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第四十八話 ダンジョンの街の孤児院、騒動②

ほんの少し時間が遡ったところから、話しは始まる。


「あっ、また馬車が来た」


「ほんとだー」


馬車は敷地の外に停められ、貴族とおぼしき人物とその従者が降りて来た。


「相変わらず、貧乏臭い所だ。本当に援助金も無しに、大勢の子供がいるのか?」


「はい。それに先日御報告した通り、家の中は外観と違って綺麗ですし、魔道具も多く見掛けました」


「信じられんな」


貴族は疑いの言葉を述べると、孤児院の敷地に入って行った。



貴族は足を止め、庭に停めてある馬車を見つめた。


「この馬車、先客か?」


「先日は、ありませんでした」


「この場に不釣り合いな、良い馬だな」


貴族は、シャルロッテに近付こうとした。


「ヒヒーーーン!!!」


シャルロッテはそれを察知し、嘶いた。


「私を拒絶するのか? 生意気な!」


「シャーーー!!!」


「ほう、猫もいるのか? 威嚇しているが、なかなか美しい容姿ではないか」


「おじちゃん。おうまさんとねこさんがおこってるから、ちかづかないで!」


「「「「「ちかづくなー!」」」」」


「黙れ、ガキ共! 誰に物を言ってるか、分かってるのか?!」


「「「「「しらなーい!」」」」」


「チッ! ガキ共、どけ!」


「「「「「キャーーー!」」」」」


従者は、子供達を突き飛ばした。


「「「「「うえーん!」」」」」


「ヒヒーーーン!!!」


「シャーーー!!!」


子供達が突き飛ばされるのを見て、シャルロッテとシロンが従者を威嚇した。


『ギー!』


その時、玄関の扉が開いた。



玄関の扉を開くと子供達が泣き崩れ、シャルロッテとシロンが男を威嚇していた。


「何があったんだ?」


「このおじちゃんが、つきとばしたー。うえーん」


僕は子供が指差す方を見て、睨んだ。


「いい大人が、子供相手に何するんですか!」


「何だ貴様は?!」


「ただの行商人です!」


「行商人風情が、口出しすんな!」


『スッ!』


男が殴り掛かって来たので、素早く避けた。


「貴様ー!」


「もう止めろ。私は、叔父に用がある」


「はい。申し訳ありません」


二人は僕を無視し、家に向かった。


「叔父って言ったな」


どうやら、この街を納める《代官》のようだ。



二人を追い掛けようとしたが、子供達が泣いていた。

見た感じでは、打ち身程度のようだ。


『フワー』


子供達が、淡い光りに包まれた。

無詠唱で、《初級回復》魔法を放った。


「大丈夫か?」


「「「「「あれっ、いたくない」」」」」


「あの叔父さん達に、近付いちゃ駄目だぞ」


「「「「「うん!」」」」」


子供達を立たせ魔法で綺麗にしてあげると、急いで二人を追った。



一方、家に入った代官達はというと、クッキーを食べている子供達に、視線を向けられていた。


「お前の話しは、どうやら本当のようだ」


「信じていただけましたか?」


「うむ。しかし、これだけ養う金を、どう工面しているのだ?」


「パトロンですかね?」


「いったい、誰が?」


「さあ、誰でしょう?」


「おい、娘。リンゼ叔父は何処にいる?」


代官とココは血が繋がっていたが、身分の違いもありぞんざいに扱われていた。


「お爺ちゃんなら、自分の部屋にいます」


それを聞くと、代官達はリンゼさんの部屋へ向かった。



僕が家に入ると、代官達がリンゼさんの部屋に入ろうとしていた。


「ココ、コニー、心配するな。僕に任せろ」


「ニコルさん」


「ニコルおにーちゃん」


二人を安心させる為そう言ったが、具体的な策など無かった。

貴族とは、《厄介》なのである。


取り敢えず、代官の目的を知る為、リンゼさんの部屋の前で聞き耳を立てた。



「帰れ! お前の顔など、見たくない」


「リンゼ伯父、分かってくれ。金にもならない孤児院なんて、あったってしょうがないだろ」


「しょうがない訳あるか! 行き場を失った子供達には、必要じゃ!」


「そんな子供、《奴隷商》に任せればいい。何だったら、ここの子供も私が買い取るぞ」


「貴様ー! わしはそんな事、絶対せん!」


「相変わらずだな。それなら、その辺にある《魔道具》を、一個につき五日間の延長で買い取ってやる」


「外道め!」


「リンゼ伯父。言葉には、気を付けてくれ。私は、貴族なんだ。口が過ぎると、不敬罪でしょっぴくよ」


「ぐぐっ!」


「魔道具を売らないなら、二十日後にきっちりと出ていって貰うからな」


『ギー!』


代官達が、リンゼさんの部屋から出て来た。



「何だ、行商人。盗み聞きか?」


「いえ」


「まあ良い。表の馬車は、お前のか?」


「そうです」


「馬と猫を、私に譲らんか?」


「駄目です。僕の《家族》ですから」


「ふっ、そうか。忠告しておくが、この孤児院に深入りせん方が身の為だぞ」


「ご忠告、ありがとうございます」


僕がそう言うと、代官達は去って行った。



代官達が外に出るのを見送り、リンゼさんの部屋に入った。


「リンゼさん。大丈夫ですか?」


「正直、大丈夫とは言えんのう」


「あの人、奴隷商とも繋がってそうですね」


「わしも、薄々気付いとった。あからさまに言われたのは、初めてじゃ」


リンゼさんは、随分と気落ちしていた。


「あの代官、何か企んでる気がします。引っ越しを、早めた方が良さそうですね」


「そうじゃな。子供達も、不安がっておろう」


「はい。ちょっと、心配ですね」


「子供達の不安を、取り除けんかの?」


「そうですね。バーベキューでも、やりますか?」


「ああ、そうじゃな。頼めるか?」


「はい!」


この後夕食に向け、バーベキューの下準備に取り掛かった。

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