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第五十一話 ダンジョンの街の孤児院、騒動⑤

《亜空間農場》の家で朝食を済ませ、プラーク街の別荘の厩舎にゲートを開いた。


《亜空間ゲート》の片割れは、理屈上エーテル街にある筈だが、既に回収してある。

もしリンゼさんに聞かれたら、適当に誤魔化すつもりだ。


「シャルロッテは、ここで待っててくれ」


『分かりました』


「シロンは、どうする?」


「待ってるニャ。朝から子供の相手は、疲れるニャ」


「それじゃ、一人で行ってくる」


僕は厩舎を出て、家へ向かった。



家に入ると、誰もいなかった。

と言っても、事件が起きた訳ではない。


僕はそれに気付き、裏口へ向かい渡り廊下を通り増築した食堂へ入った。

すると、子供達は朝食をとっていた。


「みんな、お早う」


「「「「「「「「「「おはよー!」」」」」」」」」」


場所が変わり戸惑ってると思ったが、割りと元気だった。


「良く眠れたか?」


「「「「「「「「「「ねむれたー!」」」」」」」」」」


「それは、良かった」


「ここがニコルの家だと言ったら、みんな喜んでおったぞ」


「そうですか。ハハッ」


「ニコルさん。朝ご飯は、食べたんですか?」


「済ませたよ。みんなは、ゆっくり食べてくれ」


「はい」


僕は子供達が食事する姿を、微笑ましく眺めていた。



食後リンゼさんから子供達に、改めて説明がされた。


「食事も終わった事じゃし、お前達に伝える事がある」


「「「「「「「「「「なにー!」」」」」」」」」」


「孤児院には、もう帰れんのじゃ」


「「「「「「「「「「なんでー!」」」」」」」」」」


「孤児院を壊し、貴族の息子の家を建てるのじゃ」


「「「「「「「「「「えー!」」」」」」」」」」


「しかし、ニコルが故郷の村に、孤児院を建ててくれる。それまでの間、この家に住まわしてくれる事になった。じゃから、安心してくれ」


「「「「「「「「「「わかったー!」」」」」」」」」」


子供達は、不思議と物分かりが良かった。

『やだー』とか『帰りたい』とか、騒ぎ出すと思っていた。



「ねー、おトイレどうやってつかうのー?」


今まで《ボットン便所》だったのが、いきなり《シャワー付き水洗トイレ》に変わった。


「そういえば、説明してなかったな」


話しを聞くと、今朝は試行錯誤しながら使ったようだ。

そんな訳で、正式な使い方を教えてやった。


そのついでに、子供達に家を案内する事になった。



家を見て回り、次は街を案内する番である。


しかし、街に繰り出すには人数が多過ぎた。


「知らない街だし、はぐれたら大変だな」


この時、前世の小学校や保育園の先生が感じるであろう気苦労を知った。


「馬車を用意しますので、四つの班に分かれて順番に行きましょう」


「そうじゃな」


「リンゼさん。班分けを頼んで、いいですか?」


「それぐらい、任せろ」


リンゼさんに班分けを任せ、僕は以前使っていた観光用の馬車を用意した。



班分けが済み、馬車で街に繰り出した。


「ココ」


「何ですか?」


「この街のダンジョンの魔物は、殆どが食材をドロップするんだ」


「魔物の食材ですか?」


「嫌か?」


「嫌じゃありません。エーテル街では、ホーンラビットのお肉なら食べた事あります」


「肉だけじゃなく、野菜や果物だってあるぞ。しかも、凄く美味しい」


「野菜や果物?」


「安い物も多いから、今度一緒に行こう」


「はい!」


こうして午前中は、二組案内して終わった。



お昼になり、お腹が空いた。


「おやつをご馳走するか」


孤児院は今でも、朝と夜の一日二食が続いている。


「おいしーね」


「うまうまー」


「あまあまー」


昨夜に引き続き、焼きトウモローコシをご馳走した。



食後、残り二組の案内を済ませた。


そして、当面の食材とお金をリンゼさんに渡し、今は話しの最中だ。


「この街の孤児院は、どうなっておるのじゃ?」


「二つありますよ」


「ちゃんと、援助は受けられてるのかの?」


「詳しい事は分かりませんが、大丈夫そうですね」


「羨ましいの」


「その土地を治める権力者で違いがあるなんて、不公平ですね」


「ニコルの言う通りじゃ」


「この街は食料が安く、ダンジョンも十三歳から入れるし、生活しやすいですよ」


「成人前から、ダンジョンに入れるのか?」


「ここは、初級者向けですからね。奥へ行かなければ、ダンジョン探索者に成り立てでも安全に狩りができます」


「そうじゃったか。孤児院を巣だった子供達にも、教えてやりたいわい」


「そうですか」


僕なら探し出し連れて来る事も可能だが、そこまで世話を妬く必要があるか迷った。


だが、その申し出をする事はなかった。



そんな時だった。


「おじちゃんだれー?」


「何だこりゃ。ここにもガキが、いっぱいいるぞ。それに、俺はおじちゃんじゃねー!」


どうやら、ダンジョンからエシャット村の狩猟班が、帰って来たらしい。



僕は説明しに、玄関へ向かった。


「やあ、サジ」


声の主は、サジだった。


「何だニコル。本当に、いたのか?」


どうやら、外にいる子供から、僕の事を聞いたらしい。


「まあね」


「こいつら、どうしてここにいるんだ?」


武器を持った大人が突然現れ、興味津々の子と怖くて僕の後ろに隠れる子がいた。


「この子達は、他所の街の孤児なんだ。孤児院を、貴族に追い出された」


「それで、ニコルが面倒見てるのか?」


「そういう事」


「まあ、ニコルがやる事だから文句はねえけど、お人好しだな」


シロンと、同じ事を言われてしまった。


「どうとでも、言ってくれ。その内、村に孤児院を建てて、引っ越すからな」


「まっ、頑張れよ。応援してるぜ」


サジはそう言い残し、去って行った。



「みんな。あの人は、僕の村の人だ。ここへはよく来るから、怖がらなくていいぞ」


「「「「「「「「「「うん!」」」」」」」」」」


父さんに相談する前に、サジ達狩猟班に知られてしまった。

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