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第三十四話 避難完了の日

伯爵達は商品の購入が終わると、お昼にチーズバーガーとフライドポテトを食べ、満足して王都に帰って行った。


やがて日が落ち、ユミナとバロン君が帰る時間になった。


「「バロン君、元気でね!」」


「サーシアとレコルも!」


「ニコル君、色々とありがとうございました」


「礼を言われる程、何かした覚えは無いんだけどな」


「そんな事ありません」


「行商しに領地へ行く事になったから、その時はよろしく」


「はい。でも、良かったんですか?」


「御婦人方を納得させるには、仕方無かったからね」


「フフッ。それでは、またグルジット伯爵領でお会いしましょう」


こうして、ユミナとバロン君は帰って行った。



翌朝、仕事を《影分身》に任せ、ヤマトに変装しグルジット伯爵邸に《転移》した。


そこでは既に、出発の準備が整っていた。


「ヤマト、来たのか」


「今日が最後なのだろう。《亜空間ゲート》を、回収しに来た」


「そうだったな。するともう、此処へは戻れんのだな」


「《結界》は直に消える。用事があるなら、魔物を倒し辿り着けば良い」


「フッ、言ってくれる。それが、どれだけ大変な事か。それに《結界》が無ければ、この辺も荒らされてしまうだろう」


「そうだな」


「ヤマトよ。王都内の魔物だけでも、排除できぬか?」


「どうだかな」


「はぁ、諦めるしかないのか?」


「復興は国の重鎮であるあんた達が、頑張ってくれ。餞別に、ノーステリア大公爵領まで送ってやる」


「本当か? それは助かる。私の領地とグレンの領地は、ノーステリア大公爵領に隣接しているんだ!」


「あんたらの領地に行った事があれば、直接送れたのだがな」


「いや、充分だ。プラーク街から帰るのに、王都を迂回しながら二ヶ月は覚悟していた」


「そうか。では、準備を始める」


「待ってくれ。プラーク街で、馬車の手配をしている」


「それなら、そいつらを先に移動させよう」


僕とグルジット伯爵は、《亜空間ゲート》を潜りプラーク街の別荘へ移動した。



「この《亜空間ゲート》は、ノーステリア大公爵領に設置する。取り敢えず回収するぞ」


「ああ、分かった」


《亜空間ゲート》を回収し庭に出ると、十六台の馬車が停まっていた。

この事から、大人数になる事が伺えた。


聞いてみたところ、両家合わせて百人を越えるらしい。

王都にあった馬車も、車体は魔法袋に入れ馬は頭を下げさせて《亜空間ゲート》を通ったとの事だ。


「グルジット伯爵様、準備は整っております」


「そうか。全員いるか?」


「はい」


「すまんが、少し予定が変わった」


「えっ!」


「話しは後だ。みんなそのまま、じっとしててくれ」


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」


「いいか?」


「ああ、頼む」


『『『『『『『『『『フッ!』』』』』』』』』』


『『『『『『『『『『スタッ!』』』』』』』』』』


「「「「「「「「「「うわっ!」」」」」」」」」」


次の瞬間人と馬車を、ノーステリア大公爵領の開けた場所に《転移》させた。



「もう、着いたのか?」


「ああ、領都の近くだ」


「グルジット伯爵様、これは?」


「《転移魔法》だ。ここは、ノーステリア大公爵領だ」


「「「「「「「「「「えっ!」」」」」」」」」」


「お前達が驚くのも無理はない。私も驚いている。兎に角これで、移動の距離は大幅に削減できた」


「「「「「「「「「「信じられない・・・・・」」」」」」」」」」


みんなの視線が、僕に集まった。



「これは、其方の方のお力なのですか?」


「そう。ヤマト(・・・)の力だ」


「えっ! それでは、私達の命の恩人」


「そういう事だ」


「あああああ、ありがとうございます」


「「「「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」」」」


「分かった。鬱陶しいから、それ以上の感謝はいい!」


「「「「「「「「「「そんなぁ」」」」」」」」」」


「その代り、お前達はこの《亜空間ゲート》を見張っていろ!」


回収した《亜空間ゲート》を、取り出しながら言った。


「「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」」」


「私達は一度王都へ戻り、皆を此処へ連れて来る」


「「「「「「「「「「分かりました!」」」」」」」」」」


グルジット伯爵と僕は、《亜空間ゲート》を潜り王都へ戻った。



グルジット伯爵は使用人達を順次移動させ、直にやって来たラングレイ伯爵家の人達もそれに続いた。


全員の移動が完了すると、伯爵達は使用人達を先に領地に帰した。

伯爵達は、ノーステリア大公爵に会いに行く事になった。


「終わったな。《亜空間ゲート》は回収するぞ」


「ああ、構わない」


グルジット伯爵の了承を得て、《亜空間収納》にしまった。


「ヤマトよ。これを受け取ってくれ」


ラングレイ伯爵が、袋を差し出した。


「これは?」


「私とマイクからの謝礼だ。《二億マネー》入ってる」


「いらん」


「そう言わず、受け取ってくれ!」


「それなら、《復興》の為にそのまま寄付する」


「むっ、分かった。復興に役立てると、約束しよう」


ラングレイ伯爵は僕が受け取らないと察したのか、差し出した袋を引っ込めた。



「ヤマトよ。私達と一緒に、ノーステリア大公爵に会って行かないか?」


グルジット伯爵が、そんな提案をしてきた。


「遠慮する。面倒に巻き込まれるのは、御免だ」


「ははっ、見透かされたか。《英雄》として、勲章を与えて貰おうとしたのだがな」


グルジット伯爵は、《貴族席》にも推薦する気でいた。


「そんな事をしても、俺は国に属さないからな」


「残念だ」


「フン。もう行くぞ」


「そうか、また何処かで会おう!」


「マイクよ。三ヶ月後に、また会えるだろ!」


『ニッ!』


ラングレイ伯爵は、僕がニコルとして行商に行く事を匂わせた。



「ラングレイ伯爵、何の事かな?!」


『ギンッ!』


僕はラングレイ伯爵に、睨みを利かせた。


「いや、何でもない」


ラングレイ伯爵は、『これが原因で行商の件が無くなったら、エマに叱られる』と冷や汗をかいた。


「ヤマトさん、大変お世話になりました」


「ああ、じゃあな」


最後にユミナに素っ気なく別れを告げると、《亜空間ゲート》を回収しに王都のグルジット伯爵邸に《転移》した。

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