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第九話 勇者パーティー、窮地に陥る

魔王の姿を見て、勇者達は驚愕した。


「まさかあの爆発で、全員生きておるとはな」


「あんな罠を仕掛けるとは、魔王のくせに卑怯だな?!」


「違う。あれは、我の意図したものではない。こちらも、迷惑を被った」


「偶然だっつーのか?!」


「そうだ」


「チッ!」


「この惨劇は、我がお主等を舐めておったのが原因」


「けっ、言い訳かよ!」


勇者は、言葉を吐き捨てた。



『スンッ!』


「血生臭いな。人を殺したのか?」


「ああ。リングの影響が無くなって、皇帝や貴族を殺ってやった!」


「勇者が魔人となって皇帝を殺すとは、何の因果か」


「抜かせっ!」


「やはり、野放しにできんな」


「続きをやろうってのか? いいだろう。決着をつけてやるぜ!」


魔王と勇者達は、再び対峙した。



「「「「「「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」」」」」」


勇者達は魔王の攻撃に圧倒され、息を上げていた。


「ステータスが三倍に上がったというのに、まだ届かねーのか?! 賢人頼む!」


悪羽魔(オハマ)、またあれをやるのか?」


「ああ」


「やらせんぞ!」


『カッ!!!』


「「「「「「うっ!!!」」」」」」


魔王が放った高レベルの《威圧》スキルに、勇者達は怯み動けなくなった。


「《超爆裂》!」


『ドゥォォォガーーーーーーーーーーーン!!!!!』


体が硬直した勇者達を、凄まじい爆発が襲った。


「くっ! 《転移》」


死を思わせる強力な魔法に、賢者は咄嗟に《転移》した。



「チッ、逃がしたか!」


魔王は空中に浮きながら、《結界》の中でそう呟いた。


勇者達がいた場所は、直径二百メートルのクレーターになっていた。

その範囲は今も、炎と爆風が吹き荒れている。


もう少し《転移》が遅かったら、勇者達は死んでいた筈だ。


「ウガーーー!」


「キヒャ!」


「うぐっ!」


「ボヘッ!」


「くっ!」


勇者達は一日に二度、死に瀕した。


「《上級体力回復》」


賢者は自身を回復させると、焼けただれた仲間達を回復していった。



「賢人、助かったぜ」


「おい、悪羽魔。戦うなんて、言ってる場合じゃない。本気になった魔王は、桁違いだ!」


「悔しいが、お前の言う通りだ」


「見付かる前に逃げるぞ!」


「何処へだ?」


《転移》した場所は、エステリア王国の国境近くにある街だった。


「このまま、エステリア王国へ行く! リングの効き目が無くなった今、密入国も可能だ」


「魔王は、追って来ると思うか?」


「魔王の索敵能力が、どれ程のものか分からん。俺達が力をつけるまで、対峙は避けたい」


「ウガー! ムカつくーーー!」


「キーヒッヒッ! しょうがねーだろ」


「この紫色の目は目立つ。足取りがつく様では不味い。目の色だけでも、変えるぞ。《変装》X6」


賢者は全員に魔法を掛け、紫色の目を白く見える様にした。



「どうだ?」


「おっ、おう!」


「キーヒッヒッ! いいんじゃねーか」


「ああ。元に戻った」


「狂暴性も押さえた方がいいな。《平常心》X6」


「「「「「うっ!」」」」」


「そこまでする必要あったか?」


「あちこちで、無闇に暴れてたら目立つだろ」


「それもそうだな」


「準備は整った。行くぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


勇者達は魔王から逃れる為、エステリア王国へ向かった。


◇◇


※時間は、ダンジョンコアが爆発した直後に戻る。


僕は察知した《危機関知》スキルに、最大の警戒を払った。


「《結界》」


「ニコルちゃん、どうしたの?」


「何か分からないけど、危険が迫ってる」


「えっ!」


「こんな事は、《魔王》が現れた時以来だ」


「そんなっ!」


「君達は僕が守るから、安心してくれ!」


僕は命に替えても、家族を守るつもりだ。


「うん!」


「「パパー!」」


緊張感が伝わったのか、サーシアとレコルが僕に抱き付いて来た。


「二人共。パパがいるから、大丈夫だぞ!」


「「うん!」」


そう告げると、息を飲んで非常事態に備えた。



「パパー、何も起こらないね!」


「起こらないね!」


「うっ、うん。そうだな」


《危機関知》スキルが反応してから一時間経つが、何も起こらなかった。

何も起こらないのは良い事だが、言った手前少しばつが悪かった。


《影分身》を飛ばしエシャット村やフロリダ村を確認させているが、変わった様子は無い。


その間も、《危機関知》スキルは反応したままである。

こんな事は、初めてだった。


「変だな」


「ねえ、パパ。大丈夫?」


「パパ、大丈夫?」


サーシアとレコルが、不安げな顔で僕を見上げた。


「ああ、大丈夫だ」


二人を安心させる為、頭を撫でてやった。


「かき氷でも、食べようか?」


「「うん、食べる!」」


緊張しっぱなしだと息が詰まるので、子供達をリラックスさせた。


結局この日は、何も起こらなかった。

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