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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第二十五話 エシャット村、王国兵襲来

昨日あれだけの事があったのに、僕は今日も孤児院で勉強を教えている。


「ニコルにーちゃん、おそとのカベすごいね」


「わるいひと、はいってこれないね」


「ねー、どうしてできるのー?」


「そうだな。いっぱい勉強して、いっぱい錬金術や魔法の練習をしたんだ」


「それじゃ、べんきょうするー!」


「ぼくもー!」


「わたしもー!」


「ハハッ。頑張って、勉強しような」


「「「「「はーい!」」」」」


『バタ、バタ、バタ、バタ!』


「おい、ニコル。昨日の奴等が、兵士を連れてやって来たぞ!」


子供達にやる気を出させたばかりだというのに、サジが嫌な報せを持って来た。


昨日の内にスーパーの裏に小屋を建て、《亜空間ゲート》を設置した。

狩猟班は、早速プラーク街のダンジョンに出掛けた。


狩猟班の中で一番若手のサジとスギルが、見張りについていた。



「懲りずに、また来たか」


「奴等、どうする?」


「《結界》があれば、簡単に入って来られない筈。相手の出方を窺おう」


「分かった」


サジにそう告げると、子供達に振り返った。


「みんな、ごめんな。ちょっと、行ってくる」


「「「「「うん。がんばってー!」」」」」


僕とサジは孤児院を出て、見張り塔に向かった。



「あれっ?」


「どうした?」


「いや、何でもない」


僕はこの時、『コロネ子爵達は、どうやって屋敷から出たんだ?』と、思った。


『《結界》を付与した魔力が、切れたのか?』


魔力を多く込めたので、一年やそこらじゃ《結界》は消えない筈である。

当時、《鑑定》能力で調べたのだ。


『それとも、誰かに解除又は破壊された?』


それなら、無いとは言いきれない。


『どちらにせよ、《結界》を突破される事を念頭に入れた方がいいな』


僕は走りながら、そんな事を考えていた。


『ガシッ、ガシッ、ガシッ、ガシッ、ガシッ、ガシッ・・・・・・・・・・!』


『ズバーーーン!!』


『ドゴーーーン!!』


『ガシャーーーン!!』


そして、見張り塔に近付くにつれ、喧騒な音が聞こえてきた。



僕とサジは、スギルのいる見張り塔を登った。


「スギル、様子はどうだ?」


「あいつら、『扉を開けろ! 命令に従わない場合、この村は《国家反逆罪》だ!』って、言ってるんだぜー」


「脅しだな。開けたら駄目だぞ」


「分かってるんだぜー」


「他に動きは無いか?」


「弓矢や魔法で、物凄い攻撃をしてきたんだぜー。効き目が無くて、諦めたんだぜー」


「そうか。で、今度は何をする気だ?」


僕はこっそり、外の様子を覗き込んだ。


するとそこには、昨日の男達の他に大勢の兵士がいた。



そして、その中の兵士の一人が杖を構えた。


「***** ******* ***** ******* ******* 隧道(ずいどう)!」


『ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ガガッ!!』


兵士の魔法で、堀の石垣に穴を開けているようだ。


「くそっ、見えないや」


しかしその状況は見張り塔から確認できず、石垣を破壊する音だけ聞こえてきた。


「そうか!」


この時、僕は気付いた。

コロネ子爵達が、どうやって屋敷を出たのかを。


《結界》の下を、抜けたのだ。



「《結界》はかわせたが、壁の基礎で止まってしまった。思った以上に頑丈だ」


「基礎の下を、掘れないのか?」


「堀の水が邪魔だ。塞き止める必要がある」


「それなら、堀の外から堀の下を掘ればいい」


「おいおい、他人事だと思って」


「コロネ子爵の命令なんだ。今日中に、何とかしてくれ」


「チッ。何だってこんな事を、しなきゃいけないんだ」


魔法を放った兵士と昨日の男が、そんな会話をしていた。



そのまま様子を見ていると、兵士は男の言う通り堀の外に縦穴を掘った。

かなり、深そうだ。


次はその穴に入り、堀の下を掘り進めるつもりだ。


「こうしちゃ、いられないな!」


「どうしたんだ?」


「あいつら、《結界》や壁の下にトンネルを掘る気だ。だから、《結界》を張り直す」


「ニコルって、何でもありだな。まあ、任せるわ」


サジは、呆れていた。



壁の基礎部分は厚さ二メートル、深さは二.五メートルまで延びていた。


一方《結界》の深さは、一メートルである。

深さ三メートルの堀の下を掘り進めれば、いずれ村の中に入って来られる。


僕は見張り塔から手を伸ばし、《結界》に触れた。


「《結界拡張》」


そして、膨大な魔力を流し《結界》を拡張していった。


深さを五メートルまで伸ばし、底面にも《結界》をめぐらせた。



「よし、できた。これで全方向、《結界》で村を覆ったぞ!」


「もう、大丈夫なんだな?」


「攻撃が効いてない内は、大丈夫。でも、絶対じゃないから。《結界》を破る人が、現れるかもしれない」


「謙遜しなくて、いいんだぜー」


「いや。今回の件は、迂闊だったと反省してる」


「でもよ。やっぱり、ニコルは凄いぜ。壁が無かったら、今頃あいつ等押し寄せてたぜ」


「褒めてくれて、ありがとな。後はあいつらに、これ以上やっても無理だと諦めさせないとな」


「どうするんだ?」


「まあ、見てろよ」


僕はそう言って、見張り塔を降りた。



「よし、この辺だな」


地面に手を当て、錬金術で堀の底に穴を開けた。

その場所は、丁度トンネルの上だ。


『チョロチョロ、チョロチョロ、プシュー・・・・・!』


「ヤバいっ! 水が上から吹いた」


穴にいた兵士は、慌てて外へ向かった。


『ドバーーー!』


「うわー!」


しかし、水が勢い良く吹き出し、流されてしまった。



その後水と共に、兵士が縦穴から浮かび上がってきた。


「はぁ、はぁ、はぁ、死ぬところだったぜ!」


兵士は垂らしてある縄梯子で、地上に上がった。

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