第一話 ニコルの結婚生活
一話だけ、投稿します。
今日は、休日である。
「ねえ、パパ。サーと遊ぼ!」
「僕と剣術やろ!」
「あらあら。パパは休みの日も、大変ね」
「バーブー!」
「それじゃ、三人でトランプをやろう?」
「ヤッター、パパ大好き!」
「チェッ!」
僕とミーリアは結婚し、三人の子供を授かった。
結婚は二十一歳の収穫祭の時で、それから十年経ち僕は三十一歳、ミーリアは二十九歳になっていた。
子供は長女サーシア七歳、長男レコル五歳、そして次女エミリア八ヶ月である。
僕は幸せな生活を、送っていた。
「ヤッター。また、サーの勝ちー!」
「おねーちゃん強いから、つまんない!」
「へへーんだ!」
「良し、レコル。剣術をやろうか?」
「ヤッター!」
「えー! もっと、トランプやろうよー」
「先にサーシアの言う事を聞いてあげたんだから、今度はレコルの番だよ」
僕はサーシアの頭を、優しく撫でてあげた。
「もー、しょうがないなー」
サーシアは少し照れながら、納得してくれた。
パパっ子のサーシアは、僕の《頭なでなで》に弱いのである。
「ねー、パパ。早く行こ!」
「ああ。行こう」
僕は外に出て、暫くレコルの剣の相手をしてあげた。
◇
「ヤー!」
『カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!』
「いいぞ。その調子だ!」
僕の子供なだけあって、レコルには剣の才能があった。
そして、姉のサーシアには魔法の才能があった。
「パパー。お昼ご飯だよー!」
サーシアが、呼びに来てくれた。
「分かったー!」
「シャルロッテとケイコのご飯は、もうあげたからねー!」
「ありがとなー!」
「レコル、ご飯だってさ」
「うん! 今日のお昼は、何かな?!」
「何だろうな? でも、ママの料理は何でも美味しいぞ」
「そうだね!」
魔法で体を綺麗にし、僕達は食卓についた。
「わー、パスタだー!」
「良かったな」
「うん!」
お昼ご飯は、レコルの好きなミートソースパスタだった。
エシャット村特産の小麦が原料なので、収穫祭で出したらみんなからの評判が良かった。
父さんに相談したら、日頃から食べられる様にしようという事になった。
そこで村に乾麺工房を建設し、スーパーで売りに出す様になった。
エシャット村に、新しい食文化が生まれていた。
「あー、美味しかった!」
「ママ、ご馳走様。パパ、何して遊ぼうか?」
「おねーちゃん、ずるい。パパは僕と遊ぶんだ!」
普段子供達は友達と遊ぶのだが、休みの日はこうやって僕に甘えてくる。
のんびりしたい気持ちもあるが、それはそれで嬉しかった。
◇
僕の今の仕事は、フロリダ村の店の経営がメインだ。
行商は続けているが、その規模は縮小している。
卸しているのはインゴットと一味唐辛子だけで、他は取引してない。
仕入れていた野菜や果物もエシャット村で栽培する様になり、僕の負担は減っている。
農業用の魔道具を増やす事により、生産性も更に向上していた。
今仕入れているのは、酒や衣類や生地や靴等と種類は限られている。
これらは錬金術で作れるのだが、気まぐれで今も購入していた。
面倒を見ていた孤児達は成長し、随分前に僕の手から離れた。
十年以上の時を経て多くの子供は成人し、孤児院のスタッフや何らかの職業に就いた。
僕の店でも、三人働いてくれている。
しかし、定期的にエーテル街で孤児を保護しているので、孤児院は存続させる必要があった。
そして、孤児院の横には学校を建築した。
僕の家と孤児院で別々に勉強を教えていたのを、一ヶ所に纏めた形だ。
学校の校長先生には、母さんに頼んだ。
ココやコニーも孤児院のスタッフを勤めながら、先生を務めてくれている。
狩猟班を引退した人が剣術を教えてくれたり、主婦が料理を教えたりもしている。
◇
子供達は遊び疲れ、休んでいる。
僕は厩舎へ、足を運んだ。
「シャルロッテ、ブラッシングしてやるぞ」
『ご主人様。お願いします!』
「ご主人、シロンもやってニャ!」
「コケー!」
「ケイコもって、言ってるニャ」
「モキュ!」
シロン・シャルロッテ・ケイコ・ポムは今でも健在で、十年以上一緒にいるのに相変わらず甘えたがりである。
十年前にノーステリア大公爵領で《鶏》の購入を始めてから、ケイコを家に迎えた。
今は養鶏用の産卵の役目は終え、シャルロッテの厩舎を寝床にしている。
子供達の相手をしてない時は、彼女達の相手をしている事が多い。
彼女達も、長年連れ添った家族なのである。
◇
翌朝。
「それじゃ、行こうか?」
『はい!』
僕はシャルロッテに騎乗し、家を出た。
シロンとケイコとポムは、留守番である。
「お早うございます」
「おう、お早う」
「今日も、頑張れよ」
「「ワン!」」
村の《結界》は、宰相・コロネ子爵騒動の後解いた。
昼間は門の扉を開け跳ね橋を下ろし、村人の出入りは自由にしている。
今は門番を、狩猟班を引退した人達が努めてくれている。
偶に盗賊紛いなのがやって来るが、門番と性能の上がったワン太達が追い払っている。
また何かあれば、ワン太達から《念話》で呼び出しが来る様になっていた。
「それじゃ、行って来ます」
僕は跳ね橋を渡り、フロリダ村へ向った。




