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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第三十四話 店の貸し出しと不穏な知らせ

リートガルド様の指示で職員さんが連れて来たのは、夫婦とその子供達だった。


話しを聞くと、店の建築申請はしているが優先順位が後の方らしい。

今は露店で、雑貨を売っているそうだ。


旦那さんの名前はライルで、年は二十八歳。

奥さんの名前はソニアで、年は二十六歳である。


「お二人は誠実そうで店を任せてもいいんですけど、雑貨屋の支店を持ちたいんですよね」


「ええ。独立するにも仕入れのルートがありませんし、人を雇う余裕もありませんから」


「私の実家から、商品を配達して貰うんです」


「それじゃ、店を建築したらそちらに移るんですね」


「そうなります。それまでの間という訳には、いきませんか?」


「リートガルド様は、どう思います?」


「すまん。確認不足だった」


「それで、いつ頃二人の店は完成するんですか?」


「ハイネス。いつだ?」


「未定です。今はインフラ整備と工房と住居を優先してるので、露店で間に合うものは後回しになってます」


「だそうだ」


「店を見てくれる人がいなくなれば、休業する事になりますけど」


「くっ! そうなった時は、何とかする」


「お願いしますね」


「それで、私達はどうなるのでしょうか?」


夫婦は、不安な顔を浮かべていた。



「店はお貸しします。その代わり、ガラスの受注をお願いします」


「分かりました!」


「頑張ります!」


「あっ、それと他にも売りたい物があったら、頼んでもいいですか?」


「はい。何でも、頼んで下さい」


いつまでか分からないが、僕はこの夫婦に店を任せる事にした。



ライルさん達には五歳の女の子と三歳の男の子がいて、僕が作った小屋で生活を送っていた。


店と住まいが離れていては何かと不便なので、翌日空いてる土地に小さな住居を建てた。

今は、引っ越しを済ませたばかりだ。


『そこまでするなら、二人の店を建ててやれ』と思うかもしれないが、そこは突っ込まないで欲しい。


ソニアさんは家の片付けをし、ライルさんは店の準備に取り掛かった。


「ニコルさん。本当にありがとうございます」


「いいんですよ。自分達の店を持つまで、しっかり稼いで下さい」


「はい。ニコルさんのガラス窓も、しっかり売ります」


「ガラス窓の方は、頑張らなくていいです。お客が来るかも、怪しいんで。その代わり、販売して欲しい商品が一つあります」


「何ですか?」


僕は魔法袋をまさぐり、その商品を取り出した。



「このトイレットペーパーです」


「トイレットペーパー?」


「トイレで、お尻を拭く紙です」


「お尻ですか。干し草なんかとは違い、衛生的で素晴らしいです!」


「これを、一個千マネーで売って下さい」


「分かりました。宜しければ、領都の本店の方で仕入れさせて貰ってもいいですか?」


「うーん、そうですね。いいですよ」


「ありがとうございます。数は、今度相談させて下さい」


「はい。それと、この店のトイレの事は、内緒にして下さい」


「トイレですか?」


「珍しい魔道具になってるんですよ」


「はぁ?」


僕はライルさんをトイレに案内し、使い方を説明した。



「凄いです。これを家族で使わせていただいて、いいんですか?」


「どうぞ。その代わり、言いふらさないでくださいね。人が押し寄せても困りますから」


「はい!」


「それと魔石の魔力が切れたら使えなくなるので、予備を渡しておきますね」


「ありがとうございます。あのー、魔石一つでどの位持つのですか?」


「家族で使う分には、三・四ヶ月持ちます」


「結構、持ちますね」


「ええ。それじゃ説明も終わった事だし、商品を並べましょうか?」


「はい!」


ライルさんは僕が用意した商品棚に、自分達の商品を並べていった。

しかし、商品の数は思いの外少なかった。


「少し、寂しいですね」


「定期的に領都の本店から配達が来るので、今度来た時に数を増やして貰います」


「それならいいんですけど」


僕は空いたスペースにトイレットペーパーを並べ、補充用に倉庫にも纏まった数を置いた。


そして、一段落ついたところで、ガラス窓の説明を一通り行った。



店の営業を初めてから、二ヶ月半が過ぎ年末を迎えた。


しかし、未だにガラス窓は売れていない。

引き違い窓の腰上サイズのセットで、百万マネーという金額にしたのが原因だろう。


貴族や金持ち向けの商品なので、今のところ値下げするつもりはなかった。


一方、トイレットペーパーの売れ行きは好調である。

辺境の村での千マネーは決して安くないのだが、この使い心地を知ると元には戻れないらしい。


フロリダ村を訪れる商人も、纏まった数を買っていった。



「ここのトイレはいつ来ても、使い心地がいいな」


「リートガルド様。わざわざ人の店に来てトイレを使うのは、どうかと思いますよ」


開店した翌日、僕がいない内にリートガルド様に見付かってしまった。

それ以来、一日一回は来ているそうだ。


「ニコルがあの便座を、私の屋敷に取り付けんからだ」


「そんなの横暴です!」


「冗談だ。しかし、何故入手先を教えんのだ?」


「忘れました」


「本当は、ニコルが作ったのであろう?」


『ギクッ!』


「さあ、何の事やら」


「家やガラス窓を、作ってしまうのだ。魔道具を作れても、おかしくなかろう?」


「そんな事言うなら、この村にも錬金術師はいますよ。その方達は、作れるんですか?」


「いや無理だ。しかし、ニコルは規格外だからな」


「あまり詮索すると、どうなっても知りませんよ」


「うっ! 分かった。詮索するのは止めよう」


リートガルド様には、この言葉が一番効いた。



トイレの話しが、落ち着いた時だった。


『バタ、バタ、バタ!』


慌ただしい足音で、店に人が入って来た。


「イアン様、大変です!」


「どうした? ハイネス」


「王都の旦那様と奥方様とミランダ様が、屋敷で監禁されていると報告が御座いました!」


「それは、本当か?!」


突然、不穏な知らせが飛び込んで来た。

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