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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第二十四話 夢じゃねえよな

僕は見張り塔に登り、男達に掛けた《睡眠》と《捕縛》の魔法を解いた。


「むぐっ、俺は眠っていたのか?」


「俺もその様だ」


「俺達、いつの間に馬車に乗った? それに、ここは何処だ?」


男達は馬車から降り、辺りを見渡した。


「ここは、村の外なのか?」


「確かに、来る時通った道だ」


「では、あの壁は何だ?」


「夢じゃねえよな。壁なんか無かったぞ!」


「いったい、何が起こった? 誰か分かる奴は、いないのか?!」


男達は、他の馬車にいる仲間に問い掛けた。


「げっ、何だこれは!」


「嘘だろ!」


しかし、知る者はいなかった。



「お前壁登り得意だろ、向こうの様子を見てこい!」


「ふん。面倒くせーが、俺も気になる。ちょっくら行ってくるわ!」


堀の幅は四メートルで、深さは三メートル。

壁と堀の間は五十センチで、石垣の地面になっていた。


運動能力のある成人男性だったら、飛び越えは可能だ。


『タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!』


「おりゃ!」


男は助走をつけて、ジャンプした。


『バシーン!』


「うあー!」


『ボチャーン!』


男は堀を飛び越えられたが、着地を失敗した。

その原因は、壁の外側二十センチにある《結界》に阻まれ、着地の目測を誤ったのだ。


また、その堀の水位は、半分程まであった。


「プハー! イテテッ!」


「おい、大丈夫か?」


「大丈夫だ」


男は体を痛めながらも、自力で堀を上がった。



「何が起こった?」


「壁の外に、見えない《結界》がある」


「《結界》だと!」


仲間は石ころを拾い、壁に向かって投げた。


『カツン!』


『チャポン!』


「どうやら、本当のようだ」


「壁と堀だけでなく、村を囲う《結界》を張ったというのか?!」


男達はその事実に、驚愕し沈黙した。



「俺がやる!」


沈黙を破り、男が名乗り出た。

そして、腰にぶら下げていた短杖を構えた。


「*****、*******、*****、*******、*******、水槍!」


『ズバァーーー!!』


「チッ、傷一つ無しか!」


「俺も、試そう」


「*****、*******、*****、*******、*******、圧縮空気砲弾!」


『ズバーーーーン!!』


「駄目だ!」


「もう一度!」


「*****、*******、*****、*******、*******、螺旋水流!」


『ズバババババーーーーーーーーーー!!』


「チッ、また駄目だ!」


「*****、*******、*****、*******、*******、旋風刃!」


『ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ・・・・・・・・・・!!』


「これでも、駄目なのか?!」


「どうやら、一朝一夕ではいかないらしいな」


「この村、何か変だぞ!」


「ヤバい気配が、ハンパない!」


「今日はもう、帰ろうぜ!」


「賛成!」


こうして男達は、フロリダ村へと引き上げた。



僕は今の様子を、見張り塔からこっそり見ていた。


そして、見張り塔を下りその事をみんなに告げた。


「みんな。奴等は帰ったよ」


「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」


「ありがとう。ニコル君!」


「本当に助かったわ!」


「お兄ちゃん、ありがとう!」


身の危険を感じていた女性陣から感謝され、揉みくちゃにされてしまった。



「だけど、こんな物を作って村は孤立しちゃうね」


「何言ってるの。今までだって、誰も来なかったじゃない!」


「そう言えば、そうか」


「プラーク街にだって行けるんだから、気にする事ないわ」


こうしてエシャット村は、《壁》と《結界》に囲まれた生活が始まった。



男達はフロリダ村に戻ると、コロネ子爵に報告した。


「コロネ子爵。申し訳ありません」


「どうした?」


「村の女を、連れて来れませんでした」


「一人もか?」


「はい」


「何をやっておる。これだけの面子がいて!」


「いえそれが、あの村はおかしいのです」


「何だと言うんだ?!」


「それが女を馬車に乗せようとしたところ邪魔が入りまして、我ら全員いつの間にか眠らされたのです。そして目覚めると、村の外に追い出されてました」


「《睡眠魔法》でも、掛けられたというのか?」


「恐らく」


「それでおめおめと、帰って来たのか?」


「それが自分でも信じられないのですが、我々が寝てる間に村を囲う壁が立てられてまして」


「馬鹿な! そんな事できる筈あるまい!」


「本当です。しかも、《結界》まで張ってありました」


「村を覆う《結界》だと! 戯言を言うな!」


「ですがここにいる六人、全員確認しました」


他の五人も、全員頷いた。



コロネ子爵は男達の顔を見て、嘘ではないと覚った。


「そうか分かった。お前達の言う事を信じよう」


「ありがとうございます」


「だが、相手が得体の知れない者達であっても、このまま引き下がれん。兵士を全員連れて行け。多勢で、眠らされる前に制圧するんだ!」


「しかし、《結界》が!」


「私達がどうやって屋敷から出たのか、忘れたか? 兵士には、《土属性魔法》の使い手がいたろう」


「そうでした。地下ですね」


「そういう事だ。明日は、失敗するな!」


「分かりました」


翌日、エシャット村は再び攻められる事となった。



そして、実はこの時、コロネ子爵は別件でイライラしていた。


今日からダンジョンの管理を始めたのだが、入場料の値上げ等で利用者から反発を買ってしまった。

その結果、ダンジョンの利用を拒否されたのだ。


ドロップ品の購入も拒否され、販売の収益も見込めなくなっていた。


今日は王国兵をダンジョンに送り込み、自分達の食料を確保するだけに留まった。



同じ頃、拒否した側のリートガルドも困っていた。


「こんな噂が広まったら、この村に移民なんて集まらない。今いる者達だって、離れてしまう!」


「食料も、ダンジョンのドロップ品を当てにしていました。今後、食料不足は否めません」


秘書のハイネスが、進言した。


「そうだな。エシャット村に、また頼るか」


「ダンジョン探索者も、引き留めませんと」


「山で、狩りや薬草採取の仕事を回せんのか?」


「一時的には可能でしょうが、解決策になりません」


「やはり、コロネ子爵を何とかしなければ・・・・・」


コロネ子爵との協議は、難航しそうだった。


取り敢えず目先の食料の解決に、翌日ハッサンがエシャット村へ行く事になった。

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