表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
254/401

第三十八話 人の領地を乗っ取るなんて、図々しいにも程がある

プラーク街の別荘を去った後、僕は野宿しているハイネスさんと馬を《転移》で別荘に運んだ。


そして、領主様達に引き合わせた。


「皆様、良くぞご無事で! 大変、心配しておりました」


それだけでなく、領都で捕らえられて搬送中の伯爵家の人達十人も連れて来た。


「父上。ご無事でしたか!」


何だかんだで、朝まで掛かってしまった。


「ふぁー、眠いや」


事前に仮眠をとっていたが、少し眠かった。



エシャット村に帰ると、その足で領主様達の救出を父さんに告げた。


「本当にやってしまうとは、凄いな」


「あとはリートガルド伯爵様に、どうやって領主の座に返り咲いて貰うかが問題なんだよね」


「大変だな」


「まあね。でもこのままコロネ子爵に居座られたら、領内が疲弊しそうだからね」


「そうだな」


「あと《亜空間ゲート》なんだけど、暫く使うの止めて欲しいんだ」


「領主様に知られると、まずいのか?」


「どうだろうね。でも今は内緒にしとく。プラーク街側の扉は、もう鍵を掛けたから」


「早いな。幸い今日は休みだから狩猟班はいいが、遊びに行く連中は断らないとな」


「頼んだよ」


この後朝食をとり、孤児達の勉強会も休みという事で少し眠った。



僕は疲れているのか、昼近くまで寝てしまった。


「もうそろそろ、お昼だ。孤児達に、おやつを食べさせに行かなきゃ」


休日で勉強は休みでも、おやつは別である。


「領主様達の方は朝食を置いてきたけど、昼食は大丈夫だろうか?」


僕は少し、心配になった。


そんな事を考えていると、シロンとポムがやって来た。


「ご主人。シャルロッテにご飯やって、早く孤児院に行くニャ」


「モキュ!」


「分かった。少し待ってくれ。《影分身》」


『フワー!』


僕の体から、もう一人の僕が飛び出した。



「ニャニー! ご主人が、二人!」


「モキュ、モキュ!」


「そうか。初めて見せたんだっけな」


「ごっ、ご主人が二人いるなんて、鼻血が出そうニャー!」


「モキュ、モキュ!」


『『スリ、スリ』』


シロンとポムが、僕等に擦り寄って来た。


「悦に浸ってるところ悪いんだが、孤児院には分身と行ってくれ」


「分かったニャ。けど今度ゆっくり、二人のご主人を堪能させて欲しいニャ!」


「モキュ!」


「気が向いたらな」


「約束するニャ!」


「モキュー!」


「駄々を捏ねてないで、行くぞ!」


分身に抱きかかえられて、シロンとポムはいなくなった。



僕は黒髪に変装し、別荘の増築した方のキッチンに《転移》した。


「ミランダ、大丈夫か?」


「ヤマトさん!」


「心配で、見に来た」


「大したものは作れませんが、何とかやってます」


「それなら、いいんだが」


「あら、ヤマトさん。要らしてたのね」


そこに、第二婦人のミネルバがやって来た。


「ああ。服を仕入れてきた」


「まー、嬉しい!」


料理が心配で見に来たのだが、ミネルバに母屋のリビングへ連行させてしまった。



僕は服と下着と靴を、テーブルの上に並べた。


「庶民的な物しかないが、我慢してくれ」


「気にしなくていいのよ。今は脱獄囚の身ですもの」


女性陣は服を選び、早速別室に着替えに行った。


「ヤマト。何から何まで、すまない。金を払おう」


領都の家族を救出した時、屋敷から没収した財産を王国兵士が魔法袋に入れて持っていた。

それを回収し、領主様に渡していた。


「あれは、プレゼントだ。金はいい」


「いや、しかし」


「礼なら一刻も早く領主に返り咲き、領民の為の領地経営をしてくれ」


「むっ、そうか。そういう事なら、有り難くいただくとしよう」


領主様は、僕の言葉に納得してくれた。



「ヤマトも、一緒に食事をせんか?」


「ああ、いただく」


ミランダ達が作った料理を、僕もいただいく事になった。

メニューは野菜や肉を煮込んだだけのスープに、僕が提供した白パンだ。


「ヤマトさん、どうですか?」


「塩味が濃いな。それに野菜を大きく切り過ぎて、まだ半煮えだ」


「そうですか」


ミランダは、僕の言葉に落ち込んでしまった。


普段の僕だったら、こんな言い方はしない。

この台詞は、《キャラ》を演じての事である。


「だが、初めてにしては上出来だ。回を重ねれば、きっと上達する!」


僕は『やばい』と思い、咄嗟にフォローした。


「はい!」


するとミランダは、直ぐに元気を取り戻してくれた。



食後片付けが終わったところで、僕は領主様に話しを持ち掛けた。


「早速だが、《領地奪還》の行動に移ろうと思う。何か良い策はあるか?」


「そうだな。コロネ子爵の用意した証拠が、《捏造》だと証明できれば良いのだが」


「本人に国王の前で証言させた方が、手っ取り早いんじゃないか?」


「それはそうだが、証言などする筈もない」


「分かった。行ってくる」


「おい。何をする気だ?!」


「任せろ。《転移》」


『スッ!』


「行ってしまった」


「父上。彼に任せて、大丈夫でしょうか?」


「きっと、大丈夫だ。彼は、かの《英雄》だからな」



『シュタッ!』


僕はリートガルド領領主邸の敷地にある、穀物倉庫前に《転移》した。

ここは人頭税の小麦を、納めに来る場所である。


「コロネ子爵は、何処だ?」


《地図》機能で探してみると、屋敷の中にいた。


「人の領地を乗っ取るなんて、図々しいにも程がある」


僕はそう呟くと、早速屋敷に向かった。



屋敷に到着すると、会った人を片っ端から眠らせた。


そしてついに、コロネ子爵のいる部屋に辿り着いた。


『バンッ!』


ノックをせず、勢いよく扉を開いた。


「貴様。いきなり何だ!」


「リートガルド伯爵を嵌めた事を、国王に吐かせに来た」


「何っ!」


その瞬間、コロネ子爵のこめかみに血管が浮かび上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ