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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第十三話 二つの再会

時は、ニコル達が《転移》する少し前に遡る。


オーエン街のダンジョンのボス部屋には、先客がいた。


「やったぞ。ここのボスは、楽勝だったな!」


「宝箱もあるよ!」


(しのぶ)。本番は、これからだぜ!」


「何の事?」


「これからが、大一番って事さ。出て来やがれ、糞ったれー!」


『シーン!』


「怖じ気付いたかー。弱虫ー!」


『シーン!』


「お前のかーちゃん、でーべーそー!」


「勇也君。何やってんの?!」


「まあまあ、待ってろよ」



『シュタッ!』


勇也の言う通り待つと、間も無く何者かが現れた。


「軟弱勇者よ。久しいな」


現れたのは、魔王カイゼルであった。


「うるせー! 軟弱言うなー!」


「少しは、成長したか?」


「当たり前だろ! だから、来たんだ!」


「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっと待って! 勇也君、この人《魔王》じゃないか!!!」


忍と呼ばれた青年は、《魔力感知》スキルで目の前の人物から強大な魔力を感じた。

その正体を知る為、《鑑定》スキルでステータスを覗いたのだ。


「何だお主、知らなんだか?」


「聞いてないよー!」


「事情があって、俺の口から言えなかったんだ」


以前勇也は、『喋ったら、スタンピードを起こす』と、脅されていた。



「どうすんの、この状況?」


「魔王を倒す! そして、日本に帰る!」


「今の僕達じゃ、無理だよー!」


「忍。お前となら、やれる!」


「ウソだー!」


彼の名前は、《忍木(おしき) (しのぶ)》。

《ガーランド帝国》で《クラス召還》された際、《追放》されたのが彼だ。


追放後《アルシオン王国》に渡り、他のダンジョンで勇也と偶然出会ったのだ。

いじめられっ子気質で気が弱く、二十歳で年上なのに十八歳の勇也がいつも主導権を握っていた。


彼のステータス上の職業は《忍び》で、《忍術》という固有スキルを持っていた。

そしてそのスキルには、《鑑定》《隠秘》《収奪》という能力が最初から備わっていた。


彼は召還されて直ぐ能力に気付き、《隠秘》スキルでステータスの職業を《学生》に変え、スキルを隠した。


そのお陰で、《鑑定》スキル持ちの同級生を欺けたのだ。



そして、二人の様子を見ていた魔王は、痺れを切らした。


「お主ら、我を前にいい加減我にしろ。新顔よ、覚悟を決めるがいい!」


「ほら、魔王もこう言ってるぞ!」


「嫌だーーー!」


忍は覚悟を決められず、大声で叫んだ。



転移先に勇也さんとカイゼル様がいるのを、僕は感知していた。


そしてもう一人、以前検索した事のある人物なので、素性を知っていた。


『『『シュタッ!』』』


僕は構わず、その場所に《転移》した。


「ジジ上!」


「おおー、ゼルリル。会いたかったぞーーー!」


二人は久し振りの再会に、両腕を広げ駆け寄った。


ゼルリル様は飛び付き、それをカイゼル様が受け止め、そのまま二人は回りだした。


「アハハッ! アハハッ! アハハッ!・・・・・」


ゼルリル様が、めっちゃ喜んでいる。



「父上もゼルリルも嬉しいのは分かるが、そこの勇者達が困っておるぞ」


「おお、そうだった! サムゼルもよく来た」


突然の展開に、二人は固まっていた。


「なっ、なっ、なっ、なっ、何で魔王が三人もいるんだよー!」


「ヒィーーー!」


しかしその存在の正体に気付き、驚き恐れた。


「どれ、相手をしてやる」


そう言ってカイゼル様は、抱えていたゼルリル様を下ろした。



「ふざけんな! 魔王三人なんて無理・・・って、何でそこにニコルがいるんだ?!」


大人しくしていた僕に、やっと勇也さんが気付いた。


「勇也さん。久し振り」


「『久し振り』じゃねー! 何でお前が、魔王と一緒にいる?!」


「家族が久し振りに対面する、手助けかな?」


僕は首を傾げながら、答えた。



「いやいや、そうじゃない」


「ああ、そうか。勇也さん、魔王様達は悪い魔王じゃないよ。だから、戦う必要は無いんだ」


「そんなの信じられるか!」


「んー。どうすれば、信じてくれるかなー?」


「例えそれが本当だとしても、俺達が元の世界に帰るには、魔王を倒すしかないんだ!」


「そんな無理してまで、帰りたいんですか?」


「当たり前だ! 俺は実家のレストランを継いで、一流のシェフになるのが《夢》なんだ!」


「夢かー」


「それに忍だって、帰りたいのは一緒だ!」


「どうも、《忍木 忍》です」


「僕は、ニコルです。忍さんも、元の世界に帰りたいんですか?」


「うん。帰りたい! 勇也君みたいに夢は無いけど、残してきた母さんと妹が心配なんだ!」


二人からは、『帰りたい』という強い意志を感じた。



「忍は相手を倒す事で、今は三つのスキルを奪える。二人で魔王を倒し、《異世界転移》スキルを奪わせるつもりだった」


「スキルを奪うって、ある意味《最強スキル》ですよね?」


「だからって、人殺しはしてないよ。全部、魔物から奪ったんだ!」


忍さんは、必死に訴えた。


「しょうがない。一度試してみるか!」


「何を試すんだ?!」


「僕に少し、時間をください。何とかできるかもしれません」


「「えっ!」」


僕の言葉に、二人は再び固まった。

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