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第四十話 嫌な予感が、当たっちゃいました

僕は《亜空間農場》を出て、ノーステリア大公爵領の領都にいる。


今は変装を解き、ステータスをレベル10に偽装している。

変装とステータスの組み合わせは十パターンまで登録できるので、簡単に変える事ができる。


「シロンとシャルロッテの変な勘繰りのせいで、遅くなったぞ。アレンさんは、何処にいるんだ?」


待ち合わせ場所を決めてないので、アレンさんの居場所を検索した。


「いた。随分、貴族街の近くだな」


早速近くへ《転移》し、店に向かった。



アレンさんのいる場所は、高級焼肉店の個室だった。


「すみません。お待たせしました」


「おっ、来たな。俺も用事を済ませてたから、そんなに待ってないぞ」


「そうですか。それにしても、随分敷居の高い店を選びましたね」


「金が入ったからな。気にするな」


「お金?」


「俺の依頼主さ。報告をしに行ったら、金を寄越した」


「へー」


「肉は、適当に注文したからよ。何かリクエストはあるか?」


「お任せします」


「そうか。飲み物は、ビールでいいな?」


「はい」


初めて来た店なので、アレンさんに任せる事にした。



元日本人が《内政チート?》している領地だけあって、この焼肉店は前世を思わせた。


「美味しいですね」


「そうだろ」


この店は魔物の肉は使っておらず、この領地で育てた牛の肉を使っていた。

日本でお馴染みの、《焼肉のタレ》も再現している。


「アレンさんは、ここによく来るんですか?」


「たまに連れて来られたが、俺が行く店はもっと庶民的だ」


「へー。どうして、この店にしたんですか?」


「実を言うとな、ここを勧めたのは俺の依頼主なんだ」


「えっ!」


「報告するのに、ニコルの事をチラッと話したんだ。本当、チラッとだぞ」


「げっ!」


「そしたらよ。貢献者には、良いものを振る舞ってやれってよ」


「何か、嫌な予感がするんですけど」


「そうか? そんなの気にしてると、飯が不味くなるぞ」


「アレンさんのせいです」


「ウハハッ! まあ、飲め」


「ハァー。何を言っても、無駄ですね」


僕はジョッキのビールを飲み干し、お代わりを頼んだ。



「店に入る時、貴族の方達を見掛けたんですけど、美味しいからわざわざ食べに来るんですかね?」


「それもあるけどよ、貴族街には店がねーんだ。外で飲み食いする時は、平民街まで足を運ぶしかねー」


「どうして、貴族街に店が無いんですか?」


「王都程、貴族がいねーからな」


「あっ、そうか」


「国の政治的な事は、全て王都だからよ。ここに屋敷のある貴族は、主に近隣の領主達だ」


「という事は、この店は貴族向けなんですね?」


「まあ、どっちかっていうとな」


アレンさんは意外にも、物知りだった。



「ところで、戦争は回避できますかね?」


「そうだな。大丈夫じゃねえか?」


「《第六感》ですか?」


「そんなとこだ。召喚者以外の隠し球があれば、話しは別だが」


「無いといいですね」


「まあな。ニコルは、明日からどうするんだ?」


「こう見えて、本業は行商人なんです。仕事をしつつ、帝国の動きをチェックします」


「俺も、似たようなもんだ。戦争の動きが無くなるまで、帝国をスパイする」


「暫く、大変ですね」


「お互い、いいように使われてるな」


「ハハッ!」


僕はユミナの『お願い』で行動してるので、笑って誤魔化した。



『キー!』


そんな時、個室の扉が開いた。


「誰に、いいように使われてるって?」


「げっ、ジジイ。来たのか?」


「お前の《協力者》とやらに、興味が湧いてな」


「それで、わざわざ領主が来るか?」


「お主がちゃんと報告せず、協力者を優先するからじゃ」


「誘っといて待たせたら、悪いからよ」


「大公爵のわしを、差し置いてでもじゃろ」


「そうだよ」


「それで、益々興味が湧いたわい」


「分かったよ。ニコル悪いな。領主のノーステリア大公爵様だ」


「エドワード・ノーステリアだ」


「ニコルです」


大公爵ともなるとかなりの圧を感じ、僕は萎縮してしまった。



一方、ノーステリア大公爵は、こんな事を考えていた。


『こ奴、何処かで? おお、そうじゃ。以前、馬に騎乗しておった。今は気を抑えているようじゃが、こ奴じゃ』


「随分、若いな。一体、何を協力したんじゃ?」


「えっ!」


「おいおい、爺さん。今は、食事中だぜ」


「爺さんだのジジイだの、お主は本当に失礼な奴じゃ。人がいる時は、ちゃんと敬え!」


「はいはい、失礼しました。今は食事中ですので、ご遠慮下さい」


「ぬけぬけと。帰ってやる代わりに、お主ら二人明日城に来るんじゃ!」


「「げっ!」」


「嫌なのか?」


「俺はいいけどよ。何か巻き込んじまったみたいで」


「ニコル。どうなんじゃ?」


「分かりました。伺います」


「そうか。では、昼過ぎに来てくれ。アレン、ニコルを連れて来てくれんか?」


「分かったよ」


「明日、待っておるぞ」


『キー、バタン!』


領主様はそう言い残すと、去って行った。



「ニコル、悪い」


「嫌な予感が、当たっちゃいました」


「悪徳領主とかじゃないから、安心しろ」


「他人事だと思って」


「まー、飲め。そして、食え。そんで、楽しめ」


「もー!」


僕は不満を表しながらも、ジョッキのビールを再び飲み干した。

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