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第四十七話 ダンジョンの街の孤児院、騒動①

ユミナに戦争回避を報告した時、ステータスに変化が現れた。


称号《影の英雄》の特典《戦闘時のステータス二倍》が、《三倍》になったのだ。

この称号は、ある条件を満たすと成長するらしい。


しかし、この事は敢えてユミナに話さなかった。



今は仕入れの旅を済ませ、エーテル街の孤児院に馬車で向かっている。


寄付を済ませたら、ノーステリア大公爵領に家畜を購入しに行くつもりだ。


「あっ、ニコルおにーちゃんだ!」


「ほんとだ!」


「「「「「わー!」」」」」


孤児院の前を通ると、子供達が僕に気付いた。

馬車を敷地内に停めると、みんな集まって来た。


「みんな元気か?」


「「「「「げんきー!」」」」」


子供達は、大きな声で返事を返した。

しかしふと見ると、集団の後ろにいるコニーだけ、元気が無かった。


心配になり、御者台から降りてコニーに声を掛けた。


「コニー、元気無いな」


「うっ、うん」


「何かあったのか?」


「おじいちゃん、ゲンキないんだ」


「病気か?」


「わかんない」


「そうか。それじゃ、リンゼさんに会いに行こう」


「うん」


「シロン、シャルロッテ。子供達の面倒を、頼んだぞ」


「ニャー!」


「ヒヒーン!」


「「「「「わー!」」」」」


子供達はシロンとシャルロッテに、わらわらと集まった。



僕とコニーは、家の中に入った。


「ココ、久しぶり」


『ビクッ!』


「ニコルさん!」


ゆっくり振り向くココの顔は、真っ赤に染まっていた。


「おねえちゃん。かお、あかいよ」


「コニー、何言ってるの! ニコルさん、いらっしゃい」


「お邪魔するよ。ところでリンゼさん、具合い悪いのか?」


「体調が悪いとかじゃ、ないと思います。多分、貴族の使いの方がみえたのが、原因じゃないかと」


「貴族?」


「はい」


嫌なワードを、聞いてしまった。



「リンゼさんは、何処にいる?」


「自分の部屋です」


「そうか。行ってみるよ」


リンゼさんの部屋へ行こうとすると、僕の回りに子供達が集まっていた。

そして、その目は何かを期待していた。


「そうだったな。ココ、お土産だ。みんなに、食べさせてくれ」


そう言いながら、クッキーが大量に入った籠を五つ魔法袋から取り出し、テーブルに置いた。


「「「「「「「「「「わー!」」」」」」」」」」


「いつも、ありがとうございます」


「どういたしまして」


ココは早速子供達を集め、クッキーを配った。



その様子を見てリンゼさんの部屋へ歩き始めると、コニーがついて来た。


「コニー、もういいぞ。みんなと、クッキーを食べてるんだ」


「おじいちゃんが、しんぱいなんだ」


「大丈夫。僕が何とかする。だから、待っててくれ」


「うっ、うん。わかった。おじいちゃんを、たのむね」


「ああ、任せろ」


そう言って、心配するコニーの頭を撫でてやった。



『トン! トン!』


リンゼさんの部屋の前まで行き、扉を叩いた。


「リンゼさん。ニコルです」


「ニコルか。入っていいぞ」


『ギー、ガチャ!』


「お久しぶりです」


「久しぶりじゃな」


実際に会ってみると、リンゼさんから覇気が感じられなかった。



「コニーとココから、元気が無いと聞きました。何かあったんですか?」


「まあな。ニコルだから話すが、孤児院の退去命令が出たんじゃ」


「えっ! ここは、街の公共施設ですよね?」


「そうじゃ。援助金が途絶えて久しいが、遂にここまでしてきおった。噂では、代官の次男の家を建てるそうじゃ」


「それは流石に、元気も無くなりますね」


「こんな大所帯、この街に行く所などありゃせん」


「四十人近いですもんね。それで、いつまでいられるんですか?」


「あと、二十日じゃ」


「期限まで、余裕無いですね。何だったら、僕の故郷の村に来ませんか?」


「いいのか?」


「いいですよ。僕が何とかします」


「何から何まで、すまん!」


リンゼさんは涙ぐみながら、頭を下げた。



「頭を上げて下さい。引っ越しの具体的な話しをしましょう」


「そうじゃな。じゃが、孤児院が無くなると、この街の新たな孤児の行き場が無くなるのう」


僕はそこまで、考えてなかった。


「ここにいる子供達だけの問題じゃ、ないんですね」


「そういう事じゃ。ここは、ダンジョンの街。親を無くす子は、少なくない」


「参りましたね。これからの事となると、行政のあり方を何とかしないと」


「わしの甥が、代官になったばかりに・・・」


「領主様に、訴えましょうよ」


「直接会う事は、難しいじゃろ。以前手紙を送ったが、音沙汰無しじゃ」


リンゼさんは、俯いてしまった。



「ヒヒーーーン!!!」


「シャルロッテ!」


突然、シャルロッテの嘶く声が聞こえた。

牡馬が寄ってきた時と、同じ感じだ。


「何じゃ。何事じゃ?」


「様子を見てきます」


僕はシャルロッテの元へ、急いで向かった。

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