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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第二章 王都行商編
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第十五話 勇也叫ぶ

「紹介も済んだ事だし、飯にするか」と、勇也さんがみんなを促す。


料理とエールを頼み、先に運ばれてきたエールで乾杯をする。


「ニコルのパーティー加入にかんぱーい!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」


勇也さんは日本では未成年だが、気にした様子も無くエールを飲んだ。

この国の成人の年齢は十五歳で、飲酒もこの歳から許されてる。

同じ歳の僕も飲んでるしね。


料理が次々運ばれ、ご馳走になった。

いろいろ食べたが、だし巻き卵とポテトグラタン、レッドボアのステーキが美味しかった。


だし巻き卵とポテトグラタンは、勇也さんがこの店の店主に伝授したらしい。

レッドボアは隣りのダンジョン産で、運搬費も掛かり値段は高いが、非常に美味しいという事で注文してくれたようだ。



エールを飲みながら、勇也さんが愚痴り出した。


勇也さんは、三日前僕と別れてから王城へ行き、宰相様に謁見を申し込んだ。

しかしその日には合えず、今日の午前中の謁見となった。


「あの宰相、武器と防具の援助を申し出たら、自分達で何とかしろだと。最初の話しと違う。あったまくるぜ」


「えー、そうなの? そうしたら先に進めないじゃない」


「そうなんだ。それを言っても、全然聞き入れてくれない。王様に合わせてくれと言っても、断られた」


「今ある金で買い揃えても、全員分となると中途半端な物しか買えぬぞ」


「そうっすよねー。魔物もどんどん強くなるし、その度に買い換えられないっすよねー」


「俺は勇者だぞ。異世界召還物のテンプレだったら、聖剣や魔剣を寄越すだろう。どうやって魔王と戦うんだっての!」


「テンプレ? それ、美味いのか?」


「テンプレは、食い物じゃないぞ。ジャン」


勇也さんは、少し冷めた口調注意する。しかし、テンプレの説明は無い。


「ジャンは、くいしんぼね」


「すまん。勇也が作った天ぷらを思い出した」


勇也さんは、天ぷら食べさせたのか。僕も食べてみたい。


「それにしても、ミスリルや魔鋼の剣なら王都の店にもあるっすよ。何で俺っち達、ただの鋼鉄の剣なんすかね?」


「たぶん、宰相が懐に入れてる」


無口なレナが、小さな声で呟いた。


「「「「「???」」」」」


「宰相、権力を利用して国費をちょろまかす」


また、レナが呟いた。


「本当なのか?」


「うわさ。証拠無い」


「くそー! 宰相のヤロー!」


それからは、みんなが愚痴りだした。


「俺は望んで勇者になったんじゃないぞー。この国にさらわれたんだー。それで魔王を討伐しろだとー、てめえらでやれってんだー」


「わしだってそうじゃー。わしより優れた者はおったのに、みんな嫌でわしに押し付けたんじゃー」


「私の回りも嫌がってる人ばかりだったけど、魔王討伐報酬の爵位と褒賞金に目が眩んで志願しちゃった」


「私は教会の司祭様に『姉がいるんだから』と、言いくるめられて反論できなかった」


「おれっちは、楽しそうだから志願したっす」


「ニコル、お前だけが頼りだ。俺達を見捨てないでくれよな」


僕は、ほど良く酒に酔っていた。

《状態異常耐性》のアイテムを身に付けてるけど、酒酔いに関してのセーフティーラインをちゃんと設けている。

だから、酩酊する事は無い。


しかし、つい言ってしまった。


「勇也さん! 僕だって魔王討伐なんて嫌ですよ。魔王討伐が嫌なら、辞めて他の国に行ったらどうです? 勇也さん、以前言ってたじゃないですか!」


「「「「「えっ!」」」」」


「だっておかしいでしょ! 異世界の国に誘拐されて、死ぬかもしれない戦闘に送り込まれてるんですよ!」


「それはそうだけど・・・」


「何か理由でもあるんですか!? 召還者に逆らえない術が掛けられているとか」


「術は掛けられてないが、魔王を討伐しないと元の世界に帰れないと言われたんだ」


「誰に言われたんですか? 召還者ですか?」


「いや、宰相に聞いた」


「はー、それ信じるんですか? それに本当だとして、魔王討伐直後に元の世界に送還されたら、勇也さん褒賞が貰えませんね」


「・・・・・・・・・・・・・・・なーーにーー!」


今まで考えもしなかったようで、勇也さんは声を張り上げた。


そして酒盛りも終わり、会計は今回も勇也さんがしてくれた。

明日は、勇也さんの収納スキル《アイテムボックス》にあるドロップ品を、売りに行くそうだ。


しかし僕の最後言葉で、勇也さんの様子がおかしくなった気がする。

酔った上での発言だとしても、責任を感じる。

心配だったので『明日の夕方、また来ます』と、言い残し借家へ帰る事にした。


何もなければいいと願いつつ、僕は借家に転移しすぐに寝てしまった。

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