第三十二話 突然の再会①
2021/05/08 アレンのステータス表記を追加し、一部内容の修正をしました。
ガーランド帝国に降り立ってから、既に二十日が過ぎた。
その間オルネア街と他二つの街のダンジョンで、召喚者達に《悪事矯正リング》で制裁を加えた。
その結果、残すは《勇者》率いる最強パーティーのみとなった。
勇者パーティーには二人の《空間属性魔法》の適正者がいて、二人共《転移魔法》を使えた。
その一人は《勇者》で、もう一人は《賢者》である。
そして、帝都の屋敷と三つのダンジョンを行き来し、効率良くボスをメインに狩っている様子だった。
この動向は実際に見た訳ではなく、《検索ツール》の《地図》機能で居場所を知り推測した結果である。
「《転移魔法》で逃げられたら厄介だ。《帝都の屋敷》は、抑えておいた方がいいな」
ダンジョンで対峙する前に、僕は帝都に向かった。
◇
帝都はエステリア王国の王都と同じで、高い壁で囲われていた。
その門はダンジョンから近くにあり、朝一出発し午前中の早い時間に到着した。
しかし、そこには多くの人が並んでいた。
「並ぶの面倒だなー。でも、仕方ないか」
壁を越えて入る事もできたが、愚痴をこぼしながら変装した姿で最後尾に並んだ。
暫く待っていると、僕の順番が来た。
「帝都は、初めてか?」
「そうだ」
僕は、口調を変えて答えた。
この後初めて帝都に入るという事で、門番から色々と質問された。
しかし、ダンジョン探索者カードを持っていたので、上手く切り抜ける事ができた。
エステリア王国の人間だと分かったら、捕まっていたかもしれない。
「ふー、緊張した。スパイや潜入捜査官の気分だ」
この後昼食を用意しに、変装を解いて《亜空間農場》に戻った。
◇
「お帰りニャ!」
『お帰りなさいませ!』
「お腹空いたろ?」
「ぺこぺこニャ!」
『空きました!』
二人に確認すると、僕は食事の用意を始めた。
「さあ、できたぞ」
「ご主人のご飯が、無いニャ」
「帝都の様子を見たいから、繁華街で食事してくる」
「そうなんニャ。残念ニャ」
『気を付けて下さい』
僕は二人に見送られ、再び変装し帝都に戻った。
◇
人気の無い場所に出て、繁華街まで歩いた。
「流石、帝都。人が多い」
その規模は、エステリア王国の王都と変わらなかった。
「あれ? ここって、《日本食》や《洋食》が置いてる」
この時、召還者に《調理》スキル持ちがいるのを思い出した。
「もしかして、勇也さんみたいに協力したのか?」
真意は定かでないが、メニューに惹かれこの店で食事をする事にした。
「いらっしゃいませ。お客様は、お一人でしょうか?」
「ああ、一人だ」
ここでも、変装時の口調を使った。
「カウンター席でも、よろしいですか?」
「構わない」
口数の少ない、ぶっきら棒を装っている。
「それでは、こちらへどうぞ」
僕は、案内された席へ座った。
「ん? 微弱な魔力」
すると、隣の席の人から違和感を感じた。
プライバシーを侵害したくないで、普段一般人のステータスは見ないようにしている。
しかし、違和感の理由を知る為、思わず見てしまった。
【名前】アレン
【年齢】二十九才
【種族】人族
【性別】男
【職業】ダンジョン探索者
【称号】光の英雄(特典:戦闘時のステータス五倍)
【レベル】99☆
【体力】9999/9999☆
【魔力】9999/9999☆
【攻撃力】20999(999)☆
【物理防御力】15999(999☆)
【魔法防御力】15999(999☆)
【筋力】999☆
【敏捷】999☆
【持久力】999☆
【精神力】999☆
【知力】999☆
【運】999☆
【固有スキル】第六感(Lv10)/経験値獲得3倍(固定)/スキル経験値獲得3倍(固定)
【スキル】鑑定(Lv10)
剣術(Lv10)/体術(Lv10)
魔力感知(Lv10)/危機感知(Lv10)
魔力操作(Lv10)/魔法言語(Lv10)/身体強化(Lv10)/威圧(Lv10)/瞬動(Lv10)
騎乗(Lv10)
【魔法】光属性魔法(Lv10)/生活属性魔法(Lv5)
【武器】光の剣(攻撃力:+20000)・(強靭(特上)付与)・(腐食耐性(特上)付与・
(体力回復(特上)付与:全体力回復所要時間1H)
【防具】ドラゴンの皮鎧(物理防御力:+15000)・(魔法防御力:+15000)・(防汚(特上)付与)
【アイテム】指輪(魔力回復(上)付与:全魔力回復所要時間4H)
『名前は《アレン》。称号に《光の英雄》。レベル99で☆マーク、カンストか?』
僕はこの時、『ハッ!』とした。
「えっ! アレンさん?」
「ん、何だ?」
その人は、こちらに顔を向け返事をした。
しかし、顔はアレンさんのものとは違った。
「お前、ニコルか?」
「えっ!」
僕はその言葉に、驚きを隠せなかった。
「あれ、違ったか?」
「いいえ、ニコルです」
口調は自然に戻り、正直に答えてしまった。
「おおそうか。合ってて良かった。何か訳がありそうだな?」
「ええ」
「俺もだ」
「そうでしょうね」
お互い顔を変え敵国にいるので、その言葉に納得した。
「取り敢えず、事情を聞くのは後だ。メシを食ってからにしよう」
「そうですね」
二人は怪しい状況ながらも、お互い敵でないと察していた。
◇
アレンさんがハンバーグ定食を注文していたので、僕もそれに倣った。
「これ、美味しいですね」
「ああ、いけるな」
ハンバーグとスープに、しっかりと味が付いていた。
それに、主食は白米のご飯だ。
帝都の食料事情は、他所に比べ良いのかもしれない。
他愛のない会話をしながら食事を終えると、アレンさんがお代を払ってくれた。
「高っ!」
思わず、僕の口から声が漏れた。
その金額は、《お食事処やまと》の二倍以上した。
この金額では、『食事事情が良い』とはとてもじゃないが言えない。
僕は、考えを改めた。
「アレンさん。ご馳走様です」
「いいって事よ。話しができる場所まで、歩こうか?」
「はい」
僕はアレンさんに対し、いつもの口調に戻っていた。
◇
繁華街を離れ、人の少ない川辺に来た。
「ニコルは、どうしてここにいるんだ?」
「それを答える前に、アレンさんは《エストリア王国》側の人間なんですよね?」
「何だ。俺を疑ってるのか?」
「いえ。そういう訳では」
「心配するな。俺は、《ノーステリア大公爵》の依頼で動いてる」
「そうですか。アレンさんのその言葉、信じます」
「ありがとよ」
「それで、僕がここにいる理由ですけど」
「ああ」
この時どこまで話すか迷ったけど、覚悟を決めた。
「実は《日本人》の勇者達が、戦争に参加するのを止めに来ました」
「日本人? その言葉が出るという事は、やはりニコルも日本人の転生者なのか?」
「そうです」
「俺もだ」
「ええ、知ってました」
「そういや以前酔っぱらって、質問したっけ」
僕はエミリから聞いて知ったのだが、その事は伏せた。
「でも、僕が転生者だって、良く分かりましたね。アレンさんの《鑑定》スキルは、そこまで見えるんですか?」
「分からん。俺は他人のステータスに興味がない。分かったのは《感》だ」
「感? ああ、そう言えば」
「そう。俺には《第六感》スキルがある。妙に感が働く」
「成る程」
アレンさんは、羨ましいスキルを持っていた。
「ところで、今召喚者達がおかしな事になっているのは、ニコルのせいか?」
「はい。でも、何故知ってるんですか?」
「夕べ勇者の屋敷を調べていて、偶然知った」
「それじゃ、勇者もこの事は知ってるんですね」
「そういう事だ。夕べその召喚者達が屋敷にやって来て、お前の事を話していた」
「以外と、遅かったですね」
「そうなのか?」
「最初に首輪を取り付けてから、半月位経ちますから」
「半月か。それで、どこまで進んだ?」
「勇者パーティー六人を除いて、三十三人全員終わってます」
「仕事がはえーな。やっぱ、ただ者じゃなかったか」
「アレンさん程じゃ、ないですけどね」
実際ステータスの数値は、アレンさんより低かった。
「いいや。その余裕、俺の感は俺以上だと言っている」
この後、お互いの事を話しをした。
アレンさんはその時、《レベル99》を越えられるのは《勇者》だけという事を教えてくれた。
僕は勇者ではないので、《イレギュラー》という事で二人は納得した。
そして、協力して勇者達を封じ込める事を約束した。




