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第十六話 ユミナの救出

僕の頭の中で、助けを求める声が聞こえた。


「君は、誰なんだ?!」


『せめてこの子だけでも、助けて下さい!』


「今、何処にいるんだ?」


『助けて、お願い!』


「僕の声は、聞こえてない? 待てよ。この声、聞き覚えがある。ユミナなのか?!」


十数年ぶりに聞くその声は大人っぽくなっていて、直ぐに気付かなかった。

それにこの通信は、あちらからの一方通行の様だ。



「ニコル?」


「ああ、すみません。今頭の中で、助けを呼ぶ声がしたんです」


「念話か?」


「さあ。でもその声が、昔の知り合いみたいなんですよ」


「女かえ?」


「まあ、そうですけど」


「ほほう。それはそれは」


ゼルリル様が、いやらしい目で僕を見た。


「緊急のようなので、お暇します。《転移》」


『フッ!』


僕はゼルリル様の視線から逃れる様に、この場を去った。



ユミナは王太子と結婚しているので、王城の近くに《転移》した。


「何だこの有様は!」


王城のフェンスが外側に吹き飛び、敷地が焼け野原になっていた。


「それより、今はユミナだ!」


僕は《地図》機能で、ユミナの居場所を探した。


「いたっ! 三階だ」


その場所の近くには、リートガルド伯爵の件で行った事があった。


僕は素性を隠す為前世の自分に変装し、帯剣してから王城内に《転移》した。



「グフッ!」


「ゲフッ!」


転移先で、見知った顔が深手を負っていた。

グルジット伯爵と、ラングレイ伯爵である。


その傷を負わせた相手は、ガーランド帝国の勇者達だった。


『ウガー! 止めだーーー!』


「不味い!」


『シュバッ!』


『ガイーーーン!!』


僕は《瞬動》スキルで間合いを詰め、狂戦士の振るう剣を受け止めた。



「ウガー! てめえ誰だーーー!」


狂戦士は大剣を振り上げ、今度は僕に襲い掛かった。


『ヒュン!』


『ボトッ!』


『ブシューーー!』


僕は超速で剣を振るい、狂戦士の首を落とした。

そして落ちた首から《悪事矯正リング》が転がり、紫色(・・)の血飛沫を吹いた。


狂戦士の殺気に当てられ、僕は初めて(・・・)人を殺めてしまった。


「ウガーーーーー!!! いてーーーーー!!!」


すると落ちた首が叫び出し、胴体は大剣を振り回した。


「「「「「「「「「「「なっ!!」」」」」」」」」」」


その場にいた者は、勇者達を含め全員驚愕した。



「こいつ、首を斬っただけでは死なないのか?!」


「てめー、この野郎!」


『ブオーーー!』


『ヒュン!』


魔槍士が僕目掛けて突いた槍を、剣の一振りで真っ二つにした。


『ヒュン!』


『ブシューーー!』


そのまま剣を切り返し、魔槍士の胴体を真っ二つにした。


『バタリ!』


「うおーーー!!! いてーーー!!!」


「こいつもか!」


「チッ、不味いな。《転移》」


『フッ!』


賢者がそう呟くと、次の瞬間勇者達の姿が消えた。



賢者の機転で、勇者達はダンジョンに《転移》した。


「グギャオーーーーー!!」


「チッ! メギド()スラッシュ!!」


『ズサッ!!』


『ドサッ!!』


襲い掛かって来たダンジョンボスを、勇者は速攻で倒してしまった。


「すまねー、悪羽魔(オハマ)


「気にするな」


「ところで、お前等大丈夫か?」


「ウガー! 大丈夫じゃねー!」


「見て、分かんだろ!」


「うん、大丈夫だな。お前等、分かれた体をくっ付けて押さえてくれ。エリクサーを使う」


「「「「ああ」」」」


「キーヒッヒッ!」


「ウガー! てめー、笑ってんじゃねー!」


「キーヒッヒッ! これで、良く生きてられんな?」


「全くだ」


「魔人になったせいなのか?」


「ガーランド帝国で見た奴等は、死んでたぜ」


「確かに」


「ウガー! 無駄口きいてねーで、早く直しやがれー!」


「すまん。すまん」


賢者は《アイテムボックス》から《エリクサー》を取り出し、二人に掛けてやった。

すると、分断された体は忽ち繋がった。



「体が真っ二つになって生きてるなんて、訳が分からねーぜ!」


「ウガー! 今度会ったら、ぶっ殺す!」


「止めた方がいい。あいつは多分、《魔王に匹敵》する化け物だ」


「ウガー! そんな奴が、あちこちにいてたまるかー!」


罵烙(ばろく)は、どう思う」


「悔しいが、俺には剣筋が見えなかった」


「キーヒッヒッ! 逃げて正解って事か?」


「そうだな」


「俺達の目的は、どうすんだ?」


「敵対する化物がいるってーのに、国の支配なんて無理だろ」


「このままじゃ、気がすまねー! トンズラする前にダンジョンを爆発して、この国を地獄に変えるぞ!」


「ダンジョンコアの破壊か? 俺達死に掛けたんだぜ。勘弁しろよ!」


「爆発するって分かってりゃ、《転移》でどうにかなんだろ!」


悪羽魔(おはま)、どうする?」


「やってできねー事はねーな。置き土産にいいんじゃねーか」


「キーヒッヒッ! このダンジョンにも魔王がいたりしてな」


「「「「「何っ!」」」」」


「魔王を相手にすんだったら、今の俺達の実力じゃ無理だぞ!」


「ウガー! いるかいないかなんて、行って確かめりゃいい!」


「そんな事言って、いたらどうすんだ?!」


「ウガー! 殺ってやるーーー!」


勇者達はこの遣り取りを、暫く続けた。

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