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第三十六話 アレン対大魔導師

明けまして、おめでとうございます。

《勇者》が突然、《転移》で現れた。


しかし、それは想定していた事である。

勇者の要件は、仲間を送り届けるだけだと知っていたからだ。


「こいつらは、何だ?」


そう言いながら、勇者は何か得体の知れないものを、二人から感じた。


「こそこそと、隠れてやがった。そんで、あいつが《召喚者狩り》っぽい」


《賢者》が僕に杖を向けると、勇者が睨み付けてきた。


「成る程。特徴が似てるな」


「だがよ、一人じゃねーんだ。連れが、いやがった」


「どうせ、どこかに潜んでたんだろ」


「俺もそう思う。そんで、今そいつとやり合ってる」


「ふっ。で、そいつに《狂戦士》スキルを使う程、手子摺ってるって訳か?」


「ウガー! うるせーぞ、お前ら。俺は手子摺ってねー!」


「イーヒッヒッ。手を貸そうか?」


「うるせーーー!」


「おい、デカブツ。よそ見してて、いいのか? 俺が切り込めば、死んでたぞ」


「ウガー! どいつもこいつも、馬鹿にしやがってーーー!!!」


『ブオオオンッ!』


『ドガーーーーーン!!!』


狂戦士は、大剣を頭上から思い切り振り下ろした。

しかし、またも避けられ地面を破壊しただけである。


『ブオオオンッ!』


『ドガーーーーーン!!!』


『ブオオオンッ!』


『ドガーーーーーン!!!』


『ブオオオンッ!』


『ドガーーーーーン!!!』


威力もスピードも格段に増しているのだが、怒りで攻撃が単調になっていた。



「あいつレベル20のくせに、さっきっからどうもおかしい」


「《鑑定》通りの強さじゃ、ないのか?」


「そういう事だ」


「俺には召喚者狩りからも、違和感を感じる」


勇者は既に、二人を《鑑定》していた。


「勇者の感ってやつか?」


「それもあるけどよ」


「他にも、理由があるような口振りだな?」


「ああ。屋敷に戻ったらよ、更に六人増えてやがった」


「おいおい。それじゃ、全部で二十二人って事か?」


「そういう事だ。そんでそいつらが言うには、召喚者狩りもレベル20だったんだが、剣の腕が相当立つらしい」


「あいつも、レベル以上の強さって事か。何か秘密があるのか?」


「たぶんな。だが、理由まで分からねえ」


「それじゃ、どうする?」


「指を加えて見てる召喚者狩りを、先に俺ら五人で殺る」


「おい。召喚者狩りは、リングの解除をさせなきゃなんねーんだぞ」


「そういやそうだな。帝国の奴等より、本人に外させた方がはえーな。仕方ねー、奴は多少痛め付けて生け捕りだ」


「キーヒッヒッ。やっと出番か!」


「腕がなるぜ!」


「魔法で、吹っ飛ばしてやんよ!」


勇者達残り五人は静観を止め、戦闘モードに入った。



アレンさんと狂戦士を他所に、勇者達五人が僕の方へ近付いて来た。


「キーヒッヒッ。呑気に観戦してるお前から、血祭りにしてやる」


「ゲッ!」


とうとう僕が、ターゲットになってしまった。


「おい。ちょ待てよ!」


『シュタッ!』


アレンさんが勇者達の行動に気付き、僕の前に現れた。


「お前らの相手は、俺だ! こいつとやりたきゃ、俺を倒してからにしろ!」


「ウガー! てめー、俺を無視するんじゃねー!!!」


「うるせー!」


『バシーーーン!!!』


『ドガーーーーーン!!!』


迫り来る狂戦士を大剣の側部で薙ぎ、その巨体を飛ばし壁にめり込ませた。


「グハッ!!!」


その衝撃で狂戦士は口から血を吐き、失神してしまった。


「「「「「なっ!」」」」」


「頑丈が取り柄の奴が、一撃だと!」


「次はお前達の番だ。掛かってこい!」


アレンさんは狂戦士をあっさり倒し、僕に目を向けた勇者達を煽った。



「俺にやらせろ!」


「一人でやるのか?」


「こいつ相手じゃ、おめえらを巻き込む」


そう言って名乗り出たこの男の職業は、《大魔導師》である。

《特級魔法》の唯一の使い手でもある。


しかし、それは《火属性魔法》だけで、他の魔法は大した事なかった。


「分かった。お前に任す」


勇者は大魔導師の言い分を、聞き入れた。



アレンさんと大魔導師が、対峙した。


そして、最初に仕掛けたのは、大魔導師の方である。


「《業炎球!》」


《呪文短縮》で杖から放たれたのは、直径一メートル程の高温高密度の火の玉だった。


それが僕の目の前に立つ、アレンさんに迫った。


「《光障壁》」


『ブオオオオオワッ!!!』


寸前のところで火の玉は光りの壁にぶつかり、強烈な音と共に爆散し、その周辺の地面を燃え上がらせた。


「なっ!」


その炎は直ぐには消えず、次第に地面を溶かした。



「糞がっ! 《業炎大蛇》を食らいやがれ!」


今度は長さ四メートル程の炎の大蛇が、不規則に動きながら迫ってきた。


それに対し、アレンさんは大剣を構えた。


「キシャーーーーー!!!」


炎の大蛇は、突然人を丸飲みする程に顎を広げ襲ってきた。


「フン!」


『ズバババババッ!!!』


アレンさんはそれにも全く動じず、剣を頭上から振り下ろした。


『『ズドーーーン!!!』』


炎の大蛇は真っ二つに切り裂かれ、そのままアレンさんの後方へ飛び、壁を溶かし穴を開けた。

幸いにも、僕がいる所へは飛んで来なかった。


アレンさんの大剣は《アダマンタイト》製の業物で、ちょっとやそっとでは損傷しないようだ。

ちなみに奴等には、《変装》の効果で鋼の大剣に見えている。



「これならどうだ! 《業炎牢獄!》」


アレンさんは僕の目の前で、炎の牢獄に閉じ込められてしまった。


「《牢獄しゅ》」


『ズザッ! ズザッ! ズザッ!』


「何だと!」


大魔導師が何かを言う前に、剣で炎の牢獄が引き裂かれ、中からアレンさんが出て来た。


「お前の実力は、こんなものか?」


「糞っ! こうなったら《上級魔法》を」


「おい、止めとけ。ここじゃ狭い。俺達の援護に回れ!」


そう言って前に出てきたのは、《勇者》と《魔槍士》と《暗殺者》である。


二ラウンド目が終わり、これから三ラウンド目が始まろうとしていた。

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