第三十一話 召還者との遭遇②
五人の召還者に、《悪事矯正リング》を取り付けた。
「ここで寝たままにしたら、流石に死んでしまうな」
殺す気は無いので、《睡眠》魔法を解除した。
「おい、起きろ!」
召喚者の一人を蹴飛ばし、起床を促した。
「いてーな!」
「戦闘中に寝るから、起こしてやったぞ」
「んだと。てめー、ぶっこ、ウギャーーーーー!」
僕に殺意を向けた瞬間、リングから電気が流れた。
「ほら、お前もだ。起きろ」
「いてー、何しや、ウギャーーーーー!」
その後の召喚者はというと。
「「「「「ウギャーーーーー!」」」」」
僕に殺意を抱く度、電気を食らっていた。
「お前ら『ウギャー、ウギャー』って、赤ん坊みたいだな。いや、赤ん坊は『オギャー、オギャー』だったか?」
「てめえ、オギャーーーーー!」
「ははっ。お前、本当に赤ん坊みたいだな」
「ぶっころ、オギャーーーーー!」
召喚者達はちょっとからかうと、その度に制裁を受けていた。
「それじゃ、俺行くわ」
「なっ、ちょっ、待って。待って下さい」
「何だ? 俺は忙しいんだ」
「この首のやつ、外して下さい」
「それは、無理な話しだ。大人しくしていれば、その痛みは襲わない。だが、《魔物》相手の戦闘だったら大丈夫だ。これを期に、《真っ当》に生きるんだな」
「「「「「そんなー!」」」」」
僕の言葉に、召喚者達は項垂れた。
◇
数時間後、地下十五階で他の召喚者達に遭遇した。
「おら、死ねやー! 《炎爆弾》三連発!」
『ドカーン! ドカーン! ドカーン!』
「うわー!」
「キャー!」
「ヒー!」
「イヤー!」
「止めてくれー!」
「おい、とっとと殺れよー!」
「男は殺せー!」
「金目の物は、燃やすなよ!」
「女も、傷付けるんじゃねーぞ!」
「てめえら、うっせーぞ。俺は楽しんでんだ!」
《デジャブ》である。
しかし、襲ってる方も襲われてる方も、メンバーは違った。
この後召喚者達を、最初の奴等と同じ目に合わせてやった。
◇
翌日、地下二十一階で六人組の召喚者を見付けた。
この辺になると、流石に探索者の数は少ない。
現在、奴等の回りには、人がいなかった。
僕はガラ悪くダラダラ歩いている召喚者達に追い付き、その横を通り過ぎた。
「おいこら、待てや!」
僕はその声に耳を貸さず、歩き続けた。
「《水矢》」
《危機感知》スキルが働き、僕はその場から一歩右に避けた。
『ヒュン!』
僕が元いた場所を、《水矢》が通り過ぎた。
「チッ!」
僕は振り向き、召喚者達を見据えた。
「今明らかに、俺を狙ったな!」
「てめえが無視して、俺らの先を行くからだろうが!」
「俺は、お前らに用はない。抜かされたのは、チンタラ歩いてるお前らが悪い」
「てめえ、喧嘩売ってんのか?」
「そんな無駄な時間があったら、俺は先に進む」
「野郎!」
「おい。そいつ、レベル20だぞ」
奴等の中に、《鑑定》スキル持ちがいた。
そいつは、《変装》の魔道具で設定した数値を叫んだ。
「何だ、そんなもんか。こんな所に一人でいるから、もっと高いと思ったぜ」
「あと、その腰の袋。魔法袋だ」
「そうか。魔法袋だったら、いくつ増えてもいいな」
「お前等、魔法袋が欲しいのか?」
「へっへー。今更献上したって、おせえぞ。ボッコボコにした後、奪ってやんよ」
「お前等に、そんな事ができるのか?」
「舐めるな! 《水矢百連装》」
男は《魔法名》を唱えるだけで、魔法を放った。
以前調査して分かった事だが、召喚者の全員が《詠唱破棄》スキルを持っていた。
僕の場合、魔法名を唱えずとも、念じるだけで使える。
『シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! シュバッ! ・・・・・・・・・・』
僕目掛けて飛んで来る百本の《水矢》を、高速の剣捌きで全て打ち消した。
この手の攻撃は、コロネ子爵邸で経験済みだ。
「なっ!」
「次は俺だ。《竜巻》」
今度は、通路幅いっぱいの《竜巻》が襲って来た。
「フン!」
気合一閃で《竜巻》を縦に切り裂くと、僕の両側を通り過ぎ消滅した。
「なっ!」
「こいつらに、長く構ってられない」
そう呟くと、心の中で『睡眠』と唱えた。
『バタッ! バタッ! バタッ! バタッ! バタッ! バタッ!』
すると、六人の召喚者は眠りにつき、その場に倒れた。
「今日は《王都》に行って、商品を卸さないといけないんだ」
前回卸してから、丁度一ヶ月が経っていた。
僕は急いで召喚者達に《悪事矯正リング》を取り付け、《睡眠》を解いた。
「ん、何が起きたんだ?」
全員が目を覚ますのを見届けると、その場を離れた。
◇
「忙し過ぎる。こんな勢いでダンジョンを走り回ったのは、初めてだ」
僕は二日半で、地下二十一階まで来てしまった。
いくらステータスが高いと言っても、無茶のし過ぎである。
この後《亜空間農場》に戻り、シロンとシャルロッテに食事を用意した。
「それじゃ、王都に行ってくる」
「行ってらっしゃいニャ」
『行ってらっしゃいませ』
僕は二人に見送られ、王都に出掛けた。




