第三十七話 アレン対勇者・魔槍士・暗殺者
アレンさんの前に、《勇者》と《魔槍士》と《暗殺者》が現れた。
どうやら《大魔導師》を下がらせ、近接戦闘に持ち込むようだ。
「行くぞ!」
「おう!」
「キーシャシャシャシャ!」
『『『シュタッ!』』』
掛け声の直後、三人の姿が消えた。
彼らは、《瞬動》スキルを使った。
《狂戦士》のような爆発力と自由度は無いが、直線的な移動であれば速さは勝っている。
『キン! キン! キン! キン! キン! キン! キン! キン! キン! キン! ・・・・・・・・・・』
アレンさんは彼等の目まぐるしい攻撃を、高速で移動しながら剣で受けた。
余裕がありながら攻撃を仕掛けず、わざと受けに回っているようだ。
「凄いな」
アレンさんの戦闘センスに、思わず感心の言葉が出た。
ちなみに、勇者は《聖剣》、魔槍士は《魔槍》、暗殺者は《二本の曲刀》を得物にしている。
この攻防は、膠着したまま暫く続いた。
◇
均衡を破ろうと、勇者が《剣術》スキルを放った。
「《メギドスラッシュ!》」
『ギュオーーーーー!!!』
勇者の聖剣は、目映い光りと高熱を発した。
『ギーーーーーン!!!』
その威力は驚異的なものだが、アレンさんは難無く返した。
「まだまだだな」
「くっ!」
「俺が見本を見せてやる。《ライトニングスラッシュ!》」
『ピカーーーーー!!!』
アレンさんが放ったのは、《剣術》スキルの下位スキルだった。
『ガギーーーーーン!!!』
『ズザザザザザー! ドン!』
勇者は聖剣でその剣戟に耐えたが、十メートル程その体勢のまま地面を滑り壁に激突した。
「グッ!」
衝撃はあったものの、怪我には至らなかった。
下位スキルでのこの結果は、格の違いを感じさせられた。
「《サンダースピア!》」
『バリバリバリバリー!!!』
魔槍士が放ったのは、魔槍に雷を纏わせる《槍術》スキルだった。
『ギーーーーーン!!!』
しかし、アレンさんはこれも難無く返した。
「《ライトニングスラッシュ!》」
『ピカーーーーー!!!』
『ガギーーーーーン!!!』
「うわーーーーー!」
『ズドン!』
「グハッ!」
魔槍士は衝撃を魔槍で殺したが、その剣戟に耐え切れず空中に飛ばされ壁に激突した。
「《ポイズンスプラッシュ!》」
『ギーーーン!』
『ブシューーー!』
剣がぶつかり合った瞬間、激しい飛沫がアレンさんに向かって飛んだ。
これは、《暗器》スキルの技の一種である。
『シュタッ!』
しかし、アレンさんはそれも難無くかわした。
「毒の飛沫か。油断ならねえな。だが、技の名前を正直に叫んじゃ、予想がつくぜ」
「キヒャー! 避けたのは、てめーだけだ!」
『キン! キン! キン! キン! キン! ・・・・・・・・・・』
暗殺者はアレンさんの挑発に切れ、二本の曲刀を振り回した。
「攻撃が、軽いな。せめて、これぐらいの威力がねーと」
そう言うと、アレンさんは剣を振るった。
『ガイーーーン!』
暗殺者はその攻撃を、二本の曲刀をクロスして受けた。
「ぐっ!」
その威力に、暗殺者の両手は痺れた。
しかし、暗殺者はアレンさんの脇腹に隙を見付けた。
『ブオンッ!』
暗殺者は剣を押し退けながら、わき腹目掛けて回し蹴りを放った。
『シャキン!』
その蹴り脚の靴の爪先からは、突如刃が現れた。
『ガシッ!』
「キヒャー!」
しかし、アレンさんはその蹴り脚を、剣の柄で受けた。
暗殺者はその痛みで、堪らず間合いをとった。
「その隠し刃、毒付きか? 今度誘いに乗って足なんか出したら、切り落とすぜ」
「キヒッ!」
勇者達の攻撃は、一旦止まった。
◇
「やっぱ、レベル20の強さじゃねーな。思った以上だ。ダンジョンボスより、つえーぜ!」
「このまま戦ってても、ジリ貧だな!」
「キーヒッヒッ。ぜってー、殺ってやる!」
「「「《身体強化!》」」」
三人はアレンさんの強さを改めて認識し、ギヤを上げた。
「《超速剣!》」
勇者は続け様に、《剣技》スキルを発動した。
『ギンッ! ギンッ! ギンッ! ギンッ! ギンッ! ・・・・・・・・・・』
《身体強化》スキルと合わさり、その剣の威力は数倍に増し、速さは常人には残像しか見えないような凄まじさだった。
だが、アレンさんはそれを、全て剣で受けた。
「《超速槍!》」
そこに、《槍術》スキルを発動した魔槍士も加わった。
『ギンッ! ギンッ! ギンッ! ギンッ! ギンッ! ・・・・・・・・・・・・・・・』
相手の手数が二倍になったが、アレンさんは凄まじい剣裁きでそれをも受けた。
「ん?」
この時、アレンさんに《第六感》スキルが働いた。
『シュタッ!』
同時に、《瞬動》スキルで二人の攻撃の間合から外れた。
『シュン! シュン!』
すると、アレンさんがいた場所で、二本の曲刀が空を斬った。
「お前。気配消すのうめえな」
「チッ!」
暗殺者は敢えて攻撃に加わらず、気配を消す《隠密》スキルを使いタイミングを見計らっていた。
しかし、アレンさんの《第六感》は、暗殺者のそれを上回った。




