表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/401

第十一話 勇者パーティーと魔王の動向

悪羽魔(オハマ) 罵烙(バロク)率いる勇者パーティーは、断崖絶壁の山を越えてエステリア王国へ入国した。


一行は魔王から逃れる為、痕跡を残さぬよう気を付けた。

しかし金銀財宝はあるものの、エステリア王国の硬貨を持っていなかった。


そこで偶々通り掛かった商人の馬車を襲い、金品と馬車を奪った。

後々騒ぎにならぬよう、その商人は消し炭にしてしまった。


「おい、賢人。何処に向かってんだ?」


馬車の手綱は、賢者が握っていた。


「兎に角、南だ。ガーランド帝国から離れる」


「ウガー! 王都へ行けー!」


「何でだよ?」


「国を乗っ取るって、言ったろウガー!」


「キーヒッヒッ!」


「悪羽魔、どうする?」


「王都へ向かえ」


「そうかい」


勇者達の目的地は、ユミナの《未来視》スキル通り王都となった。



三日後。


「この国は、豊かだな」


「ああ」


「飯が美味いぜ!」


「ガーランド皇帝が欲しがったのも、分かる」


「殺っちまったがな」


「ひゃーはっはっ!」


「どうでもいいけどよ、そろそろ金が無くなるぜ」


「ウガー! 奪えばいいだろー!」


「キーヒッヒッ! そこの屋敷なら、金がありそうだ」


「でっけー屋敷だな」


「ウガー! 俺は行くぜー!」


「おいっ!」


狂戦士は馬車を跳び降り、屋敷へ向かった。


「やれやれ!」


賢者は呆れ、馬車で後を追った。



「へへへ、たんまり持っていやがったぜ」


「これで暫く持つな」


「皆殺しとは、俺の魔法は効いてないのか?」


《狂暴性》を押さえる為、賢者が全員に《平常心》の魔法を掛けていた。


「キーヒッヒッ! 目撃者は、始末するにかぎる」


「それはそうだが、騒ぎを大きくすると魔王に気付かれるかもしんねーぞ」


「賢人。もう三日も過ぎてる。気にし過ぎだ」


「何故だ?」


「索敵に優れていれば、とっくに追いついてるだろ!」


「一理あるが、油断は禁物だ」


賢者は、仲間達の警戒心が薄れていくのを感じた。


「ウガー! ぐだぐだ言ってねーで、馬車に戻るぞ!」


「くっ!」


「キーヒッヒッ! この家の馬車の方が、良さそうだぜ」


「おっ、いいの見付けたじゃねーか」


「それじゃ、乗り換えるとするか」


こうして勇者達は豪商の屋敷を襲い、大金と大きな馬車を手に入れた。



その頃ガーランド帝国の魔素が広がる地域では、《紫色の目を持つ者》が狩られる噂が広まっていた。


「苦しい思いをして折角生き残ったのに、何で狙われるんだよ!」


「あいつ、《鑑定》が効かなかったぜ!」


「それって、もしかして《魔王》じゃねーか?!」


「そんな訳ねーだろ! 魔王と魔人と言やー、仲間じゃねーか。何で狩るんだよ!」


「知らねーよ。どうでもいいから、逃げるぞ!」


彼等は、魔人になってしまった召喚者達である。

同じ召還者が魔王に狩られる現場を目撃し、命からがら逃げのびた。


彼等だけでなく、大爆発で生き残った召喚者の多くが魔人になっていた。



魔素の届かない地域でも、不安の声が上がった。


「あの黒い霧の中には、魔物がうじゃうじゃいるらしいぞ」


「人が入ったら、生きて帰って来れないという噂だ」


「帝都は、大丈夫なのか?」


「誰も戻って来れないんだから、分からんよ」


「帝都におられる領主様が、無事だといいんだが」


「そうだな」


「この国は、一体どうなってしまうんだ?」


先の見えぬ不安から、帝国民の気持ちは沈んでいた。



一方、帝城では。


「勇者達、戻って来ないな?」


「あんな殺人鬼、ずっと戻って来なければいいんだ!」


「馬鹿っ! 聞かれたら、殺されるぞ!」


「どっちにしろ、外に出られないんだ。何れ、飢えて死ぬだろ!」


「ギリギリまで、希望を捨てるな!」


「そんな事言ってもよ、何処に希望があるんだ?!」


「・・・・・」


この場にいる者達は、一様に俯いた。



『バンッ!』


そんな時、扉が勢い良く開いた。


『『『『『『『『『『ビクッ!』』』』』』』』』』


「聞け! 安全な場所へ行きたい者は、我の元へ集まれ!」


「あなたは?」


「素性など、どうでも良い!」


「この魔素や魔物の中、どうやって行くんだ?」


「我に任せろ!」


「そんな事言ったって」


「お主、こちらに来い」


「私ですか?」


指名された男は、不信に思いながらも近付いた。


『スッ!』


「「「「「「「「「「消えた!」」」」」」」」」」


二人の姿が消え、この場にいる者達は驚きの声を上げた。



数十秒後。


『『スタッ!』』


「「「「「「「「「「わっ!」」」」」」」」」」


二人が急に現れ、再び驚きの声を上げた。


「おい、みんな! 俺は今、魔素の無い街へ行ったぞ!」


「どういう事だ?」


「《転移》、《転移魔法》だよ!」


「《転移魔法》って、勇者が使うやつか?!」


「そうだよ!」


「だったら、俺達助かるんだな?!」


「ああ、助かるぞ!」


「「「「「「「「「「やったー!」」」」」」」」」」


「お主等、理解したな?」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


「では、城にいる者達に教えてやれ。そして、荷物を纏めてここへ集まれ」


「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」


魔王は《魔人狩り》をしながらも、《人命救助》を行っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ