第十話 大商談
夕方になり、ダニエル商会を訪れた。
店員に応接室へ案内され、しばらく待つと支店長のメゾネフさんとオーナーと思われる人物がやって来た。
「ダニエル商会オーナーのダニエルです」
ダニエルさんは、背はそれほど高くはないが横に大きかった。
年はメゾネフさんと同じ位に見える。
「行商人のニコルです」
軽く挨拶を交わした。
「支店長のメゾネフから話しは聞きました。いい商品を見せていただき、ぜひ本店で扱わせていただきたい」
「ありがとうございます」
「忙しいので早速買取りの金額ですが、《ボックスティッシュ》は一個三千八百マネー、寄木細工と陶器のケースはどちらも一個七万マネーでどうでしょう?」
ボックスティッシもケースも想定より高い。断る理由がない。
「はい、構いません。今日はボックスティッシュを千個とケースを二種類五十個ずつ用意しました。いくつ納めましょうか?」
「売れ行きを見て今後の数を決めようと思うので、最初はボックスティッシュを二百個とケースを十個ずつにしましょう」
「ありがとうございます。商品は魔法袋に入ってるのですが、どのように納めればよろしいでしょうか?」
「ああ、それでしたら私も魔法の鞄を持っていますので、テーブルに並べてもらえば確認しながら鞄に詰めます」
「そうですか。では ボックスティッシュから、十個ずつ置きますね」
そして、見本で渡したケースも含めて納品が終わった。
ボックスティッシュが七十六万マネーでケースが百四十万マネー合計二百十六万マネーを、大金貨二枚と大銀貨十六枚で受け取った。
そして、このチャンスに他にも買ってもらえないかと思いついた。
「あの、他にも商品があるんですけど、見ていただけないですか?」
「ええ、いいですよ。いい商品を期待してます」
「ありがとうございます。それでこちらなんですが」と、言いながら《切子硝子のグラス》を赤・青・黄の三色取り出した。
ダニエルさんとメゾネフさんは、驚いた表情から感動した表情に変わりグラスに見入っている。
「なんてすばらしい。これほど綺麗なグラスは初めて見ました。色といい模様といい芸術品のようだ。ボックスティッシュのケースもすばらしかったが、甲乙つけがたい」
『やめてくださいよー。あまり褒められると、照れてしまう』と、心の声。
「こちらもぜひ買わせてください。貴族方の話題になる事、間違いないでしょう」
ダニエルさんは、グラスを見つめ思案している。
「こちらは二万マネーでどうですか? 数はいくつお持ちですかな?」
こちらも想定金額より高い。少し考える振りをして応えた。
「二万マネーでお願いします。数は各色五十個あり、その後も一ヶ月で同数ご用意できます」
「そうですか。それでは各色五十個買い取らせてください」
「ありがとうございます」
そう言って、グラスを魔法袋から取り出していく。
これらも各色一万個ずつあったが、儲け過ぎるのもあれなんで自重した。
商品を渡し終え、総額三百万マネーを小金貨三十枚で支払ってもらった。
金額があまりに大きい硬貨は、使うのに困るからね。
『予定に無い物まで即払いとは、どれだけ金があるんどろうか?』と、心の声。
「今日は、ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそいい品を仕入れられて嬉しいですよ。これから、長い付き合いになりそうですね」
「はい」
こうして、僕にとっての大商談が終わった。
平静を装ってたが、実は金額にビビッていた。
「こんなに上手く行ってもいいのか? 《運》のステータスが高いお陰かな?」と、呟いてしまった。
辺りはすっかり暗くなっていた。
夕飯を昼と同じ店で食べて行く事にした。
「チャーハンと餃子がある。これにしよう」
「これも、勇也さんがやらかしたのかもしれないな。だとしたら、グッジョブ!である」
メニューを見て気が付いた。
「あれ、ビールもあるぞ!」
この世界ではまだ酒を飲んでないが、前世では毎日飲んでいた。
「この世界で十五才は成人だし、いいだろう。よし、ビールも頼もう」
店員を呼び、注文した。
そして前世のサラリーマン時代、同じメニューを食堂で注文していた頃の自分を思い出す。
「あの頃の職場の仲間、どうしてるかなー」
思い出に耽っていると、注文した物が運ばれて来た。
「うまい!」
それらを食すと、まさに日本クオリティーだった。大満足である。
これだけの再現性、何か秘密があるに違いない。




