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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第十五話 召還者達の帰郷

帰りの《転移》も、暫くの時間暗闇を飛んだ。


『シュタッ!』


「ただいま。遅くなって、すみません」


勇也さん達はテーブルに着き、お茶を啜っていた。


『『ガタッ!』』


「ニッ、ニコル! どうだった?」


「ニコル君!」


僕の姿を見て、二人は立ち上がった。


「成功です。これ、日本から持って来ました」


そう言いながら、手に持っている《空き缶》を見せた。


「それって、コーヒーの空き缶じゃないか。本当に、日本に行ったんだな!」


「凄いよ、ニコル君!」


二人は驚きながらも、顔はほころんでいた。


「俺達も、日本に帰れるんだよな?」


「帰れます」


「「やったーーー!」」


二人は、両手を突き上げ喜んだ。



「確認だけど、二人はこっちの世界に戻らなくていいんだよね?」


「「いい!」」


「言っておくけど、向こうで《魔力の自然回復》はしなかったよ。魔力が切れたら、魔法は使えなくなるからね」


「おっ、おう。構わないぞ」


「ぼっ、僕も」


二人には、少し未練があるようだ。



「それから向こうの日付けは、西暦二千三十八年◯月◯日だった。二人が召還されてから、随分経ってるんじゃないかな?」


「四年経ってる」


「僕も四年」


「多分、《失踪者》扱いになってると思うよ」


「「だろうな(そうだね)」」


「世間が騒ぐかもしれないけど、それに耐えられる?」


「そんな事言ったって、耐えるしかないだろ」


「四年前の召還時には、戻れないの?」


「《時を遡る》なんて、《神様》じゃないと無理でしょうね」


「《宇宙空間の転移》も、大概だぞ!」


「そうだね」


僕も言ってて、そう思った。



「勇也君。お互い大変だけど、頑張ろう!」


「そうだな。こっちの世界で、やってこれたんだ。何とかなるさ!」


「それじゃ、いいんだね?」


「「ああ(うん)」」


「そうだ。ニコルに、《アイテムボックス》の中身をやるよ」


「僕も魔法袋を、受け取って欲しい」


「いいの? 金貨とか、向こうでも価値あるよ」


「いいさ。日本に帰れるんだから」


「僕も、同じだよ」


「そう。それなら、ありがたく受け取るよ」


「それじゃ、これ」


僕は忍さんから、差し出された魔法袋を受け取った。


「ありがとう」


一方勇也さんは、《アイテムボックス》から中身を取り出し、地面に積み上げた。


「ニコル、受け取ってくれ」


「うん。ありがとう」


僕は山の様になったドロップ品や武器やお金や食材を、《亜空間収納》にしまった。



「それじゃ行く前に、その服装を何とかしなきゃね」


「うっ、そうだな」


「この格好じゃ、コスプレイヤーだもんね」


「僕の錬金術で、服装を変えるよ」


「ああ、うん。頼む」


「凄いね。そんな事もできるんだ」


「それじゃ、いきます」


二人にそれぞれ手を翳すと、白い光りに包まれた。



やがて光りは収まり、二人は自分の服装を確認した。


「錬金術って、便利だな」


「こういう格好は、久し振りだよ」


「ついでに、僕も」


僕は変装アイテムで、前世の自分になった。


服装の設定も操作し、二人に合わせた。



「あれ、ニコルなのか?」


「向こうで、ちょっとした騒ぎになってね。前世の自分に、変装してみた」


「ニコル君イケメンだから、女の子が集まって来たんだろうね」


「まっ、まあ、そうですね」


「ニコル。お前、どー見ても年上だろ!」


「そうだね。二十五歳の時の姿だから」


「早く言えよ!」


「まあ、いいじゃない。それじゃ、行こうか?」


今更な事なので、軽く受け流した。



「ニコル。ちょっと、待つのじゃ」


そう言えば、魔王様達を放っておいてしまった。


「すみません。僕達だけで、話し込んじゃって」


「そんな事はいいのじゃ。この場を離れるなら、さっきの《ケーキ》を置いて行くのじゃ」


「ああ、そうですね」


《亜空間収納》からケーキの入った厚紙の箱を取り出し、ゼルリル様に渡した。


「これでいいのじゃ。心置きなく、行くが良い」


「はい。それじゃ皆さん、行ってきます」


魔王様達に挨拶すると、勇也さんと忍さんと一緒に《転移》した。



『『『シュタッ!』』』


「日本に、着きましたよ」


「「やったーーー!」」


二人は、がっしり抱き合いながら喜んだ。


「なあ、ニコル。ここは、何処なんだ?」


「僕の地元の、東京都杉並区です」


「杉並区か。それなら、俺の実家の横浜市からそんなに離れてないな」


「僕は川崎市だから、その間だね」


「そうだ、忍。住所交換しとこうぜ」


「そうだね」


僕は《亜空間収納》から紙とペンを取り出し、二人に渡した。


そして、二人は住所を書いた紙を交換し、再会を約束をした。



「川崎も横浜も行った事あるから、家の近くまで送りますよ」


「うん、頼むよ」


「俺は、自分の《転移魔法》で行けそうだ」


「一人で、家族の説得は大丈夫なの?」


「大丈夫だって。なんとかしてみせる」


「そう。それなら勇也さんとは、ここでお別れだね」


そう言って、僕は手を差し出した。


「ああ、世話になった」


勇也さんは、きつく僕の手を握った。


「忍も元気でな」


「うん」


忍さんとも握手を交わすと、勇也さんは《転移魔法》で消えていった。



「それじゃ、僕達も行きましょうか?」


「そうだね」


忍さんの家の住所を確認し、思い当たる近い場所に《転移》した。


そこから暫く歩き実家のアパートに到着すると、夕食時になっていた。

僕はそこで、家族との感動の対面を見届けた。


「ニコル君、本当にありがとう。君のお陰で、家族に会えたよ」


「良かったですね。これから大変かもしれないけど、頑張って下さい」


「うん。頑張るよ」


「それじゃ」


僕達は握手を交わし、別れを告げた。


僕が歩いてその場を去ると、忍さんはいつまでも手を振って見送ってくれた。

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