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第三十六話 二年振りの行商の旅

フロリダ()は人口が五千人を越え、半年前に正式に()に格上げされた。


人口増加の要因にもなった《元魔人》の避難民達は、それぞれ職に就き街は落ち着きを取り戻した。

その後リートガルド様の《男爵》叙爵が決まると、街の住民は皆祝福した。


今は仮の王都ノーステリア大公爵領で、《叙爵式》を終えた頃である。


一方僕はアパート建設や畑の開拓の褒美に、また土地を貰った。

今回は海を眺望できる山の一部だが、忙しいので活用はしてない。


そして九月半ばになり、僕は二年振りに行商の旅に出る事にした。


「「パパ、早く帰って来てね!」」


「分かってるよ。ママの言う事、ちゃんと聞くんだぞ!」


「「うん!」」


「ミーリアとエミリアも、気を付けて!」


「はい、気を付けます。エミリア、パパに『行ってらっしゃい!』しなさい」


「パパ、いってらったい!」


「エミリアたーん、行ってくるよー!」


僕は家族に見送られ、シャルロッテの引く馬車にシロン・ケイコ・ポムを乗せエシャット村を出発した。



『ダダッ、ダダッ・・・・・・・・・・!』


「シャルロッテ。《転移》するから、そんなに急がなくていいぞ!」


『すみません。つい嬉しくて』


毎日フロリダ街に通っているが、長距離の旅は嬉しいらしい。


「久し振りの旅だから、はしゃいでるニャ!」


「シロンも、楽しそうだぞ」


「旅はずっとご主人と一緒にいられるから、嬉しいニャ!」


シロンは子供達に遠慮し、僕に甘える事が少なくなっていた。



「ご主人と気がねなく話せるのが、何より良いニャ!」


「普段は、よく我慢してるよ。何とかしてあげたいけど、《異分子》は怖がれたり排除されるからな。旅の間は、話し相手になってやるぞ」


「ごっ、ご主人、シロンの事そんなに思ってたニャんて・・・・・」


「何、感極まってるんだよ」


「ご主人、愛してるニャー!」


「シロン、操車中だ。抱き付くな!」


「いやニャー、愛してるー!」


「コケー!」


「モキュー!」


ケイコとポムまで、僕にすり寄って来てしまった。


『ご主人様ズルいです。私も仲間に入れて下さい!』


「あーもう、いい加減にしろ!」


口ではこう言ったが、旅の間は騒がしいのも楽しく感じる。



酒・衣類・生地・靴等の仕入先は、幸いにも爆発の被害から免れた。


しかし、以前野菜を仕入れていたヤッチマッタ街近辺は、魔素に飲み込まれてしまった。

僕は亡くなった人達に冥福を祈り、仕入れをしながらノーステリア大公爵領に向かった。


「何か、混雑してるニャ」


「一年前の件でこのノーステリア大公爵領の領都に、三万人もの人を送り込んだからな」


「ここの領主にしたら、迷惑な話しニャ!」


「そうだよな。押し付けといてフォローもしてないし、恨まれてるかもしれない」


「それで良く来れたもんニャ」


「しょうがないよ。この領都では女性用下着や牛乳とか仕入れる物があるし、鍛冶屋にはインゴットを卸してるからな」


僕達は二日間滞在し、次の目的地に向かった。



ノーステリア大公爵領の北東にラングレイ伯爵領、南東にグルジット伯爵領が隣接していた。


約束の三ヶ月に一度の行商をしに、僕達はラングレイ伯爵領を訪れた。


「ニコル君、待ってたわー!」


「お久し振りです」


エマ婦人が、長男の嫁を引き連れて現れた。

僕に会わないという約束は、最初に来た時から無かった事になっていた。


「ニコル君の商品のお陰で、髪も肌も凄く調子がいいの!」


「喜んでいただけて、何よりです」


『ニコッ!』


「「キャーーー!」」


「ニコル君、その笑顔はいけないわ。私には、夫がいるのよ!」


「ニコルさんは、罪作りです!」


「すみません。顔を隠しましょうか?」


「いいえ。その必要無いわ。勿体ない!」


「お義母様の言う通りですわ!」


「そっ、それでは、このまま接客させていただきます。商品は、今回も此方に出して宜しいですか?」


「良いわよ。お願いね」


僕は屋敷のロビーに、八畳程のプレハブ小屋を取り出した。

その中の棚には、商品がズラリと並んでいる。



「あらニコル君、来てたのね」


「やあ、エミリ」


アレンさんとエミリの家は、この屋敷の近くにあった。

過去に二度訪れたが、二度とも会っている。


最初に会った時は、音沙汰が無かった事で酷く怒られた。

しかしエミリの《魔眼》スキルでヤマトの正体がバレ、両親を救った事に感謝された。


「あー、イケメンの人ー!」


「わー、イケメンのおじちゃんだー!」


「ポムはどこー?」


現れたのはエミリの三人の子供達で、六歳の娘エミリアと四歳の娘アレーナと三歳の息子エレンである。

偶然にも上の子はうちのエミリア、下の子は村の住人と同じ名前だった。


「ポム、出ておいで」


「モキュッ!」


ショルダーバッグから、ポムが姿を現した。


「ポムー!」


ポムはエレク君の、お気に入りになっていた。

僕はエレク君に、ポムを手渡してやった。


「ニコル!」


すると後ろから、僕を呼ぶ声がした。

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