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神様候補の転生者は異世界のんびり生活を所望する  作者: sato
第七章 魔王襲来編
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第八話 ダンジョンの影響

ダンジョン入口の鉄扉前に《転移》し、閂を掛け洞窟を出た。


「ダンジョンをこのままにして、去っていいのか?」


この時エシャット村と僕への影響を、懸念した。


「魔王を追って、王国中から兵士達が集結する。この場所が見付かるのも、時間の問題だろうな」


魔王がいないと分かれば、その内開拓が進む。


ダンジョンは《王国》が管理し、街は《領主》が管理する事になっている。

規模は小さいが、このダンジョンも同じだろう。


「開拓が始まれば、エシャット村に人が往来するぞ」


そして、往来した人の感じる違和感。


『貧乏村という割りには、家屋は立派だし道も整備されている』


『家庭や農作業用の魔道具が、普及している』


『スーパーの商品にも、錬金術で作った良品が安価で売っている』


『終いには、《亜空間ゲート》なんて物で、他所の街に行けてしまう』


「どう説明しろって、言うんだ? 『僕が全部やりました』って言うのか?」


これらを隠蔽するとなると、村の生活が昔に戻ってしまう。

そんな事は、したくない。



「だけど、流石に《亜空間ゲート》はまずいな」


王族や貴族が、放っておく筈がない。


「錬金術で作った商品も、僕みたいな行商人が現れて、《転売》する人が出てくるだろうな」


転売はいいとしても、村人以外には《高値》で売りたい。


「それに、食料や人手が必要になるぞ」


ダンジョンから一番近いエシャット村が、協力を求められるのは必然的。

村で食料不足や農作業の人手不足を、起こすかもしれない。


それらに正当な対価が支払われればいいが、そんな保障はない。


「領主様は善良な人だと聞くが、どんな輩がやって来るか分からないからな」


立場の弱い者は、《搾取》されるのが世の常である。



僕の中で『今まで通り、平穏に暮らしたい』という気持ちと、『オープンにして人の往来を受け入れた方が、将来的にいい』という気持ちが交錯していた。


「ええい、面倒臭い。入口を塞いでやれ!」


『ゴゴゴゴゴ・・・・・!』


錬金術で洞窟の入口を、塞いでしまった。

一見したら、ただの小山である。


僕の気持ちは『平穏に暮らしたい』という方に傾き、国益を隠すという《卑怯》な手段に出た。


しかし、絶対見付からないようにした訳でもない。

それなら、もっと遣り様があった。


これは僕の《優柔不断》さと、《罪悪感》がそうさせた。


「血溜りは、消した方がいいな。《清浄》」


この一帯の地面は、『怪しい。ここで、何かが起こった』と思わせる程、多くの魔物の血に染まっていた。

僕は周辺の血を、魔法で《適度》に消していった。


そして後の事は、《神様の采配》に任せる事にした。


「あわよくば、見付かりませんように!」


最後に、本音を神様に祈ってみた。



「よし! 気分を切り替えよう」


魔物の死骸回収が、まだ残っていた。


「オリハルコン装備は、もういらないな。《脱衣》」


魔法で装備を外し、《亜空間収納》にしまった。

魔王用に装着したが、結果的に必要無かった。


そして、ポム用に《亜空間収納》からウエストバッグを取り出し、腰に巻いた。


「ポム。ウエストバッグに、入っててくれないか?」


「モキュ!」


「フッ! お前、そんな風に鳴くんだな」


まだ少しモヤモヤしていた気持ちが、ポムの鳴き声で和んだ。


ポムをウエストバッグに入れると、エシャット村方面に向かった。



エシャット村周辺の回収を、急いで終わらせた。


それでも、《魔王襲来》から三時間が経っている。


「他の場所は、大丈夫だろうか?」


気になったので、《検索ツール》で王国中に生存する地上の魔物を確認した。


「まだ、かなり残ってるな」


各領地では、騎士・兵士・傭兵・ダンジョン探索者等が配備されている。


「エシャット村みたいな小さな村は、戦力の配備なんてされてないんじゃないか?」


僕は次の瞬間、《転移》した。



向かった先は、一番近い隣街である。


そこは正に、戦闘の真っ最中だった。

街の警備兵が、飛行する魔物に苦戦していた。


そして街中には、怪我人や死人が横たわっていた。


「こんな事なら、もっと早く来るんだった!」


呑気に魔物の死骸を回収していた事を、悔やんだ。


「《黒矢》連射!」


『『『『『ギャー!』』』』』


「魔法の矢?」


「誰の仕業だ?」


「「「「「命拾いした!」」」」」


離れた場所から矢を放ったので、正体は晒してない。

僕は見付かる前に、前世の自分に変装した。


「《範囲中級回復》」


僕を中心に、広範囲の回復魔法を放った。


「何だこの光は? 体の痛みが消えてくぞ!」


「俺もだ!」


「回復魔法だ! それも、広範囲の!」


「まさか、《聖女様》がいらしたのか?」


『僕は、聖女じゃない。勘違いしないで欲しい』と、頭の中で突っ込んだ。



僕は続けて、街に潜む魔物を検索した。


「《黒矢》大連射!」


狙いが定まると、魔法を放った。


『ビュッ! ビュッ! ビュッ! ビュッ! ビュッ!・・・・・・・・・・!』


「おい、あそこだ! 黒髪の青年が、魔法の矢を放ってるぞ!」


「本当だ!」


「回復魔法も、彼なのか?」


僕は注目を、浴びてしまった。


「よし。この街は、片付いた!」


そう呟き、次の場所へ向かった。



その後、多くの地域を回った。


途中、アレンさんに遭遇するという場面もありながら、エステリア王国に散らばった魔物を殲滅した。

だが行く先々で、多くの亡くなった人を目にした。


「くそー! 出遅れなきゃ、もっと救えたのに!」


「モキュ!」


ウエストバッグからポムが顔を出し、僕を見詰めた。


「心配してくれてるのか?」


「モキュ!」


「ありがとな」


そう言いながら、ポムの頭を撫でてやった。



この一連の活躍で、称号《影の英雄》の特典戦闘時のステータス三倍が、六倍に跳ね上がった。


また、ポムのステータスを見ると、レベル19にまで上がっていた。


「ポム。一日で、成長したな!」


「モキュ!」


ポムは、笑いながら答えた。


「という事は、シャルロッテとケイコも成長してるな」


魔物討伐の経験値は僕には入らないが、僕と契約した者に振り分けられる。


「遅くなってしまった。村のみんな、心配してるぞ!」


既に日は沈み、暗くなり掛けていた。


僕は変装を解き、エシャット村の近くに《転移》した。

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