第十六話 勇也の決断
朝食を食べながら、勇也さん達の戦力を考えた。
「勇也さんは、勇者だけあってレベルが低い割りにステータスが高い。レベルさえ上げれば、僕なんかより強くなると思う」
「問題は、他のメンバーがいずれ勇也さんと差が付きすぎて、足手まといになりそうなんだよね」
「人選をし直した方がいいんじゃないかな?」
「ふー」
僕はため息を吐く。
「今日は、露店の場所を予約しに行こう。いい場所が取れればいいんだけど」
◇
ツイてる。二日後の休日、メインストリートの一番人通りの多い場所をキャンセルが出て借りられた。
休日価格という事もあり、一万マネーも取られたんだけどね。
ちなみに、この世界の一週間は六日。その週初めが休日である。
一ヶ月はどの月も三十日。
一年は十二ヵ月で三百六十日である。
夕方までやる事が無く、繁華街で店をまわり時間を潰した。
◇
夕方になり、エーテルの街に転移した。
勇也さん達は、探すまでも無く昨日の食堂にいた。
僕が店に入ると、勇也さんが僕に気付いた。
「よー、ニコル。丁度良かった。話しがあるんだ」
「皆さん、こんばんは。勇也さん、話しって何ですか?」
「昨日の褒賞の話しが気になって、午後から王都に行って来たんだが、国というか宰相の態度が怪しい」
「どうしてですか?」
「『魔王を倒したら俺は元の世界に帰るから、爵位も五億マネーもいらない。その代わり、武器や防具を揃えたい』と、言ったら今回も全然相手にされなかった」
「そうですか」
「しかも、来月から勇者パーティーの活動資金も打ち切られた。『ダンジョンで稼げ!』だと」
「うわ、酷い! 宰相は魔王を討伐する気ないんじゃないですか?」
「何を考えてるか分からん。そんな分けで、今後の事をみんなで話してたんだ」
「随分、深刻な話しですね」
「まあな。こうなってくると、俺以外の褒賞も怪しくなってきた」
「勇也よ。わしらはパーティーを組んでから短いが、成長著しい勇也と一緒にいればさらにパーティーの実力は上がると思っちょる。褒賞が無くてもわしはいいと思うぞ」
「えー、私はやだよー。褒賞目当てで志願したんだからね」
「お姉ちゃん・・・」
「ニナはぶれないっすねー」
勇也さんが、何かを決意したような表情をした。
「みんな聞いてくれ、俺は・・・・・」
みんなは、勇也さんが喋り出すのを待つ。何を言うか察しているようだ。
「元の世界で戦闘なんてした事も無いこの俺が、この世界に召還され王城で訓練して戦い方を覚えた。料理の普及でサボったりもしたけど、ダンジョンでレベルも上げ、今は一人である程度戦えると思ってる」
「みんなにとって何が正解か分からないが、俺がみんなの前からいなくなれば、少なくとも以前の職場に戻れるだろう」
いや、勇者がいなくなるんだ。何らかの罰を負わされると思うぞ。
だが、敢えて言わない。
「俺と一緒にいれば、さらに厳しい戦いを強いるようになる」
「みんなに相談せず、黙っていなくなろうとも考えた。しかし義理を通し戻って来た」
「みんなには悪いが、俺はこの国を出る。黙って行かせてくれ! 出て行く理由は、この国の上層部に胡散臭さを感じたからだ!」
「「「「「・・・・・」」」」」
「何かしんみりしてきたっすね。こうなる気はしてたっす」
「わしは望んでパーティーに入ったわけじゃないが、今はみんなを仲間だと思っちょる。寂しいわい」
「まだ、国王様に訴えれば何とかなるかもよ。それでも行っちゃうの?」
「今回の件で、宰相が何か手を打ってくるかもしれない。手遅れになる前に出たい」
「そうなの?」
「お姉ちゃん。私は王都に帰りたい。魔王と戦うなんて嫌」
「レナ・・・」
ここでみんなの会話が途切れた。
そして勇也さんはみんなの顔を見渡し、決意した表情で再度話し出す。
「みんなには悪いが、俺は明日夜明けと共にこの街を出る。みんなは何も知らされず、俺がいなくなったと国に報告してくれ」
「仕方ないのう。今日でお別れじゃな」
「寂しくなるわね。こっそり戻ってきていいんだからね」
「勇也君のスイーツ美味しかった」
「楽しかったっすよ。今からは、お別れ会っすね」
「じゃあみんな、しんみりしないで飲み直そう」
「「「「おう!」」」」
そうして、夜遅くまで飲み続けた。




