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第五話 ボス部屋の下のただならぬ気配

時間は少し遡る。


ガーランド帝国の勇者パーティーは、ダンジョンのボス部屋にいた。


《魔王襲来》の時期が過ぎると、召還者達は揃って帝都を追い出された。

それは《悪事矯正リング》の影響を受け、戦争での利用価値が無くなったからである。


大半の者はダンジョン探索者を続けたが、スキルを活かし商売を始めた者もいる。

中には、砂漠の緑化を試みる者も現れた。


彼等は悪意を抑える(すべ)を身につけ、異世界の生活に馴染んでいた。


「本当に、やるのか?」


「ああ、やってくれ。お前達も、異論はねーな?」


「とっとと、やれよ」


「キーヒッヒッ!」


「ウガー!」


「異議無し」


勇者はボス部屋の下から、度々《ただならぬ気配》を感じた。

それが何なのか確認する為、賢者に穴を掘る様命じた。


「行くぞっ! 《縦穴》!」


『ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・・・・・!』


地面に直径二メートル程の穴が、開けられた。



「随分深くまで掘ったぞ!」


「絶対何かある。続けろ!」


「チッ、分かったよ!」


『ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・・・・・スカッ!』


「手応えが消えた。空洞がある!」


「空洞だと! 何か感じるか?!」


「分からん」


「ウガー! だったら、さっさと降りようぜ!」


「何が出るか分からねーんだ。気ー抜くんじゃねーぞ!」


「ウガー! うっせー!」


「キーヒッヒッ!」


勇者は危機意識の無い狂戦士に忠告したが、素直に聞き入れられなかった。



「《飛行魔法陣》」


賢者が魔法を唱えると、縦穴の中に魔方陣が出現した。

これは人を乗せて飛ぶ事ができる、《飛行属性魔法》の一種である。


「《光玉》。降りる準備ができたぞ!」


賢者は魔法で明かりを灯し、魔方陣に乗り込んだ。


「俺等も乗るぞ!」


「あらよっ!」


「よいせっ!」


「キーヒッヒッ!」


「ウガー!」


「全員乗ったな。出していいか?」


「ああ、出してくれ」


『スーーーーー!』


勇者達はこうして、地下深く潜って行った。



一キロ程降りると、空洞に辿り着いた。


「広いな」


「ああ」


「キーヒッヒッ! 悪羽魔(オハマ)が言ってたダンジョンボス以上の魔物なんか、いやがらねーな」


「ウガー! 期待外れだー!」


「待て! 向こうに、屋敷がある」


「何っ! こんな場所に、人がいるってーのか?」


「兎に角、行くぞ!」


勇者達は、歩を進めようとした。


『シュタッ!』


「それには、及ばん」


「「「「「「なっ!」」」」」」


勇者達の前に、突然風格のある白髪の男が現れた。



「誰だ、お前は?!」


「屋敷の主だ」


「おい、悪羽魔。この男、鑑定を阻害してるぞ!」


「何だと!」


勇者は自らも、目の前の男を鑑定した。


「俺にも見えねえ!」


「気を付けろ。こいつ、得体が知れない」


「ああ。俺もびんびん感じてる。多分、以前感じたのもこいつだ!」


勇者達は武器を構え、攻撃に備えた。



「ヌハハッ! 血の気の多い連中の様だが、仕掛けて来んのか?」


「できねーんだよ!」


「何故だ?」


「てめーには、関係ねー!」


勇者達は《悪事矯正リング》の影響で、人相手に自分達から手を出す事ができなかった。


「ヌハハッ! 恐怖して動けぬのとは、違うのだな? どれ、視てやる」


男は勇者達を、注視した。



「ほう。その首輪のせいか」


「チッ! 鑑定持ちか」


「それにお主等は、異世界から召還された勇者一行とな。興が乗ったぞ!」


「興が乗っただと?!」


「暇なので、遊んでやる」


「何だと!!」


「そのレベルでは、格下の魔物相手の戦闘は飽きただろう?」


「チッ! 何でも見透かすんだな」


嘗て彼らは、アレンとの戦闘でその自信を砕かれた。

それ以来十年以上に渡り、技に磨きを掛けてきた。


勇者達は全員、レベル78に達していた。


しかしレベルが上がるにつれ必要経験値が多くなり、今はレベル上昇が停滞している。

それは、レベルに見合う魔物がいないという事でもある。



「待て、悪羽魔。この状況から見て、この男《魔王》じゃないか?!」


「何っ!」


「何故そう思う?」


白髪の男は、賢者に向かって問い質した。


「第一に、ダンジョンのこんな場所にいる」


「ヌハハッ!」


「第二に、俺達の素性とステータスを知ってその余裕」


「お主には、余裕に見えるか?」


「第三に、《殺気》を浴びせてみたが、リングが全く反応しない」


「何だ。やたら睨むと思ったら、殺気を放っておったのか?」


「俺達の役目は、元々《魔王討伐》だ。だったらその魔王に殺意を抱こうが、リングは反応しない筈」


「賢者のお主は、なかなか頭が切れるな」


「正解という事でいいのか?」


「ふっ! お主達の《記憶》を、消さねばな」


「ウガーーー! 魔王ぶっ殺す!」


狂戦士は雄叫び共に、魔王へ襲い掛かった。


これを期に、勇者パーティー対魔王の戦闘が開始された。

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