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第七話 魔人

魔王は剣戟の衝撃を逃す為空に《転移》し、そのまま数百メートル飛ばされた。


その直後、ダンジョンを中心に大爆発が起こった。

魔王は爆風の中、放心状態になった。


「ダンジョンコアを破壊されるとは、なんたる失態!!」


そして、この事態を悔やんだ。


《聖剣》は勇者が扱うと、魔物に対し《特殊効果》があった。

その力を解放する事で、魔王にも絶大なる力を発揮した。


「抜かったわ。奴のあの聖剣と技で、あの様な威力を発揮するとは!」


勇者に対し、魔王は警戒を怠り大した武装もしていなかった。


「こうなっては、収集がつかぬ。この国は、滅ぶしかなかろう」


魔素は広範囲に広がり、その回収には魔王を持ってしても時間が掛かった。

何しろ魔界で、百年掛けて集めた量である。


その魔素から次々と魔物が湧き出し、人々を襲った。


「これだけの魔物、我でもダンジョンコアとダンジョンが無ければ制御できぬ」


魔王は早々に、魔物を制御する事を諦めた。


「厄介なのは《魔人》。こ奴等は魔物と違って、魔素の広がる範囲から出ていける」


それは、大陸全土に害を成す危険を孕んでいた。


「こやつらだけは、殲滅する必要がある!」


魔王は一瞬で戦闘モードの装備を纏い、空を飛んだ。



「ヒャッハー! 人間がいたぜー」


魔人は人間を見付け、二人掛かりで両腕を掴んだ。


「なっ、何をする?!」


「血祭りに上げろー!」


「内臓を、抉り出せー!」


「何言ってんだ? 冗談だろ」


魔人は、剣を構えた。


「止めろー! 止めてくれー!」


『ザシュ!』


「ウギャーーーーー!!!」


魔人達は人を見付けては、殺戮を繰り広げた。



『ヒューーーーーーーーーー、ズドーン!!!』


魔人達の前に魔王が飛来し、土埃が舞った。


「ぶはっ! 何が落ちて来やがった?!」


『ビュン!』


『ズボッ!』


「グハッ!」


『バタッ!』


魔王は土埃の中から《雷槍》を放ち、剣を持った魔人の右胸を貫いた。


その貫通した《雷槍》には、紫色の球が突き刺さっている。

この球の正体は、魔人の体内で作られた《魔石》である。


魔石は右の肺で作られ、それにより人は魔人化する。

魔素の充満する中で活動できるのも、魔石の齎す効果だった。


だが魔石は、魔人にとっての《急所》でもあった。

魔王は、その事を知っていた。


その他魔人の特徴として、血と白目が紫色に変わる事が上げられる。



『ブオッ!』


風魔法が土埃を吹き飛ばし、その中から武装した魔王と魔人の死体が現れた。


「「なっ! 死んでる」」


「魔人共よ。殺戮の代償に、その命貰い受ける!」


「何言ってやがる。舐めんじゃねーーー!」


「ぶっ殺す!」


魔王は襲い掛かって来た魔人達に、右手を翳した。


『ビュン! ビュン!』


『ズボッ! ズボッ!』


右手から放たれた《雷槍》が、有無を言わさず右胸を貫き魔石を破壊した。


「「グハッ!」」


『バタッ! バタッ!』


二人は勢いのまま地面に倒れ、命を失った。


「ゆるせ」


『スッ!』


魔王は直ぐ様、次の魔人を探しに空を飛んだ。



一方、勇者はダンジョンのあった場所に戻り仲間を探した。


「あの爆発だ。まず、助からんだろう」


しかし、『自分が助かった様に、万が一がある』という思いがあった。


残虐性は以前より強くなったが、仲間意識は残っていた様だ。


「ウガー!」


「キーヒッヒッ!」


「爆槍!」


「《火炎竜巻》!」


「《テンペスト》!」


二時間に及び捜索していると、魔物を狩る集団がいた。



「お前等、生きてたのか?!」


「おー、罵烙(ばろく)。お前も生きてたか!」


「探したぜ!」


くしくも、仲間達は全員生きていた。


「あの爆発から、どうやって生き延びた?」


賢人(けんと)のお陰だ!」


賢人とは、賢者の名前である。


「賢人が死に瀕していた俺達を、瓦礫の中から探し出し救ってくれた」


「魔王と悪羽魔(オハマ)の戦闘が始まった時、《防御結界》を張ったがもろとも吹っ飛ばされた。あれが無かったら、全員危なかった。運が良かったぜ」


「ははっ、そうか。お互い、悪運は強い様だな」


「ああ。《魔人》になっちまったがな」


全員、白眼の部分が紫色に変わっていた。



「だがよ。お陰で、電撃が全く効かなくなった」


「ウガー! ステータスも上がったし、魔人も捨てたもんじゃないぜ!」


「キーヒッヒッ、だな」


他の連中も、勇者と同じステータスの変化が起こっていた。


「ほら。お前の剣も、回収しておいたぞ!」


賢者は《アイテムボックス》から聖剣を取り出し、勇者に渡した。


「おお、助かる!」


勇者は爆発で、聖剣を手放していた。


「ははっ、《ゴルディバス》よ。手放して悪かった」


勇者は聖剣を手にし、喜んだ。



「お前等、帝城に行くぞ!」


「俺達を用無しと言って帝都を追い出した皇族や貴族を、ヒーヒー言わせるのか?!」


「おっ、いいな!」


「ウガー! 皆殺しだー!」


「キーヒッヒッ、楽しみだ!」


「それじゃ、《転移》するぜ!」


「「「「「おう!」」」」」


賢者の言葉に、仲間達が応えた。


『フッ!』


次の瞬間、勇者達の姿が消えた。

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