第四十二話 再調査の結果
あれから二ヶ月が過ぎ、再調査の結果リートガルド伯爵の罪状は覆り、元の状態に戻る事ができた。
「リートガルド伯爵よ。ラビネット宰相とコロネ子爵の計略を見抜けず、苦労を掛けた」
「とんでも御座いません。私の脇の甘さから、招いた様なものです。お気になさらないで下さい」
「ジークフリートも、良くやってくれた」
「はい。しかし、ヤマトの協力がなければ、こんなに早く解決しなかったでしょう」
「ヤマト。いったい、奴は何者なのだ?」
「私にも、分かりません。ただ、敵に回さない方が良いのは確かです」
「我がリートガルド伯爵家は、彼に感謝しかありません」
「それは、我もだ」
大方の予想通り、首謀者はラビネット宰相だった。
コロネ子爵は、ラビネット宰相の手駒に過ぎなかった。
ラビネット宰相は《最高裁判事》を買収し、コロネ子爵が捏造した証拠を本物として扱わせた。
その他に、《陪審員》らも買収していた。
その結果この件に関わった人間は、大小の違いはあれ漏れ無く処罰された。
特にラビネット宰相とコロネ子爵は、《終身刑》となった。
調査の過程で、それぞれの屋敷から《裏家業の帳簿》も見付かっている。
また、コロネ子爵が《ダンジョン防衛施設》の施設長になり、利益をラビネット宰相に献上する予定だった事もバレていた。
家の方はどちらも取り潰しは免れたが、ラビネット侯爵家は代々受け継がれた《宰相職の任》を解かれ、莫大な《損害賠償金》をリートガルド伯爵家と王家に支払った。
コロネ子爵家は嫡男のアルフォードが継いだが、《損害賠償金》が不足し屋敷や資財を取り上げられた。
その結果、仕えていた者は全員子爵家を去る事になった。
しかし国王の温情で、アルフォードは王国兵士の職と小さな家を得、細々と家族を養う事になった。
何はともあれ、一件落着した。
◇
生活が元に戻り、僕とゼルリル様はフロリダ村の《ダンジョンコアルーム》にいた。
「それでは、始めるのじゃ!」
「お願いします」
「《クリエイト ダンジョン》」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!』
ゼルリル様の掛け声と共に、ダンジョン内に地響きが起こった。
その時、ダンジョン内では。
「なっ、何だ振動は!」
「ダンジョンが、崩れるのか?!」
「うわー、逃げろー!」
ダンジョン探索者達は、慌てふためいていた。
その後ダンジョンは、三十分程地響きが続いた。
◇
「完成したのじゃ!」
「ありがとうございます」
実を言うと僕がゼルリル様に頼んで、ダンジョンの階層を増やして貰っていた。
村長に返り咲いたリートガルド様が、『このままでは、フロリダ村が街になる前に廃れてしまう』と、愚痴を零していたのだ。
確かに辺境の小規模ダンジョンでは、魅力は乏しい。
一攫千金を狙うダンジョン探索者は、まず長くは留まらない。
そんな悩みを少しでも解決する為、僕は密かに行動を起こした。
「地下五階層を、十一階層にしたのじゃ。最下層には、ちゃんと《ボス部屋》を作ったのじゃ!」
「色々注文をつけて、悪いですね」
「気にするでない。ケーキを貰えれば、それでいいのじゃ!」
今まで無かった《ボス部屋》を作り、地下六階層以降を《鉱物》や《魔物素材》をドロップするようにして貰った。
鉱物には、鉄・魔鉄・銅・銀・金・ミスリル等をリクエストしている。
「これでダンジョン探索者が増え、商人や移民も増えると思います」
「それは、良かったのじゃ!」
「これが、約束のケーキです」
僕は《亜空間収納》から、ケーキの箱を幾つも取り出した。
「おー、こんなにいっぱい。妾は嬉しいのじゃ!」
ゼルリル様は、目を輝かせて喜んだ。
ショートケーキ《百個》でこれだけの事をして貰えるのだから、安上がりである。
「何年かしたら、またお願いします」
「任せるのじゃ!」
ゼルリル様は、ホクホク顔で帰って行った。
◇
地響きから、暫くした村役場では。
「何っ! ダンジョンで、地響きだと」
村長に帰り咲いたイアン・リートガルドが、兵士から報告を受けていた。
「はい。食料調達に行っていたら、いきなり起こりました」
「我々が初めてダンジョンに入った時と、同じ事が起こったというのか?」
「多分」
「《魔王》が、戻って来たのか?」
「姿は、確認していません」
「ダンジョンに、変化はあったか?」
以前は各層が数倍に広がり、魔物の生態系が変わった。
「残念ながら、変化は確認できてません」
「そうか。もし魔王が関係しているなら、何かある筈だ」
「それでは、調査をした方が宜しいですね」
「そうだな。注意喚起も含め、《ダン防》の連中にも教えてやろう」
「はい」
やがて兵士達により、地下六階層へ続く階段が発見される事となる。
お読みいただき、ありがとうございます。
《第七章》は、ここまでです。
また、ストックが切れ筆も進まなくなってしまったので、投稿を暫くの間休ませていただきます。
今回、今までで一番長くなりそうです。
申し訳ありません。




