第三十三話 突然の再会②
アレンさんは帝都まで来たはいいが、どうやって戦争を止めるか悩んでいた。
勇者達の居場所を突き止め足を運んだところ、召喚者達の異変を知った。
そして、何者の仕業なのか、先程まで考えていたそうだ。
食堂で僕とアレンさんが出会ったのは、誰かの《ご都合主義》が働いたに違いない。
アレンさんの要求で、《悪事矯正リング》を見せる事になった。
魔法袋から取り出し手渡すと、僕が作った事を明かし《性能》を説明した。
アレンさんはそれを《鑑定》し、外される恐れがないか検証した。
今回の戦争の鍵は、間違いなく勇者達召喚者なので真剣である。
僕はある程度自信はあったが、何事にも絶対は無い。
彼らは特別な力を持っているので、今は無理でもいつか外せるかもしれない。
ここは、アレンさんの判断に任せた。
アレンさんは、《悪事矯正リング》の性能に納得してくれた。
その後、どうやって召喚者達に取り付けたか質問され、『《検索ツール》で召喚者達の居場所を探し、《睡眠》の魔法で眠らせた』と答えた。
アレンさんを信用しているので、僕の能力や手の内を明かしている。
ついでに、《検索ツール》で調べた勇者パーティーのステータスと、《転位》で逃げられる可能性がある事を伝えた。
この時アレンさんから、『折角なので、手を組もう』と、申し出があった。
僕はそれを、快く了承した。
◇
アレンさんとの協力が決まり、その後も話しは続いた。
「俺のところに、ノーステリア大公爵のジジイから『参戦依頼』が来たんだ」
「アレンさん! 大公爵様を、そんな呼び方していいんですか?」
「ああ、構わん。俺とジジイの仲だ」
「そんなに、親しいんですか?」
「まあな。ジジイも、《日本人の転生者》だ」
「えー! 転生者なんですかー? でも、本人の了承無しに、そんな大事な事バラしていいんですか?」
「ああ、そうだった。ニコル、内緒にしてくれ」
「随分、軽い言い方ですね」
「俺の感は、『大丈夫だ』と言っている」
「そうですか。まあ、言いませんけどね」
この時、『ノーステリア大公爵領の発展は、《内政チート》だったんだ』と思った。
「あれ? 俺、何話してた?」
「えーと、参戦依頼です」
「ああ、そうだった。俺は戦争に関わりたくないから、断ったんだ」
「断ったんですか?」
「ああ。人殺しなんか、まっぴらだ」
「そうですよね」
「そしたら、ジジイがよ。『王国民が、大勢死んでもいいのか? お前のその力は、何の為にある? 人殺しが嫌なら、戦争を止めてこい!』なんて言いやがるんだ」
「はあ、そうですか。大変ですね」
「俺はそれで、言い返せなくなった。ジジイが、自分でやれってんだ」
アレンさんの言葉が、だんだん愚痴っぽくなっていった。
「アレンさんは、それだけ信用されてるんですよ」
「いいや。小間使いくらいにしか、思ってないね」
僕は『これ以上、愚痴を聞かされても』と思い、話題を変える事にした。
「ところで、アレンさんのその顔。魔法ですか?」
終始アレンさんから、微弱な活性魔力が感じられた。
「そうだ。俺は《光属性魔法》が得意でな。こんな芸当もできるんだ」
「へー」
「ニコルは、どうしてるんだ?」
「僕は魔道具を使ってます。ステータスや声も、変えられるんですよ。召喚者達の中には、《鑑定》スキル持ちがいますからね」
「便利だな」
「そうだ。アレンさんに、あげますよ」
「いいのか?」
「これからは協力関係なんで、構わないです」
僕は《亜空間収納》の中で《複製》の能力を使い、《変装の腕輪》を作った。
そして、アレンさんの太い腕を見て、サイズを調整した。
「どうぞ」
「おー、サンキュー」
アレンさんは腕輪を受け取るとそのまま手首に嵌め、僕のレクチャーに従い設定した。
アレンさんの変装設定が完了し、この後どうするか話し合った。
「アレンさん。一度、勇者達の屋敷に行きたいんですけど、いいですか?」
「そうだな。ニコルが《転移》を使えるなら、行っておいた方がいいな」
「ありがとうございます」
アレンさんは、《転移》が使えなかった。
その代わり、『《光速移動》の魔法が使える』と言っていた。
《瞬動》スキルは直線で短距離しか動けないけど、《光速移動》は長距離を自由に動けるらしい。
こうして僕は、アレンさんの案内で目的地へ足を運んだ。
◇
「着いたぞ」
「ここですか? 立派ですね」
「そうだな」
勇者達は平民街ではあるが、貴族のような屋敷に住んでいた。
「勇者パーティー以外は、向こうの宿舎に住んでいる」
「同じクラスメイトなのに、格差ですか?」
「実力に違いがあれば、格差は生まれるものだ」
「『格差社会』、嫌な響きですね」
「この世界は日本と比べても、大きな格差がある。貴族社会だからな」
「そうですね」
僕達は剣先フェンスを飛び越え、敷地内を探った。
「召喚者の数が増えたようだが、勇者パーティーの気配が無いな」
「ダンジョンに、行ったんですかね」
「どうだろうか?」
「調べてみます」
「頼む」
《検索ツール》で勇者達の居場所を探ると、《皇帝城》にいた。
「どうやら、城にいるようですね」
「異変を知って、報告に行ったのか?」
「どうでしょう?」
僕達はこの後の行動が決まらず、一旦屋敷を離れた。




