ニコル君って言うんだ。私は《エミリ》で、彼女は《ユミナ》。よろしくね」
「エミリさんにユミナさんですね。よろしくお願いします」
「ユミナが挙動不審になってるから、今日はこれで失礼するわね」
そして二人は去って行った。
その後は、残った女性の自己紹介が繰り広げられ、てんやわんやだった。
買物もしていってくれたので、売り上げが伸びたのは良かった。
しかし売れ筋は小額品で、期待した高額品は売れなかった。
「やっぱり、ちゃんとした店構えじゃないと高額品は売れないのかなー」
人がいなくなったのを見計らって、一旦商品を魔法袋にしまいお昼休憩に贔屓の店に行く事にした。
「今日は牛丼にしよう。日本のチェーン店みたいに早く出てくるといいけどな」
席に座り頼むと、思いの他すぐに出てきた。
手持ちの一味唐辛子を掛け食す。
味は申し分なく美味しい。紅生姜までついていて大満足である。
これなら午後も頑張れる。
腹ごなしがてら他の露店を見てまわって、売り場に戻った。
午前中と同じように商品を並べていると、ダニエル商会支店長のメゾネフさんにばったり会った。




