第四十三話 勇者達の動向、再び
前話後書き(追伸)の続き
2021年1月21日深夜、何も起こらず《意気消沈》。
今日。えっ! まだ、終わってなかったの?
米の国が《共和国》になる?
今のところ何が《真実》か分かりませんが、スパイ映画の現実版のようです。
※ 都合上、言葉を濁してます。
アレンさんと僕は、領主城を後にした。
「なあ、ニコル。利用するようでわりーんだが、勇者達のとこまで送ってくんねーか?」
「いいですよ。僕も、気になってたんで」
「それじゃ、変装して行くか?」
「はい」
アレンさんと僕は、変装後ガーランド帝国の帝都へ《転移》した。
◇
勇者達は、既にダンジョンから帝都の屋敷に戻っていた。
「ウガーーーーー!」
「キヒャーーーーー!」
「ウオーーーーー!」
「《平常心》」
「「「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」」」
《悪事矯正リング》の影響で悲鳴を上げていたのは、《狂戦士》と《暗殺者》と《大魔導師》である。
それを《賢者》が、魔法で落ち着かせた。
「お前ら、起動条件を教えたろ。良い子にしてろよ」
「「「うるせえ!」」」
三人は、《悪意》に対する心のコントロールが下手だった。
「しかしよ。俺らこのままだと、本当に良い子ちゃんになるしかねえな」
「外そうにも、今は手立てがねえ」
「罵烙の《聖剣》なら、首輪を斬れそうなもんだけどよ」
「俺にそんな繊細な腕がねえの知ってんだろ。首ごとぶった斬っちまうぞ。それに、今更腕を上げてもおせえ。聖剣を握って、ぶった斬ろうと意識しただけで、感電しやがる」
「外される側も意識しちまうと、感電しちまうしな」
「外す方も外される方も感電しちゃー、どうしようもなんねーぜ」
「糞ムカツクが、宰相に頼るしかねー。今頃、何か分かったかもしれねーからな」
「アイテムが糞の役にも立たなかったって、文句言ってやる」
こうして、勇者達は皇帝城へ《転移》した。
◇
アレンさんと僕は《光学迷彩》で姿を消し、今の様子を見ていた。
「行ったな」
「行きましたね」
「奴等には、リングを外せそうもないな」
「そうですね」
「皇帝城で、どうにかなると思うか?」
「オリハルコンのナイフとか持ち出されると、『スパッ』と切れそうですけどね」
「オリハルコンか。可能性としては、無くもないな」
「でも、リングには《修復機能》がありますし、最低でも《二ヶ所》切断しないと外せません」
「それと、ナイフを伝って流れる電気にも耐えなきゃいけねーのか?」
「そうです」
「面倒くせー作りだな」
「ハハッ」
できるだけ、外されない様にした結果である。
「後は、俺が奴等を見張る。ニコルは、自由にしていいぞ」
「そうですか? それなら、お言葉に甘えます」
「元気でな」
「たまに、様子を見に来ます」
「ああ」
僕は《光学迷彩》を解いて貰い、ノーステリア大公爵領に《転移》した。
◇
勇者達は、宰相の執務室を訪れていた。
「いきなり城に来るなと、言っておろう!」
「緊急事態だ!」
「いったい、な、な、な、何ーーー!! お主達もか?」
宰相は勇者達の首輪を見て、悲鳴を上げた。
「ああ、やられた」
「何という事だ!」
「このアイテム、効かなかったぜ」
そう言って、勇者は手の甲を向け《指輪》を見せた。
「まさか、眠らされたのか?」
「そうだ」
「有り得ん!」
「言っとくが、本当だ」
「アイテムのレジスト力を、上回ったという事か?」
「ああ。だが、それだけじゃねー」
「何だと言うんだ?」
「《召喚者狩り》には、仲間が一人いた」
「それが、どうしたというのじゃ?」
「そいつに、俺ら六人束になって負けた」
「お主達が、負けただと!」
「俺らだって、信じらんねーよ!」
「くっ! またもや、邪魔が入ったというのか。これで、三度目じゃ」
「三度目? 聞いてねーぞ」
「二年前の戦争で、邪魔が入ったのは知っておろう?」
「ああ。俺達は戦争に参加しなかったが、聞いている」
「十年前の開戦直前にも、あったのじゃ。其奴は突如として現れ、我が軍の頭上に数千の《光槍》を待機させた」
「何だそりゃ。すげー数だな。それで、どうしたんだ?」
「其奴は、我等に退去を迫った」
「おめおめと、退いたのか?」
「いや。戦争の総指揮である《元帥》は、進軍を命じた」
「ほう。ビビらなかったのか」
「だがその直後、先頭にいた元帥が数多の《光槍》に貫かれ死んだ」
「何だそれ? 笑えるぜ!」
「そして、待機している《光槍》に兵士は慄き、指揮系統が乱れ進軍は止まった」
「頭が真っ先に殺られりゃ、ビビるわな」
「もしや、今回と同一人物なのでは?」
「そんなの知んねーよ。どうでもいいけど、首輪は外せたのか?」
「いいや、まだじゃ」
「クソッ、駄目か」
勇者達は淡い期待を抱いていたが、その願いは叶わなかった。
◇
僕はノーステリア大公爵領へ戻ると、家を借り二週間過ごした。
その間、街に出て仕入れをし、時々アレンさんの所へ様子を見に行った。
領都には定期的に仕入れに来ていたが、今回は仕入れの旅という事で大量に購入している。
そのついでに、鋼のインゴットの売却も済ませた。
家畜の購入は世話が大変なので、エシャット村に帰る直前の予定だ。
一方、ガーランド帝国の様子はというと、未だ戦争の準備が進められていた。
しかし、勇者達召喚者の《悪事矯正リング》の取り外しができず、参戦が危ぶまれている。
それに伴い、議会では開戦の審議がされたが結論に至ってなかった。
僕はノーステリア大公爵領を出て、次の目的地に向かった。




