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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
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第十七話 一味唐辛子

夜明け前、僕は勇也さん達が泊まる宿で目が覚めた。


宿に帰ってからもしばらく酒を飲んでいて、そのまま全員眠ってしまった。

目覚めて目に入ったのは、勇也さんが身支度をしているところだった。


そんな勇也さんと目が合った。


「ニコル、済まないな。パーティーに誘っておいて、誘った本人が一方的にいなくなって」


「気にしないでいいですよ。正直、半分ほっとしてます」


「俺は三年後に向けて強くなる。その時、縁があれば一緒に戦ってくれ」


「約束はしませんが、縁があればいいですよ」


僕は《物理防御力+500》のペンダントを差出した。

商品として売る為に作った物だ。


「ん、これは? 《物理防御力+500》」


勇也さんは、ペンダントを《鑑定》して少し驚いている。


「餞別です。勇也さんには強くなってもらって、魔王を倒して欲しいですからね」


「こんな高価な物をくれるのか?」


「はい。遠慮しないでください」


「ありがたく頂くよ。これがあればレベル上げが大分楽になる」


そう言って、勇也さんはペンダントを受け取った。


「ありがとな。それじゃ、行くわ。元気でな」


「あっ、僕も行きます。みなさんに挨拶無しですけど」


「それじゃ、外まで一緒に行くか。・・・みんな、元気でな」


勇也さんは、寝ているパーティーメンバーに視線を向け別れを告げた。

宿を出ると人影の無いところへ行き、僕は勇也さんが《転移》するのを見送った。


「勇也さん。体に気を付けてください」と、ひとり呟いた。



勇也さんと別れて、僕は借家に帰って昼まで寝た。


「もう、昼か。腹減ったな」


僕は身支度をして、お気に入りの食事処に行く事にした。

起きたばかりでどうかと思うけど、体が若いのでボリュームのある定食でも大丈夫だ。


店に入ると《から揚げ定食》を注文した。

僕は前世で、から揚げに《七味唐辛子》を掛けて食べるのが好きだった。

しかし、店のテーブルの上には置いてなかった。


こっそり《一味唐辛子》の入った瓶を取り出した。

これは、僕が育てた唐辛子から作ったものだ。

本来なら七味唐辛子がいいんだけど、まだ材料が揃ってない。


から揚げ定食が運ばれて来た。

僕は店員に見られないようこっそり掛けたつもりだったが、料理長がたまたま通り掛かってしまった。

料理長は、好奇心から僕に聞いてきた。


「おい、から揚げに何を掛けてるんだ?」


誤魔化す言葉が浮かばなかった。


「えーと、辛味のある調味料です」


「ふーん。初めて見るが、美味いのか?」


「僕は好きですけど、他の人は知りません」


「なあ、から揚げ一皿サービスするから、それ一個くれないか?」


「えー」


普通、客にそんな事言うか。


「頼む! 俺の感がうずくんだ。これを逃しちゃならねえと。なあ、一個だけ頼むよ」


「分かりましたよ。その代わり、一皿お願いしますね」


「ああ、分かった」


料理長は、から揚げを一皿作って持ってくるよう調理場に伝えた。

そして、一味唐辛子の掛かったから揚げを口に放り込んだ。


「うめー。何だこの食欲を掻き立てる辛さは、もう一個食わせてくれ!」


「いいですよ。もう一皿来ますから」


「おお、ありがてー。もぐもぐ。うめー」


「ハハッ」


「なあ、この調味料どこで手に入れたんだ」


どう答えていいか迷う。


《大魔導錬金術》レベル7で覚えた《品種改良》の能力で作った種を、《亜空間農場》で育てたものだ。


五歳の頃《空間属性魔法》を検索した時、《過去の勇者》が作成したオリジナル魔法に《亜空間創生》と言うのがあった。

当然僕は、それを覚える事ができた。


それは、その名の通り亜空間を作れるのだが、その中に地上と同じ生活空間を作って住む事もできるのだ。

その時は、僕の固有スキルの《亜空間収納》より凄いと驚いた。


亜空間に畑を作って、そこで唐辛子を育てたのだ。

他に収穫できる農作物は、黒胡椒と砂糖黍とパイナップルとバナナだ。村の畑とは別に作ってる。


「あのー、これは田舎の畑で作った物ですが、育てるのが難しく自分で使う分しか確保できないんです」


「他では作ってないのか?」


「ええ、多分。他所で見た事はありませんね」


「なあ、少し譲ってくれないか? 金は払うから」


「でも、値段を付けた事ないから、売るにしても困りますね」


「じゃあ、このコップ一杯で十万マネーでどうだ」


そう言ってグラスを差し出した。

贔屓にしている店なので無碍にもできず了承した。


とりあえず、食事を済ませてからと言う事になった。

一味唐辛子を掛けたから揚げは美味かった。二皿目も全部食べて、腹いっぱいになってしまった。


食事が済むと、店員に料理長を呼んでもらった。

そしてコップと同じくらいの蓋付きの瓶を持ってきて『これでいいか』と、聞いてきたので了承した。


僕の瓶から移し変えて店長に渡す。

そして十万マネーを大銀貨十枚で受け取り、定食のお代もただにしてくれた。


「肉野菜炒めの味付けに使っても美味しいですよ」と、アドバイスし店を出た。


「ふー、思わぬ収入だった。畑をもっと拡張するかな?」


そんな事を呟き、繁華街を歩いた。

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