第十四話 勇者パーティー
勇也さんはまだ《空間転移》スキルのレベルが低く、二人ということもあり辿り着くまで転移を数回繰り返した。
「勇也さん。お疲れ様です」
「ああ、すまんな。一回で飛べなくて」
「いえいえ」
ダンジョンの街に着くと、勇也さんは街を案内すると提案してくれた。
パーティーメンバーに紹介するのは、夕食の時にするそうだ。
ダンジョンの街は初めてだったので、それはそれでありがたい。
「王都とは比べられないが、この街も開けてるだろ。街の名前は《エーテル》って言うんだ」
「ええ、僕の村に比べたら凄く開けてますよ」
繁華街には、武器屋・薬屋・雑貨屋・肉屋・八百屋・食堂・屋台・酒場・宿屋といろんな店が並んでいた。
ダンジョンがある場所には人が集まりやすく、国や領主も開拓に力を入れるそうだ。
金と力を求めて《ダンジョン探索者》が集まり、そういう人を目当てに店や宿も増える。
先にも述べたが、ダンジョンで魔物を倒すと強くなれるという事は、この世界の人々に知られている。
「なあ、ニコル。この街で露店を開けばいいんじゃないか?」
「そうですね。借家の期限が切れたら、ここを拠点にするのもいいかもしれないですね」
勇也さんは、どの店の何が安いとか教えてくれるので勉強になった。
武器や防具は、王都の方が高性能の物を揃えてるが、この街では価格を抑えて初心者から中級者層の物を扱っているそうだ。
勇也さんは、ダンジョンにも連れて行ってくれた。とは言っても、すぐには中に入れない。
ダンジョンは王国が管理・運営し、《防衛施設》が建てられている。
また、スタンピード対策として王国兵士も配備されている。
ダンジョンで命を亡くす人も少なくないので、実力試験がある事も分かった。
その試験を受けらる《ダンジョン防衛施設》に、連れて来られた。
通称《ダン防》と呼ばれている。
「へー、《ダン防》ですか。ネーミングセンスありませんね」
「俺もそう思うけどよ《ダンジョン防衛施設》なんかより、マシだと思うぜ」
「そうですね」
実力試験は、週に一度行われる。
受付は前日夕方まで行われるが、規定人員に達したら締め切られるそうだ。
今回僕は、申込みをしなかった。
周りを見ていると、ドロップ品を買取りしている場所もあった。
規模は小さいが、薬品やアイテムを販売する店もある。
そして、治療室も完備しているようだ。
◇
夕方になり、パーティーメンバーが集まる食堂へ行く事になった。
店の前に着くと、丁度パーティーメンバーと出くわした。
「勇也君。その子は誰?」
「この間話した新しいメンバーだ」
「えー、イケメンだけど強そうに見えないわ。大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫。名前はニコルだ」
勇也さんが、メンバーに紹介してくれた。
「ニコルです。十五歳で行商人見習いです。剣と魔法が少し使えます。よろしくお願いします」
「「「「行商人見習い!」」」」
「おいおい、行商人見習いじゃと。勇也、そんなやつ仲間に入れて大丈夫か?」
「大丈夫だ。戦闘は見てないが、俺の《鑑定》スキルで見た《ステータス》なら、俺やみんなより遥かに強い」
「「「「へー」」」」
勇也さんは、仲間にこの世界で知られてないステータスの事をすでに話していた。
まあ、過去の勇者からの伝聞はあるかもしれないけど。
「魔王討伐に欠かせない人材と思い、俺の我侭で仲間になってもらった。だが、彼は魔王討伐の報酬はいらないと言っている。それで彼からの仲間になる条件だが、行商をする為の行動を認める事になった。パーティーにいるときは、働きによって報酬を支払おうと思う」
「行商? まあ、勇也がそう言うのなら信じようかのう」
「じゃあ、こちらも自己紹介してくれ」
「わしからか? わしはジャン。四十才。一応このパーティーのまとめ役じゃ。前衛で盾役をになっとる。これでも近衛騎士じゃわい」
「次は私ね。私はニナ、二十才で魔法使いよ。これでも王国魔術師なんだから」
「次はおれっちだね。おれっちはセイン。十九才。斥侯っす。王国兵士っす」
「レナ。十七才。僧侶」
「レナは、私の妹なの。ちょっと無口で人見知りだけど、よろしくね」
「最後俺も改めて紹介しとくか、勇也十五才だ。勇者で特攻隊長の剣士だ。魔法も使えるが、得意じゃない」
プライバシーに触れるので気は進まないが、それぞれを《鑑定》してみた。
すると、勇者の仲間は魔王と戦うには平凡であった。
一般人に比べたら能力はあると思うが、仲間になったはいいものの先行き不安である。
勇者達のステータスを、掲載する予定はありません。




