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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第十八話 フロリダ村

八月になり、イアン・リートガルドは移住者を引き連れ、新しいダンジョンへやって来た。


その中には、行政・建築・土木・鍛冶・木工・錬金術・調理・パン作り等に携わる者達がいた。

総勢、百人である。


「リートガルド隊長、お待ちしてました」


「どういう事だ。村が一つ、出来上がってるではないか?!」


リートガルドは、想像以上の開拓ぶりに驚きを隠せなかった。

それは、同行者達も同じだった。


ニコルは小屋を一日三棟ずつ建て、既に七十五棟建ち並んでいた。

その他、炊事場・井戸・トイレも増設している。


噂を聞きつけ、日用品や酒を売りドロップ品を仕入れる行商人や、移住希望者も現れていた。



「それが、エシャット村のニコルのお陰で、開拓が進みまして」


「村長の息子のニコルか?」


「はい。建物は彼の錬金術で作った物が、殆んどです」


「錬金術? そうか、彼は《有能》なのだな。これだけ準備ができていれば、これからの開拓が随分楽になる。ニコルに、礼を言わねばな」


「はい。そうしてやって下さい」


「ところで、そのニコルはいるのか?」


「いえ。最近は、来てませんね」


ニコルは役目を終え、既に日常に戻っていた。



リートガルド様から呼び出され、僕は開拓地に来ていた。


この地に帰って来てから、もう既に何度か呼び出されている。


「今日は、何の用だろう?」


ダンジョン周辺の開拓地は、リートガルド様から《フロリダ村》と発表された。

そして、専門家達によって、本格的に開拓が進められた。


最近知った事だが、リートガルド様は伯爵家の《次男》で、二十八歳妻子持ちである。


領地を守る騎士であったが、ダンジョンに派遣される王国の役人と渡り合う為、自ら開拓村の《村長》を買って出たというのだ。


家族は子供の教育の関係で、領都に置いてきたらしい。



そして僕は、リートガルド様のいる《役場》を訪れた。


「ニコル、先日はすまんな。この役場や私の住まいまで」


「いえ、いいんです」


リートガルド様に頼まれ、大きめの建物を二棟建てた。

あくまでも、仮設の建物である。


その代わりと言っては何だが、人頭税の納税の時に、孤児院の建設届けや孤児達の移住届けをすんなり処理して貰った。



「ところで、先日《粉挽き場》を作ったのだが、真っ白な小麦粉を挽くには大変な手間が掛かるらしい」


「はあ」


「エシャット村の《白パン》は、ニコルが《精麦・製粉》に関わってるそうじゃないか?」


「あれは、私の《錬金術》で精麦・製粉したものです」


「随分、多様性のある錬金術だな。やはりエシャット村の発展は、ニコルがもたらしたのか?」


「いえ。私だけの力じゃありません。村の人達が、頑張ったからです」


「ふむ、謙虚なのだな。だがその能力、このフロリダ村でも、遠慮無く発揮して欲しい」


「リートガルド様。私は商売人ですので、タダ働きは遠慮させていただきます」


「しっかりしているな」


釘を刺しておかないと、ずるずると引き込まれそうだった。



「白パン用の小麦粉がご入用でしたら、籾摺り・精麦・製粉を纏めて、一俵一万マネーでいかがでしょうか?」


王都で買った白パンの価格からしたら、この値段でも抑えたつもりだ。


「一万マネーか。そうだな、その額で頼む。だが一度に頼む時、二俵目からは六千マネーにしてくれ」


「いえいえ。麻袋も用意するので、詰め替え込みで七千マネーですね」


「むっ、そうか。それなら、その額で良かろう」


小麦粉の錬成と同時に俵を麻袋に変えてしまうので、物は言いようである。



「それで、もう一つ頼みがあるのだが」


「何でしょう?」


「魔道具を、こちらにも融通してくれんか?」


リートガルド様は、スーパーの店頭に置いてある事を知っていた。


「駄目ですよ。あれは私がやっとの思いで仕入れて、格安で貸し出しているのですから」


「そこを何とか頼む!」


「ストックも、それ程ある訳じゃないので駄目です」


魔道具はいずれこうなる事を予想して、スーパーの在庫の殆んどは僕が預かっている。



「魔道具は、一点一点高額だぞ。その購入資金は、どうしたんだ?」


「別に、悪い事なんてしてませんよ」


「本当は、ニコルが魔道具を作ったんじゃないのか?」


『ギクッ!』


「やだなー。そんな技術、ありませんよー」


鋭い指摘に、一瞬焦ってしまった。


「そうか。では、どうやって稼いだのだ?」


「王都に行って、たまたま稼げたんです」


「ふっ。あくまでも、言葉を濁すのだな。まあ良い。ところでニコル、このフロリダ村で商売はせんのか?」


「その内しますよ。今は孤児達の世話で、忙しいのです」


「そうなのか。残念だ」


将来的には、『店を構えてもいいかな』と、思っている。



「リートガルド様。私は忙しいので、小麦を製粉して帰りたいんですけど」


「ん? そうか。それじゃ、ハイネス。頼む」


「畏まりました」


ハイネスさんは、リートガルド様付きの秘書である。


「ニコル君。参りましょう」


「はい」


僕はハイネスさんと倉庫へ行き、一俵六十キロの麦俵を二俵製粉した。



「ニコル君。お代です」


僕はハイネスさんから、一万七千マネーを受け取った。


「ありがとうございます」


「君の錬金術は、色々と便利だな。感心する」


「そう言えば、領都からも錬金術師の方が、いらっしゃってましたよね」


「ああ。彼女には、《薬》専門に頑張って貰ってる。ダンジョンには、欠かせないからな」


「そうですか」


「必要な時は使いを出すので、また頼む」


「分かりました。失礼します」


能力を見せた事により、僕はリートガルド様とハイネスさんから目を付けられていた。

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