第三十五話 アレン対狂戦士
勇者達は、ダンジョンに来ていた。
「おい、お前ら。その首輪をしてるって事は、どうやら遅かったらしいな?」
「ああ、クソ野郎にやられた。首輪の事を知ってるって事は、他にもいるのか?」
「既に十人。お前らを入れて、十六人だ」
「あのヤロー。召喚者を、狩ってやがるのか! ウギャーーー!」
「《平常心》」
《殺意》を抱いて苦しむ仲間に、《賢者》が魔法を唱えた。
「ハア、ハア、ハア、済まねえ。クソッ、やっと気持ちを落ち着かせたのに、思い出しちまった」
「こいつ、間抜けだぜ。また、電撃食らってやがる」
「うるせー!」
「おい。頭に血がのぼると、また食らうぞ」
「くっ、そうだった」
「その首輪、思った以上に厄介だな」
「ああ。電撃を食らってる時に魔物に襲われたら、死活問題だぜ。済まねえが、早く屋敷に送ってくれ」
「分かった。俺が、送ってやる」
勇者が名乗り出て、召喚者六人と共に屋敷へ《転移》した。
◇
その勇者達の様子を、僕とアレンさんは隠れて見ていた。
僕は装備を《対勇者用》に替え、《鑑定》で彼等の情報を再度確認していた。
その時、《状態異常》をレジストするアイテムを、所持している事を知った。
しかし、レジストを上回る魔力を込めた魔法なら、効果があると調べて分かった。
これらの事は、既にアレンさんに伝えてある。
「勇者、行っちゃいましたね」
「ああ」
「それじゃチャンスなんで、僕が《睡眠》で」
「いや、ちょっと待て。俺に、手合せさせろ」
「何、言ってるんですか? さっさと終わらせて、帰りましょうよ」
「いいから、いいから」
アレンさんはそう言うと、《光学迷彩》を解いてしまった。
「何で僕のまで、解くんですか!」
折角の《光学迷彩》を解除され、僕は大きめの声を発してしまった。
「誰だ!」
案の定、奴等に気付かれてしまった。
これは、僕の失態である。
「これは、出て行くしかないな」
「済みません」
僕とアレンさんは、ゆっくりと勇者パーティーの前に現れた。
◇
「てめえら、何こそこそしてやがった?」
「こそこそ? そんな事、俺達してたか?」
ここは戦う気でいるアレンさんに、対応を任せた。
「てめえ、おちょくってんのか?」
「おい、待て。もう一人の奴、《召喚者狩り》に特徴が似てねえか?」
「そう言えば。だけどよー、単独のはずだろ」
「隠れてたのかもな」
「キーヒッヒッ。怪しい奴は、殺っちまえばいい!」
「ギャハハッ、ぶっ殺す!」
「おめーら、相変わらず血の気が多いな。捕まえて、《首輪》を外させねーと駄目だろうが!」
何やら変装した僕の容姿の特徴を聞いていて、『召喚者狩り』と呼ばれてるらしい。
「こいつら、二人共《レベル20》だ。大した事無え」
「あいつら、こんな弱っちい奴にやられたのか?」
「不意を突かれて、眠らされたんだろ」
「俺らが言うのも何だが、こいつ卑怯だな」
ステータスを偽装して、油断させる事には成功した。
しかし、卑怯者扱いにはムカついてしまった。
「いちゃもん付けて殺すとか、クソみてえな連中だな」
すると、アレンさんが僕の気持ちを察してか、言い返してくれた。
「いちゃもんだと! てめえら、何でここにいんだ! 俺らを、狙ってんじゃねーのか?」
「俺達は、魔物を狩ってるだけだ。ここにいるのは、単なる偶然?」
「何で疑問系なんだ!」
「知らん」
「ウガー! じれってー、ぶっ殺す!」
大男がこの遣り取りに、我慢できなくなったようだ。
大男は背中にぶら下げた自分の身長程ある大剣を、鞘から抜いた。
『ドンッ!』
すると、地面を蹴り一気にアレンさんとの間合を詰め、大剣を横薙ぎにした。
『ブオンッ!』
しかし、アレンさんはそれを余裕でかわし、凄まじい空を切る音だけが残った。
「ウガー!」
『ブオンッ!』
二撃目も、アレンさんはかわした。
「キーヒャッヒャッヒャッヒャッ! 避けられてやがる」
「ウガー! うるせー!」
こいつの職業は《狂戦士》だが、決して動きが遅い訳ではない。
寧ろ体の大きさに似合わず、素早かった。
『ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ!』
「おい。あいつ、本当にレベル20か? 全部、避けてるぞ!」
「ああ。今も《鑑定》で見てるが、違いねえ」
「手を貸すか?」
「いや。あいつ自分の獲物に手を出されると切れるから、止めといた方がいい」
どうやら他の連中は、手出ししないようだ。
◇
狂戦士の大剣はいくら振るっても、アレンさんを捉える事はできなかった。
「オーガみたいな兄ちゃん。いくら剣を振っても、風しか届かねーぞ」
「ウガー! ぶっ殺す! 《狂戦士》スキル発動だ!」
《狂戦士》の男がその言葉を発すると、筋肉が二まわり程膨らみ、表情が凶暴化した。
「おい。あいつ、スキルまで使ったぞ」
「これで、あの男は死んだな」
仲間達には、スキルの効果は信用されているらしい。
しかし、その様子は今までと変わらなかった。
『ブオオオンッ!』
『ドガガガガガガガガッ!』
「おいおい。身体能力は上がったようだが、頭が悪くなったんじゃねーか? 壁が崩れたぞ」
「ウガー!」
この狂戦士は、闇雲に剣を振るってるんじゃない。
動きの早いアレンさんを、壁際に追い詰めようとしていた。
しかし、アレンさんはそれに気付いてるようで、《瞬動》スキルを交えて余裕でかわしている。
「お前の実力は、だいたい分かった」
そう呟くと、アレンさんは大剣を抜いた。
「お前の剣、受けてやる」
「ウガー! 舐めるなーーー!」
『ドーーーン!!!』
狂戦士は地面を爆発させ、今まで以上の速さで間合いを詰め、大剣を振るった。
『ブオオオオンッ!!!』
『ガイーーーーーーーーーーン!!!』
アレンさんはそれを一歩も動かず受け止め、辺りには金属音が鳴り響いた。
「ウッ!」
「「「「ばかな!」」」」
渾身の一撃をまともに受け止められ狂戦士は動揺し、それを見ていた仲間達も同じ気持ちだった。
「どうしたデカブツ。お前の力は、そんなものか?」
「ウッ、ウッ、ウガーーーーー!」
『シュタ!』
狂戦士が吠えたと同時に、勇者が召喚者達を送り届け戻って来た。
「おい。てめえら、何してんだ?」
勇者はこの状況に、何かやばさを感じた。
次回の投稿は、一週間前後掛かりそうです。
良いお年を。




