第八話 露店で売る主力商品
繁華街を借家へ向かっていたが、腹が減った。
王都の食事に興味があったが、ゆっくりしてたら食べ終わる頃には外は真っ暗になる。
借家の周りには街灯が無いとギルド職員が言ってたので、何か買って帰る事にした。
「おっ、パンのいい匂い」
煉瓦作りの店を覗くと、ふんわりやわらかそうなパンが置いてある。
《亜空間収納》に錬金術で作ったやわらかいパンはあったが、パンのいい匂いに釣られて買ってしまった。
買ったのは、クロワッサンとバターロール。
この店は高級店らしく、紙に包んで渡してくれたが思いの外値段は高かった。
しかも、紙の代金もちゃんと取られた。しかも高い。
「他所の街では黒パンしか見かけなかったけど、これが王都の物価か」
おかずは、露店で肉の串焼きを買った。猪の肉らしい。
こちらはボリュームがあるのに、さっき買ったクロワッサンより安い。
肉の串焼きは、露店だったのでそのまま渡された。
借家でパンと一緒に食べるので、人のいないところでこっそり魔法袋にしまった。
その後は《検索ツール》の《地図ナビ》機能で、すんなり借家に着いた。
辺りは暗くなってしまったが、変なやつらに絡まれなくて良かった。
部屋には油のランプがあったみたいだが、ここは自作の《照明魔道具》を使った。
そして部屋の中を見渡した。
ワンルームで、床はちゃんと板張りになっている。
ここより安い物件は、土間のところもあるらしい。
「まあ、王都であの価格だったら、こんな物だよね」
部屋はギルドが管理しているだけあって割と綺麗だが、狭くて何も無かった。
有るのは布団のないダブルベットが一つと、二人用のテーブルと釜戸とトイレだけだった。
水道は無く、外に共同の井戸があるようだ。
釜戸があったので薪を探したが、見当たらなかった。使わないからいいんだけどね。
「だけど、さすがに布団と枕は無いと困るんじゃないか?」と、思わず呟く。
とりあえず、《生活属性魔法》の《清浄》で部屋と体を綺麗にした。
この魔法は『魔法は魔法書を買ってから覚える』と、誓いを立てる前に覚えたものだ。本当だぞ。
荷物を降ろしブーツを脱ぎ、サンダルに履き替えた。
そして服も部屋着に着替える。
食器と魔道具の《水用ポット》を取り出し、買ってきた食べ物を皿に出しテーブルに並べた。
コップに水を注ぎ、簡単な夕食を摂る事にした。
パンも肉の串焼きも美味しかった。これなら街の食堂も期待できそうだ。
ベットに《亜空間収納》から取り出したふとんを敷き、横になって考える。
「露店では、売り場に合った商品を考えないといけないな」
「切子ガラスのグラスや皿、高級陶磁器の食器も用意してあったけど、貴族街に露店を出せないなら売れそうにないな」
「露店向け商品は、アクセサリとガラスの置物かな。他にも庶民向けの物を選別しないといけないな」
「いっそフライドポテトの屋台でも出してみようか」
「この世界には簡単な調理なのに無いようだし、ただ儲けは少なそうだろうな」
「そういえばポテトを入れる容器がなかった」
「紙の容器位なら簡単に作れるけど、紙は高級品みたいだし売るなら棒に挿すだけでいいトルネードポテトの方がいいな」
結局新しい売り物の案はまとまらず、明日一日街を見て回る事にした。




