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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第三十六話 リートガルド伯爵、救出

ハイネスさんが、珍しくエシャット村にやって来た。


そして、大変な知らせを父さんと僕にもたらした。


「ジーン殿、ニコル君。という訳なのです」


「誠に残念です。伯爵様やそのご家族が、《反逆罪》で投獄されるなんて」


「ですが、反逆罪などあり得ない。私は王都へ行き、誤解を解いてきます」


「でも、ハイネスさんの身が危ないのでは?」


「だとしても、私は家臣として主を救わねば」


「決意は固いのですね」


「ええ。それで二人には、フロリダ村の民に何かあったら、手を貸して欲しいのです」


「分かりました。できる限り協力しましょう」


「僕も店があるので、放っとけないです」


「かたじけない」


ハイネスさんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。


僕が静観している間に、事態はとんでもない事になっていた。



王家直轄領となったリートガルド領の街や村に、書面で通達が回った。


その内容とは。


・リートガルド伯爵家は、反逆罪により取り潰し。

・領地は、王家直轄領とする。

・領主代行を、エドモント・コロネ子爵が務める。

・今年の納税額は、五割増し。


だった。


「ふざけんじゃねー!」


「俺達に、飢えろっていうのか?!」


「リートガルド伯爵様。戻って来てくれー!」


この領地の住民はコロネ子爵の課した増税により、生活がひっ迫しようとしていた。



ハイネスさんが去った数日後、エシャット村にも通達が来た。


「納税額、五割増しか」


「素直に従うの?」


「分からん。今直ぐ答えは出せんな」


「余裕の無い街や村は、辛いだろうね」


「困ったものだ」


「これはリートガルド伯爵様に、戻って来て貰わないといけないね」


「ご存命なのか?」


「うん。王城の地下牢獄にいる」


先日、《検索ツール》の《地図》機能で調べた。


「それで、どうするんだ?」


「取り敢えず、伯爵様を死刑になる前に助けに行く」


『貴族の闘争に、巻き込まれたくない』なんて言ってられる時期は、過ぎていた。

このままでは、領民はコロネ子爵に搾取されてしまう。


「大丈夫なのか?」


「うん。助けるだけなら、大丈夫。大変なのは、その後だね」


僕はこの日の夜、早速実行に移す事にした。



午前二時を回り、僕は前世の自分に変装し王城に《転移》した。


『シュタッ!』


その場所は、《鏡》の件で来た事のある待合室である。

そして直ぐに《検索ツール》の《地図》機能で、伯爵家の人達の居場所を探った。


「四人か。ハイネスさんが言っていた領都から向かった人達は、まだ到着してないな」


僕は確認が済むと、再び《転移》した。


『シュタッ!』


次の場所は、地下牢獄へ続く階段室だった。

ここへは宰相に捕らわれ、来たいた。


僕はそのまま、階段を下りた。



「誰だお前。見ない顔だな?」


「《睡眠》」


『バタリ!』


「悪いな。朝まで眠ってくれ」


僕は地下牢獄室の扉の見張りを、《睡眠魔法》で眠らせた。



「《睡眠》」


『『バタリ!』』


扉を開け地下牢獄室に入ると、すぐさま二人の看守を眠らせた。


そして、数十にも及ぶ牢獄の中から、《地図》機能が示す部屋の前で立ち止まった。


「《解錠》」


『カチャ!』


『キー!』


魔法で扉を解錠すると、扉を開き足を踏み入れた。


「この人が、領主様か」


僕は、直接会った事が無かった。

そして、真夜中という事もあり、領主様は眠っていた。


「随分と、痩せ細ってるな」


鎖に繋がれてはないが、囚人服を身に纏い髪はボサボサで到底貴族には見えなかった。


「《転移》」


取り敢えず、領主様をプラーク街の別荘に移動した。


そして、床に寝かせ直ぐに地下牢獄へと戻った。



地下牢獄と別荘の往復を繰り返し、奥さんと娘さんとイアン様を救い出した。


「《範囲回復》」


怪我をしているかもしれないので、眠っている領主様達を回復させた。


「《清浄》」


続いて、汚れている体や囚人服を綺麗にしてやった。


だが疲れているのか、誰一人起きなかった。


「おい、起きろ!」


僕は変装時の口調で、領主様の体を揺すった。


「ううっ、何だ?」


「リートガルド伯爵。あんたと家族を、地下牢獄から助けたぞ」


「それは、本当か?!」


僕の言葉に、領主様は目を覚ました。


「ああ。回りを見ろ」


「おお、お前達!」


領主様は家族の姿を見て、安堵した。



「どなたか分からぬが、家族を救ってくれた事に感謝する」


「ああ」


「だがあの王城の地下牢獄から、どうやってわしらを助けたのだ?」


「魔法で、見張りを眠らせた」


「そんな馬鹿な」


「本当だ」


「何故、危険を冒してまで助けてくれた?」


「それはな、友人が困っているからだ。あんたの後釜のコロネ子爵に、重税を課せられようとしている」


変装して正体を隠しているので、友人という事にしてしまった。



「コロネ子爵だと。わしを嵌めた上に領地を乗っ取り、そんな事までしているのか!」


「俺は元領主であるあんたを助けたが、領民を救う気はあるか?」


「くっ、助けてやりたい。しかし、わしは《反逆罪》に仕立て上げられ、爵位を失ったのだぞ。そんな力は持ち合わせてない」


「負け犬の言葉だな。すっかり、牙が抜け落ちた様だ」


「よくもまあ、言ってくれる。どうにかなっていたら、牢獄になど入っていない」


それは、正論だった。


しかし、リートガルド領の人々を救う為には、この元領主様をその気にさせる必要があった。

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