第三十九話 アレン対勇者パーティー、決着後
仲間達が勇者に駆け寄り、崩れた岩を掻き分けた。
「ウガー! 《罵烙》がいたぞー!」
「《悪羽魔》は、生きてるか?」
勇者の名前は《悪羽魔 罵烙》と言い、一風変わっていた。
DSにいる勇者には、お似合いである。
「うっ!」
勇者は血を流し瀕死ではあるが、息があった。
これは、装備と高いステータスのお陰である。
「ウガー! 大丈夫だー!」
『フッ!』
賢者は、勇者の元に《転移》した。
「待ってろ! 今、回復魔法を掛けてやる。《中級回復》」
賢者は色々と魔法を使えたが、回復魔法は中級までしか使えなかった。
勇者は淡い光りに包まれ、傷が徐々に消えていった。
「おい、悪羽魔!」
賢者は、勇者に呼び掛けた。
「・・・・・」
しかし、意識までは回復しなかった。
「《中級回復》」
賢者は、回復魔法を重ね掛けした。
「ううっ!」
「おい、悪羽魔。大丈夫か?」
「駄目だ。体が動かねえ」
勇者は、言葉を発する事ができた。
「中級回復だけじゃ、駄目か」
賢者は《アイテムボックス》から、《上級回復薬》を取り出した。
「上級回復薬だ。これを飲め!」
「すまねえ」
賢者は蓋を開け、勇者に飲ませてやった。
◇
そんな様子を、アレンさんは離れた場所で窺っていた。
「どうやら勇者の奴、大丈夫そうだな。良かった。良かった」
僕は安堵しているアレンさんに近付き、声を掛けた。
「アレンさん。もう、いいですか?」
「そうだな。頼む」
アレンさんから、ようやく了承を得た。
『シュタッ!』
僕は《瞬動》スキルで、勇者達の近くに移動した。
「《睡眠》X五倍」
「うっ、何だ? 眠気が、スヤー」
賢者が異変に気が付いたようだが、既に遅かった。
「「「「「スヤー」」」」」
他の五人も、既に眠っている。
『シュタッ!』
「おっ、全員寝たな」
アレンさんも、様子を見に来た。
「体力を消耗してたから、アイテムを持っていても効きが良かったみたいです」
「悪かったな。俺の《趣味》に、付き合わせて」
アレンさんは軽くそう言うが、勇者達は災難である。
今回その鉾先が、僕に向けられず助かった。
「いいですよ。戦闘の勉強にも、なりましたから」
「それだったら、今度手ほどきするぞ」
アレンさんはそう言いながら、『ニヤ!』っと笑った。
僕は余計な事を口走り、後悔した。
「いっ、いえ。遠慮します。それじゃ早速、リングをつけちゃいますね」
「何だ、嫌なのか? 残念」
僕は話しを逸らす為、《悪事矯正リング》を取り出し、一人一人装着していった。
◇
このダンジョンは、地下三十五階層からできている。
僕達は今地下二十六階にいるのだが、戦闘中魔物やダンジョン探索者は現れなかった。
魔物達は何か異変を感じて、近付かなかったのかもしれない。
「終わりましたよ」
「ああ、ご苦労」
「起こすと厄介そうなので、寝たままにしますね。安全の為、《結界》は張っておきます」
このままにして、魔物に襲われたりすると後味が悪いのだ。
「そうだな。頼む」
「《結界》」
勇者達に張った結界は、出るのは自由だが、外から中に入れないようにした。
「これで放っておいても、大丈夫です」
「それじゃ、帰るか?」
「そうですね」
僕はアレンさんと共に、ダンジョンの外に《転移》した。
勇者達は大層な武器やアイテムを所持していたが、二人共それには手を出さなかった。
ダンジョンを出ると、辺りはすっかり日が暮れていた。
「ニコル。今回は、助かった!」
「いえ。こちらこそ」
「感謝の気持ちに、飯を奢るぞ!」
「ありがとうございます。でも、猫と馬に食事を与えないと」
別にご馳走になるのが嫌な訳ではないが、問題があると告げた。
「だったら、俺は先に飲んでる。ニコルは用事を済ませてから、ゆっくり来ればいい」
「そうですね。分かりました」
「よし。そころで、ノーステリア大公爵領に《転移》できるか? この辺だと、勇者達と鉢合わせする可能性がある」
「ええ、大丈夫です」
「それなら、行ってくれ」
「はい」
この後アレンさんと共に、ノーステリア大公爵領に《転移》した。
◇
「俺の居場所は、能力で分かるんだろ。適当に、やってるぞ」
「はい」
こうしてアレンさんと一度別れ、僕は変装を解き《亜空間農場》に入った。
すると、二人は外で寛いでいた。
「ただいま」
「お帰りニャ」
『お帰りなさいませ』
「遅くなって、済まないな」
「無事で何よりニャ」
『心配しました』
「お腹空いたろ」
「もう、ペコペコニャ」
『私もです』
「少し、待ってくれ。今、用意する」
僕は急いで、食事の用意をした。
「二人は、ゆっくり食べてくれ。僕は、外で食べてくる」
「何ニャ、また外食ニャ。もしかして、女のいる店に行くつもりニャ!」
シロンは僕が単独行動をすると、女性の匂いがしないかその都度チェックしていた。
『えっ、そうなんですか?』
シャルロッテは、シロンの言葉を真に受けてしまった。
「違うぞ。いろいろあって、夕飯を奢って貰う事になったんだ。しかも、その相手は男だ」
「怪しいニャ!」
『怪しいです!』
僕はこの後二人を説得し、アレンさんが待つ繁華街に向かった。




