第九話 王都の買物と食事処
2020/12/14 魔法書の金額を十万マネーから、二十万マネーに変更しました。
朝食を簡単に済ませ借家を出た。
日の当たる街並みを見ながら、三十分歩いて繁華街に着いた。
「当たり前だけど、村とは比較にならないなー」
すでに朝から人が溢れ、賑わっている。
村の食事を豊かにしたかったので、スパイスを探したが黒胡椒しか見当たらなかった。
変わりに、ハーブの種類がふんだんにそろってる。
他の街では見かけない、いろんな食材に興奮した。
そして、トマトがあったのは僥倖である。
スープに入れて煮込んだり、ミートソースパスタにしたり、料理のバリエーションが増える。
それに、フライドポテトに合うトマトケチャップも作れる。
そして、僕はついに出合った。
「米だ。やっと出会えた。ずっと君に合えるのを待っていたんだ」
この世界で、初めてのオリジナルの米である。
《検索ツール》でこの世界にあるのは知っていたが、この目で見るのは初めてだった。
しばらく王都にいるにもかかわらず、三十キロも買い込んでしまった。
◇
「へー、魔道具の品揃えがいいな」
食材を買い込んだ後、魔道具と魔法書の店に足を運んだ。
王都にある店だけあって、いろいろ揃ってる。
魔道具の値段を見ると、当然だがバカ高い。まあ、王都だから金持ちが多いんだろう。
僕の《亜空間収納》の在庫も、早く売ってしまいたい。
そして、この店に来た一番の理由は《魔法書》だ。
今までお金が無かったから、買う事ができなかったのだ。
魔法書も品揃えがいい。
《上級魔法書》もあったが、カウンターの後ろの棚に飾られていた。
買うには、国から許可がいるらしい。
その他は手の届く棚にあったが、『立ち読み禁止』の張り紙が張ってある。
「《防御属性魔法》と《結界属性魔法》、どちらも初中級編か。勇者パーティーとダンジョンに行くんだったら、守備力向上は必要だな。これ見たいなー」
思わず呟いてしまった。そして、店主と目が合った。
「すみません。《防御属性魔法》と《結界属性魔法》の初中級編を、見せてもらってもいいですか?」
「少しだけじゃぞ。うちは立ち読みお断りなんじゃ」
そう言いながらも、店主は許可してくれた。
「はい。すぐ返します」
そう言って、《防御属性魔法》の魔法書を手にし読んだ。
「ふむふむ、防御するのに使い勝手がいい。それに自分だけでなく、他の人も守れそうだ」
今度は、《結界属性魔法》の魔法書を手にした。
「これは夜テントを張ったとき、人や動物や虫を気にしなくて済みそうだ」
僕は二冊共、買ってしまった。
十年前に決めたのだ。魔法は魔法書で勉強すると。
それほどページがあるわけじゃないが、初中級の魔法書だけあってそれぞれ二十万マネーした。
とんだ出費である。
他にも欲しい本はあったけど、さすがに使いすぎだと思い買うのを控えた。
そうしているうちに昼飯時をむかえ、食事処の前で立ち止まった。
外に張られたメニューに目が行き、興味を引かれたのだ。
「おっ、この店日本の食堂のメニューがたくさんある。入ってみよう」
この店のメニューを見た時、勇也さんの顔が過ぎった。
コーヒーやケーキといい、勇也さんは王都でやらかしているのかもしれない。
定番の《豚の生姜焼き定食》を注文した。
そして、僕の目の前に運ばれてきた物は、前世日本で見たままであった。
生姜は何度か見た事はあったが、醤油を使った料理は村以外で初めてである。
醤油は僕が作って、すでに村のスーパーで販売している。
原料となる大豆は村の畑で作ってもらってるけど、醤油作りはまだ任せられないでいる。
黒胡椒と砂糖黍も育てているので、村の食卓の味は大分豊かになった。
「美味い。この生姜焼き、凄く懐かしい。そして、この米。甘みがあって日本米に近い。豆腐とねぎの味噌汁もいける」
豚の生姜焼き定食は、前世で食べたのと遜色なく凄く美味しかった。思わず涙が出た。
錬金術で作ったりもしたけど、オリジナルの食材で人に料理してもらうと感動が違う。
料金は二千八百マネーと僕には高かったが、大満足した。
塩で稼いだお金があるし、今後ちょくちょく足を運ぼうと思う。
◇
午後も店を見て回った。
午前中は食材を衝動買いしてしまったが、冷静になったら王都の物価はどれも高い。
《鑑定スキル》でみると、王都ではそれなりの相場だった。
「村に持ち帰って売ろうにも、原価でも売れないな。今日買ったのは、自分用にしよう」
僕は王都で商品を仕入れるのを、二日目にして諦めた。
王都では売る方に専念して、他所の街や農村をあたって安く仕入れられるルートを探す事にした。
「明日は露店を出してみるかな」
ダニエル商会との約束の時間まで、露店の場所探しとそこで何を売るか思案しながら過ごした。




