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第二十三話 新たな協力者

十日間昼夜ぶっ通しで魔素を回収し続け、僕は体力的に限界がきていた。


しかし、一向に終わる気配がなかった。

『多少、魔素濃度が薄くなったかな』と、思えるくらいである。


規模がデカ過ぎて、自分の無力さを実感した。


「駄目だ。もう、持たない」


『少し休め。お主は人間の癖に良くやった』


離れた場所にいる筈なのに、魔王様には僕の呟きが聞こえたようだ。

念話で返事が返ってきた。


「すまない。少し寝たら戻る」


『充分、休んでいいぞ。どうせ、長丁場だ』


「だが」


『お主がいてもいなくても、状況は然程変わらん』


「くっ、分かった」


僕は反論できず、《亜空間農場》の家で深い眠りについた。



「ふぁー、良く寝た!」


八時間たっぷり眠り、僕は元気を取り戻した。


魔素回収作業に戻る前に、ある事が気になった。

そのある事とは、勇者達の様に《魔人》になってしまった人達の事だ。


僕は《影分身》達に殺害の指示を出せず、魔法で眠らせるよう指示した。

そして、《亜空間農場》で保護させた。


「どうにか、直せないだろうか?」


魔人になって《狂暴性》が増したとはいえ、その殆どは普通の人だった筈。

勇者達とは違う(・・)


僕は治療法を、《検索ツール》で調べた。


「くそっ、無いのか!」


念の為、魔王であるサムゼル様に聞きに行く事にした。



「そんな事になっておったか!」


「はい」


プラーク街のダンジョンに《転移》すると、早速サムゼル様に相談した。


「だがハッキリ言って、魔人を人に戻す方法は無い」


「やっぱり」


サムゼル様の答えは、《検索ツール》と同じだった。


「ニコルよ。だったら作れば良いのじゃ!」


「えっ!」


「お主には、類いまれなる《錬金術》があるではないか!」


「そっ、そうか。諦めるのは、まだ早いですね」


「その通りじゃ! 魔素の回収なら、妾も手伝うのじゃ!」


「ありがとうございます」


「悪いが、我は行けぬぞ」


「はい。ダンジョンを離れる事は、大きな危険を孕んでると知りました。サムゼル様は、ここを守って下さい」


「うむ」


この後ゼルリル様を連れ、爆心地へ戻った。



「成る程。酷いものじゃ」


ゼルリル様は被災の光景を見て、眉をしかめた。


「向こうに、魔王様がいるので行ってみますか?」


「うむ。妾も会ってみたいのじゃ!」


「それじゃ、行きましょう」


僕達は空を飛び、もう一人の魔王様の元へ向かった。



「お待たせしました」


僕の口調は、自然と元に戻っていた。


「早かったな。もっと休んでいて良いのだぞ」


「充分休めたので大丈夫です。魔王様も、休まれたらどうですか?」


「何だ。魔王と気付いておったか?」


「はい。私の名は、ニコルと申します。今まで無礼な口を利いて、すみませんでした」


「別に構わん。わしはアムゼルだ。それに、まだまだ余裕。伊達に魔王を名乗っておらぬ!」


「流石ですね」


「ところで、隣にいるのは同族の様だな?」


「はい」


「ゼルリルなのじゃ!」


「ゼルリル? あの赤子だったゼルリルか?!」


「妾は、覚えておらんのじゃ」


「それはそうだ。わしはそなたが赤子の時、この世界に来たのだ」


「随分、昔なのじゃ」


「すると、ゼルリルの歳は・・・・・」


「アムゼルジジ上、妾の歳の話しはいいのじゃ。それより、魔素の回収を手伝うのじゃ!」


「そうか、頼んだぞ!」


こうして、三人掛かりで魔素の回収が始まった。



そして、爆発から三ヶ月が過ぎた。


一帯の魔素は、希薄した状態にまでなった。

しかし魔素は地中にまで染み込み、回収が難しくなっていた。


「もう、良かろう。魔物は発生するが、人が魔人になる程ではない」


「これ以上やっても、効率が悪いのじゃ」


「そうですね。魔素が残っていた方が、魔物もそこから出て行かないですし」


魔素の回収作業は、こうして終わりを迎えた。


二人が作った高濃度の魔素球は、僕に託された。

数が多過ぎて《アイテムボックス》の邪魔になるし、二人には必要のない物だそうだ。



「この後の復興は、大変だな」


「そうですね」


「ニコルなら、錬金術でチョチョイのチョイなのじゃ」


「いいえ。ここから先は、国の仕事です」


「そうなのかえ?」


「商人ですから、対価を支払われれば協力はしますが」


「以外と、現金な奴じゃのー」


「ハハッ。それに今は、他にやる事がありますし」


「やる事?」


「魔人になった人達を、早く元に戻してやらないと」


「そうじゃ。そんな事を言っておったのじゃ」


「ある意味、復興より難しいかもしれんな」


「はい。どうしていいやら」


僕は魔素を回収しながら、《亜空間収納》で薬を作っていた。

しかし、全て失敗に終わった。



「ニコルなら、きっとできるのじゃ!」


「頑張ります。これ、今回のお礼です」


そう言いながら《亜空間収納》を開き、ゼルリル様に沢山のケーキをプレゼントした。


「こっ、こんなにケーキを貰えて、ラッキーなのじゃ!」


ゼルリル様は、満面の笑みを浮かべた。


「三ヶ月近く働いて貰って、こんなお礼しかできなくてすみません」


「ニコルのケーキは、絶品なのじゃ。アムゼルジジ上も、一緒に食べるのじゃ!」


「そうか絶品か。それなら、わしもいただくとしよう」


「ニコルも、パパ上の所に行くのじゃ!」


「いえ。僕は眠いんで」


「そうかえ?!」


ゼルリル様とアムゼル様はケーキをお土産に、サムゼル様の待つダンジョンへ帰っていった。


「本当、あの人達タフだな」


僕はこの後、《亜空間農場》の家で深い眠りについた。

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