第七話 新たなダンジョンで新たな出会い
2021/05/30 ポムのステータス表記を追加しました。
地上に出ると大穴は塞がり、小さな山になっていた。
そしてその回りには、大量の魔物の死骸が転がっていた。
「ダンジョン内ではドロップして形を変えるのに、不思議だよな」
どちらかと言えば、この方が自然なのだろう。
ダンジョン内は、《ダンジョン特有の摂理》が働いてるようだ。
「ダンジョン中層階クラスの魔物も、ゴロゴロしてる。腐る前に、回収してしまおう」
僕は次々と、《亜空間収納》に死骸を回収した。
「あれっ?」
小山をふと見ると、人が悠々通れる穴が開いていた。
「これって、ダンジョンの入口だよな?」
僕は気になりながらも、魔物の回収を優先した。
◇
「この周辺は終わったぞ。後は村の方だ」
エシャット村周辺とここに来る道中に、死骸が散乱していた。
他の地域にも残っているが、魔物素材はお金になるので横取りするつもりはない。
「待てよ」
だがこの時、ダンジョンの事を思い出した。
「ちょっとだけ、覗いて行こうかな?」
ゼルリル様から小規模と聞いたが、どんなものか確かめたくなった。
「よし!」
決断すると、小山の洞窟前に《転移》した。
◇
薄暗い洞窟を進むと、奥には鉄扉があった。
「一応、閂が掛かってるんだな」
閂を外し鉄扉を開けると、地下へと続く階段があった。
階段をそのまま降りると、そこにはダンジョンが展開されていた。
「普通のダンジョンだ。魔物も上層にいるような、弱いやつしかいない」
この光景を見て、『魔王襲来直後に起こったスタンピードは、もう起こらないだろう』と安心した。
「んっ?!」
奥へ進むと、ゴブリンが《ベビースライム》を弄んでいた。
ゴブリンは僕に気付くと、標的を僕に変えた。
「キシャー!」
『グシャ!』
僕はオリハルコン装備の拳で、それを撃退した。
すると、ゴブリンは小さな魔石をドロップし、消えてしまった。
「ダンジョンの様子も分かった事だし、出るとするか」
そう呟くと、ベビースライムが僕に擦り寄って来た。
このスライムは饅頭の様な形で、大きさは掌に乗るサイズだった。
目と口があり、半透明の薄い水色をしている。
見ようによっては、可愛らしい。
「何だお前。助けられたと思って、僕に懐いたのか?」
『ピョーン、ピョーン、ピョーン』
僕の言葉に反応し、ベビースライムは跳ねだした。
「結果的に、そうなっただけなんだよなー」
『ピョーン、ピョーン、ピョーン』
「さて、行くか。もう、苛められるなよ」
『ジー!』
スライムは跳ねるのを止め、上目遣いで僕を見詰めた。
「そんな目で見詰めても、連れて行かないぞ」
『ジー!』
「悲しそうな目を、するなよ」
『ジー!』
「しょうがないな。僕と《従魔契約》するなら、連れてってやる」
魔物は魔素を吸収し、生き長らえる。
魔素の無い場所では、徐々に体は弱ってしまう。
しかしそれは、魔力でも補えた。
その手っ取り早い方法が、魔力を持つ生物の命を奪う事だ。
だが、僕の固有スキル《万能調教》であれば、契約した魔物と僕との間にパスが繋がり、魔力の自動供給が可能となる。
『ピョーン、ピョーン、ピョーン』
言葉が通じる筈も無いのに、その仕草が了承してる様に感じた。
「こっちに、おいで」
僕は、右手を差し出した。
『ピョーン!』
すると、ベビースライムは掌に飛び乗った。
「もしかして、本当に言葉が分かるのか? それとも、ただの偶然?」
僕はどちらにしろ、このベビースライムと《従魔契約》をする事にした。
◇
左手を上から添え、両手でベビースライムを包み込んだ。
「行くぞ! 《万能調教》」
『ポワーン!』
スキルを行使すると、手の中のベビースライムが白い光りに包まれた。
やがて光りが治まり、目の前にウインドウが現れた。
〔ベビースライムを、《テイム》しました。名前を付けてください〕
「恒例の名前かー。こいつ見た目、饅頭というか水風船みたいだよなー」
そう言いながら、頭を叩いた。
『ポム、ポム』
ベビースライムから、そんな音が聞こえた。
「ポム? 安直だけど、いいや。お前の名前は《ポム》だ!」
〔ベビースライムの名前を、《ポム》と登録しました〕
ポムと名付けたベビースライムを見ると、『ニッ!』と笑っていた。
ステータスを確認すると、こんな感じだった。
【名前】ポム
【年齢】零才
【種族】ベビースライム
【性別】-
【職業】ニコルのペット(テイム中)
【称号】-
【レベル】1
【体力】50/50←5/5(×10)
【魔力】20/20←2/2(×10)
【攻撃力】10←1(×10)
【物理防御力】10←1(×10)
【魔法防御力】10←1(×10)
【筋力】10←1(×10)
【敏捷】10←1(×10)
【持久力】10←1(×10)
【精神力】10←1(×10)
【知力】10←1(×10)
【運】30←3(×10)
【固有スキル】-
【スキル】弾力(Lv1)new/擬態(Lv1)new
【魔法】-
【武器】-
【防具】-
【アイテム】-
「それじゃ、行こうか?」
僕はポムを片手に、鉄扉の前に《転移》した。




