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第八話 ガーランド帝国陥落

ガーランド帝国帝城には、異常を察知すると直ぐに《結界》が張られた。


今は魔物を退治しながら、魔素の混ざった空気を《聖属性魔法》で浄化している。


「皇帝陛下。城での魔物の発生は、押さえられました」


「ご苦労、ギルガメッシュ将軍。ところで、国の被害状況は分かるか?」


「申し訳ありません。全く持って、掴めておりません。ただ、帝都は壊滅的かと」


「そうか。お主も、家族が心配であろう」


「その件については、覚悟しております」


「すまぬな」


「お気に為さらずに」


「うむ。だがこのまま籠城が続けば、何れ食料は尽きてしまう」


「はい。魔物の増殖が収まらねば、もはや城外からの入手は不可能です」


「このまま飢え死にする訳にはいかん。何とかこの状況を打開せねば」


「宰相を始め、大臣共が話し合っております。いま暫くお待ちを」


「待っているだけというのも、何とも落ち着かぬものだ」


「そうですな」


「できれば魔素の影響の無い土地で、一刻も早く国を立て直したいのだが」


「それにはやはり、魔物が埋め尽くす土地を突っ切る必要があります」


「残った兵力で、突破は可能か?」


「何とも言えません。何処まで魔素の影響が、及んでいるか分かりませんので」


『ドゴーーーン!』


そんな会話の最中(さなか)、部屋の外で大きな物音と振動がした。



「ウガー! 皇帝は何処だーーー!」


音の原因は、狂戦士が振るった大剣が壁を砕く音だった。

その下の床には、死体が数体転がっていた。


『ザシュッ!』


「うあー!」


「キーヒッヒッ! この感じ、久し振りだぜ」


「おい。その部屋が、皇帝の執務室だ」


「ウガー! ここかーーー!」


『ドガーーーン!』


狂戦士が、重厚な扉を蹴破った。


「「なっ!」」


狂戦士を先頭に、勇者達は執務室に侵入した。



「久し振りだな、皇帝陛下。それに、ギルガメッシュ将軍」


「お主らは、勇者とその仲間!」


「その紫色の目は、どうした?!」


「この目か? 俺達はどうやら魔素の影響で、《魔人》になってしまった」


「「魔人だと!」」


「そのせいか、性格がやけに狂暴になってしまってな」


「お主ら、元々狂暴だったではないか?!」


「アーハッハッ! そうだったな。この首のリングのせいで、忘れてたぜ」


「陛下。こ奴等は《転移》を使えます。ここから脱出するには、交渉した方がよろしいのでは?!」


「そうだな!」


「将軍。何的外れな事を言ってるんだ?」


「何だと!」


「俺達はてめえらを、殺しに来たんだ!」


「何っ!」


「俺達を召喚したくせに、『戦争に使えなければ、用無しだ』と言って、《魔王襲来》が終わったとたん帝都から追い出しただろ!」


「くっ!」


「お主等は、人に害を与えられなくなった筈!」


「部屋の外の惨状を見て、分かんねーのか?」


皇帝が破壊された扉の向こうを見ると、近衛兵士の死体が幾つも転がっていた。



「まさか、リングの影響が無くなったというのか?!」


「そのまさかだよ!」


「何という事だ!」


「この国は、俺達が貰ってやる!」


「馬鹿を言うな!!」


「ヌオーーー! 勇者共よ、舐めるなーーー!!!」


ギルガメッシュ将軍は、怒号と共に《アダマンタイト》の剣を抜いた。


「別に舐めてないね。あんたの強さは、重々承知してる。だが俺達は、追放されている間あんたを越えた!」


そう言いながら、勇者も聖剣を構えた。


「その剣は、聖剣ゴルディバス!」


「ああ。《魔王襲来》の時に、貰ったやつだ!」


「やってはおらぬぞ。貸し与えたのだ。返せっ!」


「へー、そうだったんだ。今更、遅いぜ!」


皇帝は幾度となく取り戻す命令を出したが、勇者はそれを上手くかわした。



「それじゃ将軍。始めるか!」


「ウガー! 罵烙(ばろく)てめー、ズリーぞ!」


「その通りだ!」


「俺も行く!」


「キーヒッヒッ!」


賢者以外の仲間が、前に躍り出た。


「やれやれだぜ! 皇帝の首は、取っておけよ」


こうしてガーランド帝国皇帝とギルガメッシュ将軍は、勇者達に討たれた。



勇者達は皇帝と将軍を殺害した後、敵対した皇族男子・貴族・兵士を殺した。


そんな中、皇族女性と恐怖に怯え抵抗しなかった給仕達は生かされた。


「ウガー! 俺等の国だーーー!」


「好き放題だな!」


「宝物庫を漁ろうぜ!」


「キーヒッヒッ!」


「お前等、はしゃぐなよ」


「俺は崩壊寸前のこの国だけじゃ、満足できねー!」


「罵烙。戦争でも仕掛ける気か?」


「皇帝が落とせなかったエステリア王国を、落としてやる!」


「俺達だけでか?」


「兵隊がいるな」


「だったらよ、魔人になった奴等を集めようぜ」


「ウガー! 魔人部隊だー!」


「それじゃ、探しに行くか?」


「「「「「おう!」」」」」


勇者達は意気揚々にしているが、大事な事を忘れていた。



勇者達は城を出て、仲間になる魔人を探した。


「ウガー! 何だこりゃ!」


「ここにも、魔人の死体だぜ!」


「何人目だ?」


「キーヒッヒッ! 五人目だ」


「魔物に殺られた訳じゃねーな」


「魔物は敵意を見せない限り、俺等を襲わない」


「キーヒッヒッ! 魔人は魔物から、同類と思われてるんじゃねーか?」


暗殺者が言った事は、当たっていた。

魔人の体内には魔物と同じ魔石があり、それにより同類と見なされた。



「死体は全部、右胸を抉られてるな」


「そう言えば!」


「意図したものか?!」


「ウガー! 一体、誰の仕業だー!」


『シュタッ!』


「我の仕業だ!」


「「「「「「魔王!」」」」」」


勇者達の前に、再び魔王が現れた。

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