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第三話 海へのトンネル開通

リートガルド様から話しがあってから、二週間が経った。


「ニコル。良くやってくれた!」


「はい」


山にトンネルを通し、そこへ通じる道も整備した。

僕はリートガルド様を馬車に乗せ、完成したトンネルを走った。


照明や馬糞の掃除の問題は残ったが、その辺は任せる事にした。

トンネルはカッチカチにしてあるので、湧水の心配は無かった。


「これだけの資源が近くに有ると言うのに、今まで活かす事ができず実に勿体なかった!」


「そうですね」


海側の土地は交通の便が悪く、人が住んでいなかった。


「できれば、ここにも村を作りたいな」


「頑張って下さい」


僕は、他人事の様に言った。


「いやいや、ニコル。協力してくれるだろ?」


「ここからは、ご自分達だけでできるじゃないですか?」


「我々だけでは、時間が掛かる」


「私の知った事ではありません」


「くー、ここまで協力しといて、訳の分からん奴だ!」


そう言って、リートガルド様は何やら考え始めた。



「そうだニコル。此処に約束の土地をやる!」


「えっ、此処ですか? でも、くれるというなら貰いますけど、村作りは自分達でやって下さいね」


「ああ、分かっている」


口ではこう言っているが、リートガルド様は困った時に僕を頼る癖がある。

しかし悪い話しではないので、素直に土地を貰う事にした。


「それじゃこの辺から、あの海までいただきます」


「ずっ、随分広いな」


「それだけの仕事をしたと、思ってるので」


「分かった。ケチったら、トンネルを埋められそうだしな」


「ははっ! そんな事しませんよ。《結界》は張るかもしれませんけど」


「うっ!」


こうして、プライベートビーチとその前の広大な土地を手に入れた。


「それじゃ!」


そう言って徐にしゃがみ、地面に手をついた。


「《壁》!」


「なっ!」


そして早速、その範囲を壁で囲った。



「海に出るには、船が要るな」


リートガルド様は、僕を見て言った。

その理由は僕が魔道具を作れ、色々持っている事がバレタからである。


「はい、はい。持ってますよ」


「おー、そうか」


「でも、船を出す場所が有りませんね」


「そう言えばそうだ。何とかならんか?」


「しょうがない」



僕は貰った敷地の隣に、堤防と船着場を作った。

そしてそこに、クルーザーを浮かべた。


「おー、これは凄い。お前は本当に、万能だな!」


「いいから、乗って下さい!」


「ああ、分かった」


「シャルロッテ。留守番を頼む」


「ヒヒーン! 『分かりました』」


シャルロッテに断ると、僕はクルーザーに乗り込んだ。



『ザザザザザザーーーーー!』


「凄い代物だな。国王陛下だって、こんな船持ってないんじゃないか?!」


「そうですかね」


「私にも、操縦させてくれ!」


「良いですけど、無茶しないで下さいよ!」


「分かっている!」


僕はリートガルド様に、操縦方法を説明した。



『ザザザザザザーーーーー!』


「おおー、これは愉快!」


「スピード出し過ぎですよ!」


「ニコル。この船、売ってくれ!」


「本気ですか? 《一億五千万マネー》ですよ」


「いっ、一億五千万マネーだと!」


「この船の動力は、《魔道具》なんです。それにキッチンとトイレとお風呂と寝室とリビングがついていて、そこにもふんだんに《魔道具》が使われてます」


「むっ、そうか」


「買うんですか?」


「いや、いい」


流石にこの金額では、リートガルド様も諦めた様だ。



「漁業用のボートなら、五百万マネー位からありますよ」


「そっ、それだ。それを見せてくれ!」


「分かりました」


クルーザーを船着場に停めると、小型の船を出してやった。


「なかなか良いじゃないか!」


「買いますか?」


「ああ、買う。準備が整ったらな!」


僕は十年の間、様々な商品の《販売資格》を取得した。

魔道具も、その一つである。


しかし、敢えて店には置かなかった。

今の売り上げで、充分満足していた。


次期にこの土地の開拓が始まり、漁業関係と塩製造の施設が立ち並ぶ事になる。



暫くして、僕は貰った土地に、またもやエシャット村の《保養所》を建設した。


そして、学校の夏休みを利用し、家族を連れて来た。


「「わー、わー!」」


『『パシャ、パシャ、パシャ!』』


「パパ。海って、おっきいね!」


「ぺっ、ぺっ、この水しょっぱーい!」


「バーブー!」


「あらあら、みんなはしゃいじゃって!」


「溺れたら大変だから、海に入る時はパパと一緒だぞ!」


「「はーい!」」


みんなには、肌の露出の少ない水着とシャツを提供した。


開拓の人達の目もあるし、この世界で肌の露出は良しとされていない。



「ねえ、パパ」


「何だい?」


「海の向こうには、何が有るの?」


「うーん、そうだな。他所の国が有るのかもな」


「そうなんだ」


「でも海は広いから、辿り着けるか分からないな」


「へー」


実を言うと、空を飛んで海を渡ろうと試みた事がある。


しかし遥か彼方の海上で、《結界》に阻まれてしまった。

鳥や魚は、行き来できるのにだ。


僕は《結界破壊魔法》・《黙視転移》・《オリハルコンの剣》を試したが、全て阻まれてしまった。

その《結界》を《鑑定》したところ、〔鑑定不能〕とウインドウに表示された。


《結界》は上空も海中も切れ目無く、この星を分断する様に張られていた。

その時、『これは《神様》の仕業なんだ』と理解し、その先へ行く事を諦めた。


《結界》の向こうには、《獣人族の大陸》・《妖精族の大陸》・《竜族の大陸》・《無人の大陸》がある事は、《検索ツール》で調べて知っていた。


しかしこの事は、サーシアに説明しなかった。

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