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第十二話 勇者パーティー王都到着

勇者達は二ヶ月近く旅を続け、ようやく王都エストーレに辿り着こうとしていた。


「おい。王都が見えたぞ」


御者席の賢者が、仲間に告げた。


「やっと着いたか」


「ヒャッハー! あのでけえ壁の向こうが王都かー」


「馬車の旅は、もうこりたぜー!」


「ウガー、暴れてー!」


「キーヒッヒッ!」


勇者達がこれ程時間が掛かったのは、途中ダンジョンに寄ったからである。


ダンジョン探索者試験を余裕で合格というかやり過ぎて、試験官達を実技で半殺しにしている。

そして、ダンジョンを攻略(・・)するまで留まった。


王都に入る順番が来ると、ダンジョン探索者カードを見せ入都料を支払いすんなり入る事ができた。



「ウガー! 腹へったー!」


「俺もだ」


「事を起こす前に、腹ごしらえだな」


「何処にすっか?!」


「キーヒッヒッ! そこの店はどうだ?」


「おっ、暖簾がある。日本の食堂みてーじゃねーか!」


「決まりだな」


「ウガー! 行くぞー!」


勇者達は、勢い良く馬車を降りた。


「おい、お前等だけズリーぞ!」


「馬車はもういらねーだろ! 盗まれてもいいから、その辺に置いとけ」


「チッ! いい気なもんだぜ!」


賢者は愚痴を溢しながら馬車を止め、御者席から降りた。

旅の間は、賢者が御者をずっと務めていた。



勇者達が入った店は、《御食事処やまと》だった。


「ウガー! うめーぞ!」


「ほんとだぜ!」


「店員。餃子と唐揚げとトンカツ、三皿ずつ追加だ!」


「はい」


「ビールも大ジョッキで、人数分持ってこい!」


「はい」


「キーヒッヒッ! 焼き鳥盛り合わせも頼む」


「はい」


「俺は、枝豆とだし巻き玉子」


「はい」


ガーランド帝国の帝都にも日本食屋はあったが、味も品数も上回っていた。


この後王城に行く予定が、宴会が始まってしまった。



「また、来るぞー!」


「ありがとうございました」


勇者達は、昼過ぎから閉店まで店に居座った。


「馬車、なくなってるな」


「構わねーよ」


「キーヒッヒッ! 『馬車の持ち主は居ないか?』って、衛兵が聞きに来たぜ」


「マジか?!」


「いいから、宿を探すぞ!」


「チッ!」


この日は酔っ払ったまま、宿で寝てしまった。



翌日、朝食を食べ終わると、勇者達は貴族街に向かった。


「何だお前ら?! この先は、貴族街だぞ!」


『グシャッ!』


狂戦士が守衛をいきなり殴り飛ばし、気絶させた。

その顔は、陥没している。


「なっ!」


「ウガー! 俺等は、国を乗っ取りに来たー!  門を開けやがれー!」


「なっ、何血迷った事を!」


『ピーーーーー!』


もう一人の守衛が、笛を鳴らした。



『『『『『『『『『『ダダダダダッ!』』』』』』』』』』


鉄格子の門扉の向こうに、兵士が大勢集まって来た。


「どうした?!」


「族だ! 『国を乗っ取る』と、クーデター紛いの事を言っている!」


「何っ!」


『グシャッ!』


会話の最中(さなか)、もう一人の守衛も同じ目にあってしまった。


「ウガー! 俺は、門を開けろと言ったんだーーー!」


『ドゴーーーン!』


「「「「「「「「「「うわー!」」」」」」」」」」


狂戦士は門扉を殴り、無理矢理抉じ開けた。



「ウガー! 行くぞー!」


「お前は、全く」


「キーヒッヒッ!」


『『『『『『『『『『ダダッ!』』』』』』』』』』


「こいつらを、捕らえるぞ!」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


貴族街に足を踏み入れた勇者達の前に、兵士達が立ちはだかった。



「ウガー! 皆殺しだー!」


狂戦士はそう叫ぶと、大剣を鞘から抜いた。


『ブオン!』


狂戦士の一振りで、六人の首が飛んだ。


「えっ!」


「うわー!」


「不味い。城に危機を知らせねば!」


指揮官は狂戦士に只ならぬ脅威を感じ、魔道具の信号弾を取り出した。


『ヒューーーーー!』


信号弾は赤い煙をはきながら、空高く打ち上げられた。


「キーヒッヒッ! 無駄な事を」


勇者達はその場にいた兵士を皆殺しにし、王城を目指した。



王城では赤い狼煙を確認し、騒ぎになっていた。


「大変です。グルジット伯爵! 貴族街の門付近で、赤い狼煙が上がってます!」


「ついに来たか」


グルジット伯爵は、小さな声で呟いた。


「えっ、何ですか?」


「いや。我々も、非常事態に備えるぞ!」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


グルジット伯爵は四年前に、魔法省の副大臣から大臣に昇格していた。

そしてその地位を利用し、城の魔法防衛を強化した。


勇者達は予定通り来たが、あれ以来ユミナの《未来視》スキルが反応していなかった。


「最悪な未来は、変えられるのだろうか?」


グルジット伯爵は、一抹の不安を抱えていた。

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