表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/401

第五十五話 ユミナの告白①

王国学園は十五歳を迎える年の一月に入学し、三年間で卒業する。


ユミナはこの度三年間の修業を終え、十二月十二日に卒業を迎える事になった。

僕達は卒業三日目の朝、エシャット村を旅立った。


孤児院はまだ建設中だが、この件が落ち着いてから再開するつもりだ。


「ご主人。ミーリアに反対されなくて、良かったニャ」


「ヒヒーン、ヒヒーン『ミーリアちゃん、健気です』!」


「ミーリアに、感謝だ。あそこで泣かれたら、ユミナに謝るしかなかった」


「ユミナを手放さずに済んで、嬉しいニャ?」


「何か、引っ掛かる言い方だな」


「素直にハーレムを、認めないからニャ」


「まだ、二人だろ。それに、結婚はまだ先の話しだ」


普段の僕が、ユミナの思い描く僕と掛け離れてるかもしれない。

それにエシャット村での生活が、合わないかもしれない。


そして何より、ミーリアと仲良くやっていけるか、見極める必要があった。



「ユミナの出発は一月って言ってたけど、それまで何するニャ?」


今回のグルジット邸への訪問は、ユミナのスケジュールを確認する為だった。


「どうするか?」


「待つの面倒ニャ」


「ユミナは、貴族だからな。卒業祝いとか年末年始の行事とか、あるんじゃないか?」


「ヒヒーン、ヒヒーン『それまで、ご主人様と一緒にいられますね』!」


「そうだな」


しかし王都はこの時期寒いので、旅には向いてなかった。



その日の午後、いよいよグルジット邸を訪れる時が来た。


「それじゃ、行ってくる」


「行ってらっしゃいニャ」


『行ってらっしゃいませ』


今回は打ち合わせだけなので、シロンとシャルロッテには待機して貰った。

一月にユミナを迎えに行く時は、馬車を出すつもりでいる。


僕は《亜空間農場》のゲートをグルジット邸の近くに開き、そのまま歩いて訪問した。



グルジット邸を訪れ応接室で待っていると、ユミナと伯爵婦人が現れた。


「お久しぶりです」


僕は立ち上がり、二人に挨拶した。


「お久しぶりね。ニコル君」


伯爵夫人が挨拶を返すも、ユミナは黙っていた。

そして、二人共浮かない顔をしている。


二人はそのまま、ソファーの前まで来た。


「ニコル君、ごめんなさい」


ユミナは、目に涙を浮かべながら言った。


「ユミナ。どうして、謝るんだ?」


「《結婚の話し》を、無かった事にして下さい」


ユミナはかぼそい声で、目に溜めていた涙を零しながら言った。


「えっ!」


「ごめんなさい!」


「いったい、何があったんだ?」


「ううっ!」


ユミナを問い質すと、両手で顔を覆い更に泣いてしまった。


僕はその姿に、オロオロしてしまった。


「ニコル君」


そんな僕に、伯爵婦人が話し掛けてきた。


「はい、何でしょう?」


「ユミナちゃんがこういう状況だから、私から説明するわ」


「お願いします」


「立ったままだと何だから、座りましょ」


「はい」


伯爵夫人はユミナの方を抱き、ソファーに座らせた。

僕もそれに習い、座った。



「実は一週間前、私達に《断れない縁談》の話しが来たの」


『今までは断ってたのに、今回は断れない相手?』僕はその相手を、推測した。


「もしかして、《王族》の方ですか?」


「そう。この国の《王太子殿》よ」


「次期国王様ですか」


僕の予想は、当たった。


「殿下には、既に婦人が二人いるわ。ユミナちゃんを、第三婦人として迎え入れるそうよ」


「そうですか」


「返事は正式にしてないのだけど、グルジット伯爵家の存亡に関わるわ」


伯爵婦人はハッキリと言わないが、ユミナが《未来視》スキルで何かを見たのかもしれない。


「断れば、王家との間に《禍根》を残すのですね」


「そういう事です」


『ユミナを連れ去る事は可能だが、残された人達に迷惑を掛けてしまう』


『それではユミナに、後ろめたさが残るだろう』


『ユミナは自分の思いを捨て、グルジット家を守る事を選んだ』


『こんな時、僕はユミナに何をしてやれる? 誰か教えてくれ!』


僕は心の中で、自問自答した。



「お母様」


「なあに、ユミナちゃん」


「ニコル君と、二人きりにさせて下さい」


「いいわよ。しっかりね」


「はい」


「ニコル君。ユミナちゃんを、頼んだわよ」


「はい」


伯爵婦人はユミナの願いを叶え、応接室を退出した。



ユミナはハンカチで涙を拭い、顔を上げ話し始めた。


「ニコル君。突然こんな事になって、ごめんなさい」


「何度も謝らなくていいよ。一番辛いのは、ユミナなんだから」


「理由をちゃんと、話します」


「うん。聞くよ」


どうやら、涙は治まったようだ。


「私がこのままニコル君の元へ行った時の、未来を視てしまったんです」


「あまりいい未来じゃ、なかったんだね」


「はい。グルジット家が王家から冷遇に合い、殿下が国王になった時それが過激になります」


「僕が言うのも何だけど、ユミナはそんな人に嫁いで大丈夫なの?」


「貴族に《国家反逆》をさせない為の、見せしめです。王家として、威厳を保たないといけないのです。だから嫁ぎさえすれば、私もグルジット家も大丈夫だと思います」


「そうなんだ」


『皇太子殿下は悪逆非道とかでは、ないのだろうか? それなら、救われるが・・・・・』


そんな事を考えていると、ユミナの表情が少し強張った。


「ニコル君! 聞いて下さい!」


すると、ユミナが声を強張らせて言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ